種
予約投稿が明日になってた凡ミス…
朝。
このはは庭の隅にしゃがみ込んでいた。
「白雨、これって何?」
手のひらに乗せているのは、小さな種だった。
白雨が隣まで歩いてくる。
「それは花の種だよ」
「どんな花が咲くの?」
「育ててみれば分かるさ」
「また秘密?」
このはが少し笑う。
「秘密というほどじゃないけれどね。花が咲くまでのお楽しみかな」
「じゃあ、育ててみたい」
「うん。そうしようか」
白雨は庭の一角を指差した。
「ここなら日当たりもいい。土も柔らかいから、きっとよく育つよ」
「分かった」
このははそこへしゃがみ込み、土を掘り始める。
白雨も隣にしゃがんだ。
「もう少し深く」
「このくらい?」
「うん。それくらいで大丈夫」
種を土の中へ入れる。
その上から、二人でそっと土をかぶせていく。
「これで終わり?」
「まだだよ」
白雨が水の入った桶を持ち上げる。
「最後に水をあげよう」
「それは俺がやるよ」
「なら、お願いしようかな」
このはが桶を受け取り、ゆっくりと水をかける。
土が少しずつ濡れていく。
「……なんか、これだけなのに楽しみだな」
「ふふ。そういうものさ」
白雨は小さな土の山を眺める。
「ここから芽が出て、葉が増えていく。君が毎日見ていれば、きっと変化にも気づけるよ」
「じゃあ、毎日見に来るよ」
「毎日?」
「うん」
このはは笑う。
「せっかく白雨と一緒に植えたんだから」
白雨が少しだけ目を細める。
「……そうかい」
「白雨も見に来るでしょ?」
「もちろん」
白雨は穏やかに笑った。
「一緒に育てるんだからね」
「うん」
二人はしばらく、何もない土を眺めていた。
そこにはまだ、芽も葉もない。
それでも、このはには少しだけ先の景色が見えるような気がした。
どんな花が咲くのか。
どれくらい大きくなるのか。
それを白雨と一緒に見ていく。
「白雨」
「何かな?」
「花が咲いたら、一緒に見ような」
「……うん」
白雨は静かに頷いた。
「楽しみにしているよ」
二人は並んで立ち上がる。
まだ何もない小さな場所を、もう一度振り返る。
そして、いつものように並んで家へ戻っていった。
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