↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プラント ~大妖の森で君と暮らす~  作者: 天鵞絨色の紫陽花
テラリア大陸編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/82

髪


午後。


このはは縁側で本を読んでいた。


森を渡る風が心地よく、木々の葉が静かに揺れている。


しばらくすると、白雨が庭から戻ってきた。


「このは」


「はい?」


「今日は何を読んでいるんだい?」


「魚の本です。昨日海に行って、もっと色々なものを知りたくなって」


「なるほど」


白雨が隣に腰を下ろす。


「熱心だね」


「白雨さんにも色々教えてもらってますから」


「そう言ってもらえると嬉しいよ」


白雨が微笑む。


ふと、このはは白雨の髪に目を向けた。


「……あれ?」


「どうしたんだい?」


「白雨さん、髪に葉っぱがついてます」


「葉っぱ?」


白雨が自分の髪へ手を伸ばす。


「どこかな?」


「後ろのほうです」


「見えないね」


「よかったら、俺が取りますよ」


「うん。お願いしようかな」


白雨がこのはに背を向ける。


このはは白雨の長い白髪に手を伸ばした。


指先に、さらりとした髪が触れる。


「……ここですね」


小さな葉を摘まみ取る。


「取れました」


「ありがとう」


白雨が振り返る。


その瞬間、このはの手がまだ白雨の髪に触れていることに気づいた。


「……」


「……」


このはが慌てて手を引こうとする。


しかし白雨は、その手をそっと掴んだ。


「どうしたんだい?」


「いえ……その」


白雨は掴んだ手を離さない。


そのまま、少しだけ顔を近づける。


「……ふふ、照れてるのかい?」


「……白雨さんが近いからです」


白雨は嬉しそうに微笑んだ。


「君に髪を触られるのは、嫌じゃないよ」


白雨は自分の髪を一房、指先ですくう。


「君になら、好きなだけ触らせてあげてもいい」


「……」


このはの顔が赤くなる。


「えっと……その、それは……」


「ふふ」


白雨は楽しそうに笑う。


「そういう顔をする君を見るのも、最近は少し楽しくてね」


「やっぱり最近意地悪ですよ」


「そうかな?」


「そうです」


「少しくらい許しておくれよ」


白雨はそう言って、このはの手を自分の手で包む。


「昨日、君が握り返してくれたのが嬉しかったからね」


「……はい」


「だから、今日も」


白雨はそのまま、このはの手を優しく握る。


「こうしていてもいいかい?」


このはは少し照れながらも、手を握り返した。


「……はい」


「ありがとう」


白雨は満足そうに微笑む。


二人の間を、穏やかな風が通り抜ける。


白い髪が風に揺れ、白雨はこのはを静かに見つめる。


その表情には、いつもの余裕と。


ほんの少しの嬉しさが滲んでいた。

励みになりますので良ければブックマーク、評価、感想よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。