闘技場
常夜街を歩き始めて、しばらく。
「星架さん」
「ん?」
「さっきから、あちこちから歓声が聞こえますけど……」
このはが周囲を見渡す。
「何かやってるんですか?」
「ああ。ちょうどいいところに来たね」
星架が楽しそうに笑う。
「この先に闘技場があるんだ」
「闘技場?」
「そう。妖同士が戦って、どっちが勝つかをみんなで予想するのさ」
そう言って、星架は大きな建物へ入っていく。
中へ進むと、観客席から大きな歓声が響いてきた。
「うおおおお!」
「行け!そこだ!おい何やってんだ!」
「まだ終わってないぞ!」
中央には広い闘技場があり、二体の妖が激しく戦っている。
「すごい……」
このはは思わず足を止めた。
「面白そうだろう?」
「はい」
星架は懐から何枚かの硬貨を取り出す。
「はい、このはサマ」
「え?」
「遊ぶためのお金。僕からのプレゼントだよ」
「いや、でも……」
「大丈夫大丈夫。そんなに多くないから」
星架はこのはの手に硬貨を乗せる。
「せっかくだし、一回くらい賭けてみなよ」
「……じゃあ」
このはは闘技場へ目を向ける。
二体の妖は、それぞれ武器を手にして戦っていた。
片方は大柄で力が強い。
もう片方は身体は細いが、動きが速い。
「どっちにする?」
「うーん……」
このはは二人の動きをしばらく観察する。
「俺は、あっちにします」
細身の妖を指差した。
「へえ。そっちを選ぶんだ」
「動きが速いですし、相手の攻撃を避けながら戦ってるので」
「なるほどね」
星架は楽しそうに笑う。
「じゃあ、僕も同じにしようかな」
「星架さん、自分で選ばないんですか?」
「僕はこのはサマの予想に乗ってみるよ」
やがて、二体の妖の戦いが再び激しくなる。
大柄な妖が力任せに武器を振り下ろす。
しかし、細身の妖はそれをかわした。
「今です!」
このはが思わず声を上げる。
細身の妖が懐へ飛び込み、一撃を叩き込む。
大柄な妖がよろめいた。
そのまま細身の妖が畳みかける。
「決まった!」
観客席から歓声が上がった。
このはも思わず拳を握る。
「勝った……!」
「お見事」
星架が笑う。
「初めてにしては、ちゃんと見てたね」
「結構面白いですね、これ」
「だろう?」
星架は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、もう一回やってみる?」
「……一回だけですよ」
「いいね」
星架は楽しそうに闘技場へ目を向ける。
夜はまだ長い。
常夜街の遊びも、まだ始まったばかりだった。
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