成長
朝。
このはは庭を歩いていた。
いつものように植物を眺めながら、ゆっくりと歩いていく。
ふと、一つの植物の前で足を止めた。
「……あれ?」
少し前まで小さかった芽が、いつの間にか葉を広げている。
「白雨」
少し離れたところで植物の手入れをしていた白雨が振り返る。
「何かな?」
「これ、前より大きくなったよね?」
白雨がこのはの隣まで歩いてくる。
「うん。ちゃんと育っているね」
「やっぱりそうなんだ」
このははしゃがみ込み、植物を眺める。
「毎日見てると、あんまり変わってないように感じるけど……」
葉にそっと触れる。
「こうして前と比べると、結構大きくなってるな」
「植物の成長なんて、そんなものだよ」
白雨は穏やかに言う。
「一日で大きく変わるわけじゃないからね」
「少しずつ、か」
「そう。気づかないくらい少しずつ」
このははしばらく植物を眺めていた。
「なんか、不思議だな」
「何がだい?」
「昨日と今日だけ見たら、ほとんど変わってないのに」
このはは笑う。
「ちゃんと成長してるんだよな」
「うん」
白雨も植物へ目を向ける。
「人や妖も、似たようなものかもしれないね」
「白雨は、こういうのずっと見てきたんだよね」
「そうだね」
白雨は静かに答える。
「芽が出て、葉が増えて、花が咲いて……そうして季節を越えていく」
「その間ずっと見てるの?」
「全部ではないけれどね」
白雨は少し笑った。
「それでも、育っていく姿を見るのは好きだよ」
このははもう一度、植物を見る。
小さな葉が風に揺れている。
「これから、もっと大きくなるかな」
「きっとね」
「花も咲く?」
「うん。もう少し先だけど」
「楽しみだな」
このはは嬉しそうに笑った。
白雨も、その隣で静かに笑っていた。
励みになりますので良ければブックマーク、評価、感想よろしくお願いします。




