変わってゆく日常
森へ戻ってきた翌日。
このはは縁側で、昨日買った魚を眺めていた。
「……やっぱり海の魚って、見た目も少し違いますね」
「昨日から随分気に入ったようだね」
白雨が隣に座る。
「はい。わだつみさんにも色々教えてもらいましたし」
「ふふ。わだつみも君のことを気に入ったみたいだったしね」
「そうなんですか?」
「そうだと思うよ」
白雨はそう言って、魚を眺めるこのはを見る。
「……君は、本当に色々な大妖と仲良くなるね」
「そうですか?」
「うん」
白雨は少しだけ笑った。
「星架もアギトも、わだつみも。君と話していると、みんな楽しそうだ」
「白雨さんもですか?」
「私?」
「はい」
このはが白雨を見る。
「白雨さんは昨日楽しめましたか?」
白雨は少し黙った。
それから、このはとの距離を少し縮める。
「君といると、いつも楽しいよ」
「……」
このはが顔を赤くして黙る。
白雨はそんな彼を見て、微笑んだ。
「どうしたんだい?」
このはは少しだけ視線を逸らした。
「……なんでもないです」
「そう」
白雨はそれ以上聞かなかった。
ただ、そのまま隣にいる。
肩が触れそうな距離。
以前なら、このはが少し離れて座っていた距離だった。
けれど今日は、このはも動かなかった。
しばらく二人で庭を眺める。
「……白雨さん」
「何かな?」
「昨日は海に連れていってくれてありがとうございました」
「こちらこそ」
「?」
「君がずっと楽しそうだったからね」
白雨は穏やかに笑う。
「またどこかへ行きたくなったら、私に言うといい」
「はい!」
少しの沈黙。
それから白雨は、そっとこのはの手に自分の手を重ねた。
「……じゃあ、今日はここで私とゆっくり過ごそうか」
「はい」
このはも、その手を握り返した。
白雨は何も言わず、ただ嬉しそうに微笑んでいた。
森には、いつもの静かな時間が流れていた。
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