愛の大妖
躑躅と桃の花が咲き誇る庭園。
このはは、辺りを見渡しながら歩いていた。
「すごいな……」
どこを見ても花が咲いている。
その景色に見惚れていると、前方から一人の女性が歩いてきた。
桃色の長い髪。
細められた目に柔らかな笑みを浮かべ、ピンクと白を基調にした看護師とメイドを合わせたような服装をしている、穏やかな雰囲気の女性だった。
「まあ、白雨ちゃん」
女性が嬉しそうに声を上げる。
「久しぶりね~」
「久しぶりだね、ツツジ」
白雨も穏やかに笑う。
「元気そうで何よりだよ」
「白雨ちゃんも元気そうね~」
ツツジは白雨の隣にいるこのはへ目を向ける。
「それで……こちらの男の子は?」
「このはだよ」
白雨が紹介する。
「私と一緒に暮らしているんだ」
「初めまして」
このはが頭を下げる。
「初めまして、このはくん。私はツツジ。
愛の大妖なのよ〜。よろしくね~」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ツツジはにこにことこのはを見る。
そして、白雨とこのはを交互に眺める。
(……?)
白雨ちゃんが、人間の男の子を連れてきた。
しかも――
自然に並んで歩いている。
(……なるほど〜♡)
「……?」
このはが不思議そうにツツジを見る。
「どうかした?」
「ううん~。なんでもないわよ~」
ツツジは満面の笑みを浮かべる。
「それで今日は、どうしたの?」
「このはの服を仕立ててもらいたくてね」
白雨が持ってきた素材を差し出す。
「これを使ってもらえないかな」
ツツジは素材を受け取り、じっくりと眺める。
「まあ。白雨ちゃんの作った素材ね~」
「うん。このはに合うものを作ってほしいんだ」
「もちろんよ~」
ツツジは嬉しそうに頷く。
「任せてちょうだい」
そして、もう一度このはを見る。
「じゃあ、まずは大きさを測らないとね~」
「採寸ですか」
「そうよ~。ちょっとこっちに来てね」
このはがツツジのところへ歩いていく。
その背中を見ながら、ツツジはちらりと白雨を見る。
白雨はこのはを穏やかに見つめている。
(……白雨ちゃんが、自分で素材を用意して)
(この子のために服を作ってほしくて、わざわざ私のところまで来たのね~)
ツツジの胸の中が、いっぱいになる。
(愛ね……!)
それからツツジは嬉しそうにこのはの肩や腕の長さを測っていく。
「このくらいの丈がいいかしらね~。白雨ちゃんはどう思う?」
「君に任せるよ。きっと似合うものを作ってくれるだろうからね」
「まあ!」
ツツジは嬉しそうに白雨を見る。
そのあとも二人は服の形について話し合い、このははその隣で二人のやり取りを眺めていた。
彼女もまた長い付き合いなのだろう。
言葉を交わす二人の間には、気を遣うような雰囲気がまったくない。
やがてツツジは、そんな二人を交互に見つめる。
白雨はいつもの穏やかな表情。
このはも、そんな白雨の隣にいることがすっかり自然になっている。
ツツジの口元が、ゆっくりと緩んだ。
「ねえ、白雨ちゃん」
「なんだい?」
「二人はラブラブなのね~♡」
「えっ」
このはが思わず声を漏らす。
白雨は少しだけ目を細めると、隣にいるこのはを見た。
「……そう見えるかい?」
「うん。とっても仲良しだもの~」
「ふふ。そうか」
白雨は小さく笑った。
その表情を見て、このはは少しだけ頬を赤くする。
「ふふ。素敵ね~♡」
そんな二人を見ながら、ツツジは嬉しそうに微笑んでいた。
庭には、桃の花びらが静かに舞っていた。
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