気まま
闘技場を出ると、外には相変わらず賑やかな音が溢れていた。
色とりどりの看板が夜空を照らし、通りを歩く妖たちの姿も途切れることがない。
「さて、次は何をしようか」
星架が楽しそうに辺りを見回す。
「まだ何かあるんですか?」
「もちろん。常夜街は夜が終わらないからね。遊びだって、いくらでもあるさ」
そう言って、星架はこのはの手を引いて歩き出した。
しばらく進んだ先にあったのは、いくつもの小さな屋台が並ぶ一角だった。
見たことのない食べ物や、妖怪たちが作った奇妙な菓子。
中には、何に使うのか分からない道具まで売られている。
「……すごいですね」
「気になるものがあったら、好きに見ていいよ」
「いいんですか?」
「もちろん。このはサマを連れてきたのは僕だからね」
このはは並んだ屋台を眺めながら歩く。
その途中、一つの屋台で足を止めた。
「……これ、何ですか?」
そこに並んでいたのは、透明な瓶に入った色鮮やかな飴だった。
「それ? 食べると舌の色が変わる飴だよ」
「……それだけですか?」
「それだけさ」
星架は楽しそうに笑う。
「でも、こういう意味のない遊びって、案外楽しいものだよ」
「……確かに」
このはは一つ手に取った。
口に入れてみる。
「……甘い」
「どう?」
「普通に美味しいです」
「なんだ、つまらないなあ」
「なんでですか」
星架は肩を揺らして笑った。
「もっと変な反応を期待してたのに」
「星架さんって、こういうところありますよね」
「そうかな?」
「そうですよ」
このはが苦笑すると、星架は満足そうに笑った。
そのまま二人は夜の街を歩いていく。
闘技場の歓声。
遠くから聞こえる音楽。
屋台から漂う甘い匂い。
どこを見ても、夜の遊びが続いている。
このははふと空を見上げた。
月も星も、先ほどからほとんど変わっていない。
「……本当に、夜が終わらないんですね」
「僕がいる限り終わらないよ〜」
星架はそう答えて、楽しそうに笑った。
「だからさ、このはサマ」
「はい?」
「今夜はまだまだ帰さないよ」
「……白雨が心配しそうですね」
「大丈夫だよ。白雨サマなら、きっと待っててくれるさ」
星架はそう言うと、また別の通りへと歩き出した。
このはもその後を追う。
常夜街の夜は、まだ始まったばかりだった。
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