第五話 オレを助けろ
この作品はAIを使用しています。ストーリーの構成と下書きは自分でやっていますが、読みやすい文章にしてもらうためにAIを使用しております。ほとんどの文章力はAIのものです。ご了承ください。
頭を叩き割るような激痛がようやく引き、次にレイの肌を刺したのは、冷たいコンクリートではなく、柔らかく温かい草の感触だった。
「……っ」
荒い呼吸とともにレイが目を覚ますと、そこは見渡す限りの草原だった。頭上に広がるのは、夜を終えようとする薄明の空。
(良かった……逃げ切れたんだ)
ホッと胸を撫でおろしたのも束の間、視界がぐにゃりと歪んだ。
解毒剤はギリギリ間に合ったものの、山賊やシオンに付けられた傷からの出血が多すぎる。全身の力が一気に抜け、身体がふらふらと傾いた。
抗う間もなく、レイはすぐ隣に横たわっていたヒイロの胸元へと、覆い被さるように倒れ込んでしまう。
「う、お……?」
肉厚なクッションにぶつかったような衝撃。同時に、すぐ下から低い声が響いた。ヒイロの目が覚めたのだ。
至近距離で視線が交差する。少女の柔らかい体温と、微かな血の匂いがヒイロの鼻腔をくすぐった。
――その緊迫した空気を破るように。
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぎゅるるるるる!!!
静かな草原に、地響きのような大音量でお腹の音が鳴り響いた。
「お! おはよう、レイ!」
「……はよ」
ヒイロはまだ眠たげな目を擦りながら、ばっと身体を起こす。
「って、怪我してるじゃん!」
なぜか怒ったような、少し硬い声だった。
「……大丈夫だ。なんでもない」
そう答えた瞬間、頬の傷がずきりと痛んだ。
「っ……」
思わず顔をしかめ、痛みを紛らわすためにレイはもう一度草原に寝転がった。そんな様子を見て、ヒイロも眉をひそめる。
「何があったんだ? 説明してよ」
ふわり、と彼の桃色の髪が、暖かい風に揺れた。
(この男は本当……)
「……お前こそ、腕は痛くないのか?」
「……痛くない。全っ然、1ミリも痛くないね」
「目を逸らして言うなよ」
「ほ、本当だ!」
「……そうか」
レイは少し笑って、頬の傷に触れた。頬も脇腹も、実際は焼けるように痛い。
「オレもだよ」
ムッとした顔のまま言葉に詰まるヒイロを横目に、レイは思考を巡らせる。
(あの商人の固有魔法は『探索』だ。いずれまた見つかってしまうだろう)
これ以上、巻き込まれるなんてごめんだ。本当に。
(……いや)
レイはよろめきながらも立ち上がり、ヒイロに向き直ると、手元にあったものをヒョイと投げつけた。
「……? なんだこれ」
受け取ったのは小さな革袋だった。中からジャラジャラと金属の音が鳴る。
「オレが持ってる全財産だ」
「え!?」
「それやるから、オレの手伝いをしろ」
「……て、手伝い?」
シオンがヒイロではなく、自分を追ってくる可能性もある。それなら、最初から一緒にいた方が迎撃しやすいはずだ――そう自分に言い訳をする。
「手伝いって……何をするんだ?」
「人探し」
「オレには探している人がいる」
「人探し?大事な人なのか?」
「いや逆だ」
「逆?」
「ああ。知らないやつだ。顔も名前も」
「なんだそれ」
意味がわからない、とヒイロが怪訝な顔をした。
「お前の力をオレのために使え。お前みたいな力があれば、今まで入れなかった場所にも手が届く」
「………」
「とにかく、オレがお前を雇ってやる」
ヒイロはうーんと片手を顎に当てて唸る。
「もちろん、後でもっと金を払うし、食い物にだって困らせないぜ」
「食い物……!」
レイは拳を握る。
唇を噛む。
一度だけ息を吐く。
「……ヒイロ」
「?」
「オレを助けろ」
そして、手を差し出す。
ヒイロの表情が変わる。
少し笑い、
「……俺の食費はかさむぞ!」
その手を掴む。
夜明けの光が二人を包み込んだ。
◇
「あ……やばいかも」
バタンッと突然倒れるヒイロ。
完全に不意を突かれたレイは、そのまま巻き添えを食らう形で地面に倒れ込む。
完全に押し倒される形になり、ビクとも身動きが取れない。
その重苦しさに息を詰まらせるレイをよそに、当の本人はすでに緊張感のないイビキをかき始めていた。
「重っ……!」
(つーか、傷口がめちゃくちゃ痛い……!!)
「退け、この……っ!」
「……クカーッ」
なんとかその下から這い出そうと、必死に身体を動かしていた時だった。レイはある異変に気がつく。
「んん?」
左手に、じっとりとした熱を感じる。
触れているのは、衣服の布のような感触。違和感を拭えず、レイがそこに視線を向けた、その瞬間。
視線の先にあるのは、ヒイロの右腕。
もう無いはずの右腕。
そこには――。
「………っ!?」
はだけた布の隙間から露わになったヒイロの皮膚には、傷跡ひとつ残っていなかった。
あれほど激しく溢れ出ていた出血も、嘘のように綺麗に止まっている。
(コイツの固有魔法は、身体強化系じゃなかったのか……!?)
脳内を激しい困惑が支配する。
この世界の理において、固有魔法は一人につき一つ。
例外などあり得ないはずだ。
「………」
だが、驚愕に震えるレイの視界が、ぐらりと大きく歪んだ。
押し寄せる激痛と疲労が、限界を迎えた身体を蝕んでいく。
(痛い、な……)
(あ……ダメだ……)
抗いきれない強烈な眩暈に襲われ、レイもまた、そのまま深い闇へと意識を手放した。




