仕立て
ツツジの屋敷にある一室。
このはは、ツツジの前に立っていた。
「じゃあ、このはくん。腕を広げてね~」
「こうですか?」
「そうそう。もう少しだけ上げて……うん、いいわね~」
ツツジは手際よく、寸法を測っていく。
その少し後ろでは、白雨が静かに二人を眺めていた。
「白雨、ずっと見てるけど……」
「ん?」
「そんなに気になる?」
「もちろんさ」
白雨は穏やかに笑う。
「君のために作ってもらう服だからね」
「まあ~♡」
ツツジが嬉しそうに笑った。
「白雨ちゃん、本当にこのはくんのことが大切なのね~」
「ふふ。そうだね」
白雨は特に否定することもなく答える。
このはは少しだけ照れながら、ツツジのほうを見る。
「次は胸回りを測るわね~」
「はい」
「それで……このはくんは、普段どんな服を着るのが好きなの?」
「俺ですか?」
「ええ。せっかく仕立てるんだもの。好みは聞いておきたいわ~」
このはは今着ている服を見下ろす。
「こういう感じの、落ち着いた服が好きですね」
「なるほど~。色は?」
「黒とか、紺とか……あまり明るすぎない色かな」
「ふふ。白雨ちゃんと似てるわね~」
ツツジが白雨を見る。
「そういえば、白雨ちゃんも黒い服が多いものね」
「言われてみれば、そうかもしれないね」
白雨が自分の服を見下ろす。
「じゃあ、白雨ちゃんと並んだときにも似合うようにしましょうか~」
「それはいいね」
「白雨……」
即答する白雨に、このはが少しだけ苦笑する。
「うふふ。」
ツツジは楽しそうに笑いながら、採寸を続けた。
しばらくして、
「はい、おしまい」
ツツジがメジャーを片付ける。
「これで大丈夫よ~。あとは私に任せてちょうだい」
「ありがとうございます」
「すぐに完成させちゃうから楽しみに待っててね」
「はい」
「私も楽しみにしているよ」
「私の庭を二人で散歩して待っててね〜♡」
二人が屋敷を出る。
庭園を歩きながら、このははふと振り返った。
「ツツジさん、すごく優しい人だったな」
「そうだろう?」
「白雨が言ってた通りだった」
「昔からああいう子なんだよ」
白雨は花々を眺めながら歩く。
「困っている相手がいると、放っておけない。自分にできることなら、喜んで手を貸すんだ」
「白雨とは、ずいぶん長い付き合いなんだよな」
「ああ。長い付き合いさ」
白雨が少しだけ笑う。
「だからこそ、君の服を頼むならツツジがいいと思ったんだ」
「俺のために?」
「うん」
白雨は自然にこのはの隣へ寄る。
「せっかくなら、君が気に入るものを作ってほしいからね」
「……ありがとう、白雨」
「うん、どういたしまして」
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