対等
それから、数日が経った。
このはは庭で、白雨と一緒に植物の手入れをしていた。
「白雨、こっちの草は抜いていい?」
「うん。それは雑草だからね」
「分かった」
このははしゃがみ込み、教えられた草を抜いていく。
しばらくして、今度は別の植物を見つけた。
「白雨、これって前に教えてもらったやつ?」
「どれかな?」
「これ」
このはが指差す。
白雨が隣まで歩いてくる。
「そうだよ。よく覚えていたね」
「何度か見てるからね」
「ふふ。ちゃんと覚えてくれているのは嬉しいよ」
二人はそのまま庭の手入れを続ける。
「……」
ふと、白雨が手を止めた。
「どうしたの?」
このはが振り返る。
白雨は少しだけ、このはを見つめていた。
「……いや」
「?」
「すっかり慣れたね」
「何に?」
「私の呼び方にさ」
「ああ……」
このはは少し考える。
「そういえば、そうだね」
「最初は『白雨さん』だったのにね」
「うん。今はもう、こっちのほうが自然かな」
「そうかい」
白雨は穏やかに微笑んだ。
「私も、今のほうが好きだよ」
「俺も白雨と対等に接せるようになった気がして嬉しいよ」
白雨も嬉しそうに少しだけ目を細めた。
それから、また庭の手入れを始める。
少しして、このはが声をかけた。
「白雨、こっちは終わったよ」
「うん。ありがとう」
そのやり取りをしてから、白雨がふと笑った。
「なんだか不思議だね」
「何が?」
「君が私を呼び捨てにしていることが、もう当たり前になっている」
「確かに」
このはも庭を眺めながら笑う。
「最初は結構恥ずかしかったんだけどな」
「そうだったね」
「でも、今は普通に呼べるようになったよ」
「それならよかった」
白雨はそう言って、優しく微笑んだ。
「それと……」
「ん?」
「敬語も、随分減って自然になったね」
このはが少し驚いた顔をする。
「……そう?」
「うん」
白雨は楽しそうに笑う。
「君が少しずつ自然に話してくれるようになったのが、嬉しくてね」
「……そう言われると、ちょっと恥ずかしいな」
「ふふ」
白雨は笑いながら、手にしていた小さな枝を置いた。
このはも少し笑って、また植物へ目を向ける。
「白雨」
「何かな?」
「これはどこに植えようか?」
「そうだね……」
白雨はこのはの隣にしゃがみ込む。
肩を寄せて二人で植える場所を考えながら、穏やかに言葉を交わしていく。
「白雨」と呼ぶことも。
「うん」と返事をすることも。
それはいつの間にか、二人にとって当たり前のことになっていた。
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