無意識
昼。
庭の手入れをしていたこのはと白雨は、並んで植物を眺めていた。
「この辺り、少し伸びてきたね」
「うん。少し剪定しようか」
白雨がしゃがみ込み、植物へ手を伸ばす。
そのとき。
足元の根に、白雨の足が引っかかった。
「……っ」
身体が傾く。
「白雨!」
このはが咄嗟に腕を伸ばした。
白雨の身体が、このはの胸元へ倒れ込む。
「……」
「……」
このはは、そのまま白雨を抱き留めていた。
白雨も何も言わない。
ただ――
ゆっくりと、このはの背中へ腕を回した。
「……えっと、白雨?」
返事はない。
白雨はそのまま、このはに身体を預けている。
いつもより、ずっと近い。
白い髪がこのはの腕に触れ、互いの吐息まで分かりそうな距離だった。
それでも、どちらも動かなかった。
「……」
このははどうしていいのか分からず、そのまま動けずにいる。
白雨もまた、何も言わずに抱き着いたままだった。
風が吹く。
二人の髪が静かに揺れる。
どれくらいそうしていたのか。
白雨がふと、自分の腕を見る。
「……あっ」
ようやく気づいた。
自分が、このはを抱きしめている。
白雨は少しだけ目を見開き、ゆっくりと腕を離した。
「……ごめんね」
「いや……大丈夫」
このはも少しだけ視線を逸らす。
さっきまで近かった距離が、急に遠く感じる。
「……」
「……」
二人とも、何を話せばいいのか分からない。
白雨が先に口を開く。
「……転びそうになったとき、君が支えてくれたから」
「うん」
「だから、その……」
白雨は少しだけ言葉に詰まる。
「……安心しちゃったんだと思う」
「......そっか」
このはが白雨を見る。
白雨も、このはを見る。
目が合う。
けれど、今度は二人ともすぐに目を逸らした。
「……今日の私は、少し変だね」
このはは小さく笑う。
「なんか、俺も変に意識しちゃった」
白雨は少しだけ頬を緩める。
「……私もさ」
二人はそれ以上、何も言わなかった。
ただ。
さっきまで触れていた距離を、少しだけ惜しむように。
いつもより近い場所に並んで、庭を眺めていた。
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