第四話 月明かり、狂信者
この作品はAIを使用しています。ストーリーの構成と下書きは自分でやっていますが、読みやすい文章にしてもらうためにAIを使用しております。ほとんどの文章力はAIのものです。ご了承ください。
「お、おい……」
ボスが降伏の意を示した後の話だ。
「お前、だ、大丈夫か。今すぐ病院に」
「……病院は、ダメだ……」
意識が飛びかける中、ヒイロは掠れた声で、けれど拒絶の意志を明確に示した。
「は?なんで…」
「それは……」
「……」
言葉に詰まるヒイロ。
「どうかしましたか?とりあえず今は応急処置を!」
商人に急かされ、レイは渋々応急処置に移る。
◇
ヒイロを洞窟の入り口近くに寝かせたあと、レイは商人に促されるまま、山賊のアジトの最奥へと連れてこられていた。
「本当に病院に連れて行かないのか」
「ええ。あの方が嫌がっているのに行かせられないですよ」
「だけど」
「しつこいですよ」
(………この商人に逆らったらこの森からも出られない)
この男とはなるべく波風を立てないようにしなければ。
「着きました!」
そこには山賊たちがこれまでに略奪してきたであろう、金銀財宝が雑多に積み上げられている。
「いやーお宝お宝ぁ!!ひゃっほいひゃっほいですね!」
「………」
男が嬉しそうに飛び跳ねる。
「ありました、これです!」
彼が宝の山をかき分け、嬉々として取り出したのは、一枚の鏡だった。
顔よりも一回り大きい、装飾の施された銀の鏡。
「なぁ」
レイは三つ編みをいじりながら、ぐるぐる眼鏡の奥の目を細めた。
「その鏡、一体何なんだ? ただの高価な骨董品ってわけじゃねえだろ。」
商人は鏡の表面を愛おしそうに衣服で拭きながら、のんびりとした口調で返す。
「おや、気になりますか? ですが、その答えはヒイロ君と一緒にいる時に教えてあげますよ」
「……」
(なんでもったいぶるんだよ)
レイはそれ以上の追及を諦め、懐に入れた金貨の感触を確かめながら、ヒイロの元へと戻ることにした。
先に進む商人。
キラリ
レイの目に何かが映る。
「……あ」
手のひらより少し小さいくらいの鏡の破片。
金銀財宝の積み上げられた山の中で、レイにはそれが一際明るく見えた。
(…………半年は遊んで暮らせる、か)
もちろんそれもポケットに入れた。
◇
洞窟の入り口に戻ると、ヒイロは相変わらず岩肌に背を預けて泥のように眠っていた。
だが、レイはふと足を止める。
(……気のせいか?)
さっきまで死人かと思うほど青白かったヒイロの顔に、うっすらと健康的な赤みが差している。それだけではない。
手付けずのはずの右腕の傷口から、微かに熱気のようなものが立ち上っているように見えた。
異常なまでの回復力。
その異様さにレイが微かな違和感を覚えた、その時だった。
商人が、唐突にヒイロの側へと歩み寄った。
そして、眠る少年の左手を、そっと両手で包み込むように握りしめる。
何かを、じっくりと確かめるように。
その顔に浮かぶのは先ほどのへらへらとした笑みではない。
ニコリ。
三日月のように吊り上がった口元。不気味な笑みが、暗い洞窟の中で嫌に鮮明に浮かび上がる。
強烈な嫌な予感がレイの脳裏を駆け抜けた。
身体が反射的に動き、商人の手をヒイロから引き離そうと、その手首を掴む。
触れた、その瞬間。
――バキンッ。
頭蓋の内側を直接叩き割られたような、不快な音が脳を震わせた。
視界がぐにゃりと歪む。
そして思い出す。
森に来た時の割れるような痛み。
(また、これか……っ!)
世界が裏返る感覚と共に、レイの意識は一瞬にして闇へと突き落とされた。
◇
「…………っ!!」
頬に冷たい夜風が吹き付け、レイは荒々しく身を起こした。
石畳でも、洞窟の泥でもない。ひび割れた冷たいコンクリートの床。周囲を見渡すと、そこは見渡す限りの古い廃墟だった。崩れた天井の隙間から、寒々しい月光が差し込んでいる。
足元には、相変わらず眠ったままのヒイロが転がっていた。そして――
「……?」
少し離れた場所で、商人が首を傾げていた。周囲の景色を何度も見回し、困惑したように頬を掻いている。
「ここは……どこだ?」
レイがナイフの柄に手をかけながら睨みつけると、商人はレイの存在に今気づいたように目を見開いた。
「君もいたんですね」
驚いたのも一瞬、商人はすぐにいつもの締まりのない笑みに戻り、ボソリと呟いた。
「まあいいでしょう。これも彼のお導き」
「はぁ?何言って……」
「………上へ行きましょう。ここは少し見晴らしが悪い」
商人はヒイロの身体を軽々と背負うと、廃墟の奥にある、崩れかけの螺旋階段を上がり始めた。
逃げるなら今だ。
そう考えた。
だが背負われたヒイロを見る。
(………)
いつでも仕掛けられる距離を保ちながら、レイは警戒を最大にしてその後を追う。
カツン、カツンと、二人の足音が静かな廃墟に不気味に響いた。
階段を上がる途中、商人が前を向いたまま、ポツリポツリと語り始めてきた。
「僕ね、孤児だったんですよ」
レイは眉をひそめた。
なぜ今そんな話をする。
「寒い寒い夜のことでした。飢えて、死にかけていました」
「何度も助けを求めました」
「でも誰も手を差し伸べなかった」
少し笑う。
その言葉に、レイの指先が僅かに震える。
無意識に手のひらへ爪が食い込んでいた。
「当然ですよね。自分の命の方が大事ですから」
振り向いてこちらをチラリと見る商人。
「…………」
商人はまた、歩き続ける。
レイはただ俯いていた。
「だけど、僕は諦めきれなかった」
「誰か一人くらい、何の価値もない僕を選んでくれる存在がいるんじゃないかって」
階段を登り終え、商人は月を眺める。
「前に行ってください」
商人は命令する。
(………)
屋上を吹き抜ける夜風が、レイの桃色の髪を揺らす。
レイの頭の中には、聞きたいことが山ほどあった。
なぜ今そんな話をしたのか、この男の本当の目的は何なのか。
だが、そんな口を挟ませない圧があった。
商人はヒイロをそっと床に横たえると、満月を背にしてゆっくりと振り返った。
「そして、ようやく見つけたんです。あの深い森の中でね」
狂気を孕んだ目が、横たわるヒイロを見下ろす。
「神を」
「……は?」
「フフッフフフアハハハハ」
「すべてあのお方の予言通り!」
「………」
「あなた方が森に来ること」
「山賊に襲われること」
突飛なことを言い始めた商人に困惑が止まらない。
「そして、ヒイロ君……いやヒイロ様に出会う事」
「絶対なる力を持ち」
「黄金の太陽をその身に宿し」
「万象を救済へ導く者」
「このヒイロ様こそが、僕たちがずっと求めていた存在……」
レイには、男の言葉が何一つ理解できなかった。
神?予言?僕たち?
何を言っている。
目の前にいるのは、宝を見て馬鹿みたいにはしゃいでいた、あの胡散臭い商人のはずだった。
「挨拶が随分、遅れてしまいましたね」
月光を浴びて美しく、輝く淡い紫色の髪。
爛々と、獲物を定める獣のように妖しく光る黄色の瞳がレイを見つめる。
向けられる視線だけで、レイの全身の細胞がブワリと逆立ちその場から逃げ出しそうになる。
満月の光が、彼の姿を照らし出す。
「僕は『凶鏡教』の伝道師。シオンと申します」
シオンと名乗った男は、胸に手を当てて優雅に一礼する。
「私はヒイロ様をお迎えにあがる命を受け、ここに来ました」
「…………なぜ、その話をオレにした」
レイはジリジリと後退りながら、いつでも逃げ出せる体制を取る。
(嫌な予感が止まらない)
シオンは冷たい黄色の瞳をレイに向け、酷く穏やかに微笑んだ。
「冥土の土産ってやつですよ。レイ君。君にはここで死んでもらうことにしました。」
「ちなみに今決めました」
溢れ出る冷や汗。
震える指。
募る恐怖。
元々、ヒイロとはただの偶然の付き合いだ。
こんな正真正銘の狂人に深入りする筋合いは無い。
そう思うのに。
レイの瞳は、眠る陽色の少年から逸らせなかった。
「………………来いよ」
(固有魔法は……コイツじゃ無理か)
ナイフを慎重に握り直す。
シオンは薬品のようなものを取り出し、こちらに投げつける。
カラカラカラ…。
レイの数歩前で止まる。
「毒です」
ッパァン。
周囲に散布される液体。
「おや、少し手元が狂いました」
わざとらしく手をヒラヒラする。
月に雲がかかり、影が広がる。
レイは地面を蹴り付け、シオンの方へ飛び出す。
シオンの方もナイフを構える。
シオンの指先が動いた。
次の瞬間、銀色の刃が月光を裂く。
「ッ……!」
レイは身を捻る。顔のすぐ横を、冷たい刃先が通り過ぎた。
右頬から血が流れる。
レイはシオンの顔面めがけてナイフを素早く突き刺す。
慌ててシオンはナイフを顔の前に構え、
ガキィンと激しい音を鳴らしながら防御する。
お互いのナイフが弾き飛ばされる。
だが一瞬のうちにレイは太ももに固定したナイフシースから短刀を引き抜いた。
「終わりだ」
シオンの首元に短刀を切り付ける……はずだった。
「ガハッ……!?」
口が、喉が、焼けるように痛い。
思わず抑えた手には血がべっとりとついていた。
(な、なんだ!?)
「あー言い忘れてました」
「ちょっと蒸気を吸い込むだけでも、結構効きますよ。さっきの毒は」
そう言ってレイの後ろを指差す。
「迂闊でしたね。ジワジワと殺してあげます」
そう言ってシオンは後ろに飛び移る。
レイの前髪を風が揺らす。
(……本日3回目の絶対絶命ってやつだな)
あの男と出会ってから本当に碌なことがない。
深く、ため息をつく。
手先が痺れてきた。
毒が回っているのだろう。
「なぁ、…なんでオレのこと殺しちゃおうとか思ったわけ?」
掠れる声で聞いてみる。
「んー。そうするべきだと思うからです。」
その言葉を聞いてなぜか、異常に落ち着いている自分がいる。
「はは。理由になってねぇよ」
言っている意味がわからない。
なぜ自分が笑っているのかも、わからない。
逃げたい。
こんな狂人の相手なんてごめんだ。
なのに。
足だけは、眠るヒイロの前から動かなかった。
……馬鹿みたいだ。
疲れた。
本当に。
視界が、ブレる。
(なんでオレこんなことしてんだろ………ほんとさ)
レイは遠くを見るように目を細めた。
呼吸を整える。
そして、前を見据える。
シオンはまた薬品をこちらに投げる。
転がり、割れる液体の入った瓶。
……先ほどと同じような毒なのだろうか。
蒸気を吸い込んでも効果のある毒。
おそらく粘膜から効くのだろう。
「…………」
風に吹かれて、割れた瓶が少しこちらに転がってくる。
レイは短刀をシオンめがけて投げつける。
易々と躱されてしまったが、別に構わない。
レイは前に足を進め、瓶を手に取る。
そして、瓶の中身を一気に口の中に流し込む。
鋭利に尖った割れた部分が白い肌に傷をつけた。
「あれ?諦めちゃった感じですか?」
ふらり、
ふらりと前に進む。
「……それ以上近づいたら今度は毒じゃなくナイフが飛んできますよ」
ピタリ。
止まったかと思えば
手に持っていた瓶のかけらをヒイロの方に投げつける。
一瞬気を取られるが
「心中ですか?いや、中身は入っていなかった……なら一体何が目的なんです?」
すぐにレイの方へ視線を戻す。
脅威ではない。
毒が回って手が震えているのが見える。
どんな武器があったとて、それを握る力などない。
おそらく視界もそろそろ見えなくなっている頃だろう。
「最期の言葉くらい聞いてあげますよ」
聞こえていないのか。
レイは俯いたまま動かない。
そしてそのままパタリと倒れた。
「あ、死んじゃいました?」
「………」
ピクリとも動かない。
念のため、慎重に行動しよう。
遠目からレイを観察する。
月が全て雲に包まれる。
数十秒は経っただろうか。
シオンはレイの腕を踏みつけてから脈を確認するために顔を近づける。
「死体の確認は大切なんですよ」
そう言って屈んだシオンはレイの髪を掴み、顔を持ち上げる。
「何度も死んだふりをする者を見てきましたから」
「………あっそぉ」
レイはニヤリといつもの勝気な笑顔を見せる。
「やはりまだ生きてましたか」
(今だ!この距離!)
ガブッ
レイはシオンの口に思い切り噛みついた。
「!?」
口を伝って流れてくる温かい液体。
「な、何すっ」
レイの指先が、シオンの胸元へ滑り込む。
突き飛ばした頃にはもう遅かった。
(やられた!この女、口に毒を含み続けてたのだ)
(この瞬間を待っていたというのか!)
「解毒剤を…!!」
急いで胸ポケットを探る。
——無い。
「オレが今までどうやって生きてきたと思ってる」
もはや声にすらなっていないガサガサの声。
いつのまにかレイの手元にあるシオンが探していた小瓶が数本。
ラベルには「解毒剤」と書かれている。
(……さっきの瞬間に取られたか!)
隙は与えない。
レイは素早くそれを飲み込みシオンの後ろで寝かされているヒイロを掴む。
(まだ起きてないか……まぁいい)
レイはポケットから手のひらよりも少し小さな
鏡の破片を取り出した。
うまくいくかどうかはわからない。
だがもう、賭けるしか無い!
ありったけの力を込めて鏡を握りしめる。
バキンッ




