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プラント ~大妖の森で君と暮らす~  作者: 天鵞絨色の紫陽花
テラリア大陸編

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龍の庭仕事

本日2話目です。


「ふえーんなのじゃ……」


庭の片隅。


アギトがしょぼしょぼとした顔でしゃがみ込んでいた。


「妾は龍の大妖じゃぞ……」


一本。


草を抜く。


「それがどうして、朝から草むしりなんぞ……」


「……」


縁側から、その様子をこのはが眺めている。


「ふふ……」


「おい、このは!」


アギトが振り返る。


「笑うでない!」


「す、すみません」


「絶対に面白がっておるじゃろ!」


「だって……」


このははアギトを見る。


くしゃみで雷を引き起こすような龍の大妖。


そんな存在が今は庭にしゃがみ込んで、黙々と草を抜いている。


「大妖って、もっとこう……」


このはは少し考える。


「偉そうにしてるものかと」


「妾は十分偉そうじゃろ!」


「自分で言っちゃうんですね」


アギトは胸を張る。


しかし、その手には抜いた草が握られている。


このははまた笑った。


「白雨(はくう)さん」


「うん?」


隣に座っていた白雨へ声を掛ける。


「本当にこれ、全部やらせるんですか?」


「そうだよ」


「容赦ないですね」


「この森は私の大切な場所だからね」


白雨は庭を見る。


「丁重に扱ってもらわないと困るんだ」


「なるほど……」


そうしていると。


「白雨嬢!この辺は全部抜いてよいのか!?」


アギトの声が飛んでくる。


「それは雑草じゃないよ」


「なんじゃと!?」


アギトが慌てて手を止める。


「こいつはどうじゃ!?」


「それも違うね」


「……」


アギトが庭を見回す。


「雑草との区別がつかぬ……」


「龍だからね」


「それは関係ないじゃろ!?」


このはは吹き出した。


「ふふ……」


「このは!」


「すみませんって」


白雨も小さく笑っている。


---


しばらくして。


庭の一角が綺麗になっていた。


「おお……」


このはが感心する。


「結構綺麗になりましたね」


「そうじゃろう!」


アギトが胸を張る。


「妾はやればできる龍なのじゃ!」


アギトは得意げに笑う。


その肩へ。


青い蝶がふわりと止まった。


「お」


このはが気づく。


「ルミナス」


ルミナスはアギトの肩から、今度は頭の上へ移動した。


「……」


アギトが固まる。


「お主も妾を慰めておるのか?」


アギトは少し嬉しそうにする。


ルミナスは青い翅を少し揺らす。


「まあ、悪い気はせぬな」


このはは、その様子を眺めて笑った。


---


昼を過ぎた頃。


アギトはようやく最後の草を抜いた。


「終わったぞ!」


両手を広げる。


「これでよいじゃろ!」


白雨が庭を見る。


「うん。綺麗になったね」


「ふふん」


アギトが満足そうに笑う。


「これで妾へのお仕置きは終わりじゃな?」


「そうだね」


「やっと終わったのじゃ~!」


---


庭仕事を終えたアギトは、縁側へ戻ってきた。


「お疲れ様」


白雨が湯飲みを差し出す。


「おお……」


アギトは受け取る。


一口飲んで、深く息を吐いた。


「……庭仕事というのは、なかなか大変じゃな」


「そうだね」


「妾には向いておらぬ」


「そうかい?」


「龍は好きに空を飛んでおるほうが性に合っておる」


このはが笑う。


アギトは満足そうに頷いた。


そして、空を見る。


「では、そろそろ妾は帰るとするかの」


「うん」


アギトは立ち上がる。


「ではな、このは」


「はい。また会いましょう」


「うむ」


アギトは白雨を見る。


「また遊びに来るぞ、白雨嬢」


「今度はくしゃみをしないようにね」


「……善処するのじゃ」


「そこは約束してほしいかな」


「わ、分かったのじゃ!」


アギトは慌てて答える。


このはが笑う。


「じゃあ、また」


「うむ!」


アギトは龍の姿へ戻ると、翼を広げた。


そのまま空へ飛び立ち、森の向こうへ消えていく。


---


静かな庭に戻る。


このはは縁側へ腰を下ろした。


白雨も隣へ座る。


「……なんだか」


「うん?」


「大妖って、もっと凄い存在だと思ってました」


「そうかい?」


「はい」


このはは、先ほどまでアギトがいた場所を見る。


「でも、今日のアギトさんを見てたら……」


少し笑う。


「意外と普通なんだなって」


「ふふ。そうかもしれないね」


「それに」


このはは白雨を見る。


「白雨さんが大妖だって知っても」


白雨が、このはを見る。


「やっぱり白雨さんは白雨さんですね」


「……」


白雨は少しだけ目を細めた。


「そうかい」


「はい」


このはは笑う。


「今までと何も変わらないです」


しばらく、二人の間に静かな時間が流れる。


白雨は庭を眺めながら。


「……ありがとう、このは」


小さく、そう呟いた。


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