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第三話 山賊ごちそうさまでした

この作品はAIを使用しています。ストーリーの構成と下書きは自分でやっていますが、読みやすい文章にしてもらうためにAIを使用しております。ほとんどの文章力はAIのものです。ご了承ください。

「いやぁ、いい拾い物しましたよ」

レイは、ぐるぐる眼鏡の奥で笑った。

「こっちは怪力、こっちは捜索の固有魔法を持ってる。どうです? 山賊団の戦力補強にはぴったりでしょう」

商人の肩をぽんぽんと優しく叩く。

「安心してください。売る時は、なるべく高い値段になるよう交渉しますから」

商人は目を瞑って震えている。

「優しさの方向性がおかしいだろ……」

ヒイロのツッコミが入る。

「うるせぇ」

レイは、捕らえられていた商人を地面に座らせ、ヒイロを容赦なく蹴り飛ばす。泥の床へゴロゴロと転がるヒイロを見下ろしながら、レイは肩をすくめた。

「まぁ、別に仲間にしてもらわなくても、オレに金が入ってきさえすればそれでいいんだけどな」

その露骨な態度に、山賊の群れから一人の男が一歩前に出た。男の身体から、じりじりと肌を刺すような圧迫感が放たれる。固有魔法『重圧』の使い手だ。

「……おい、舐めるなよ」

男の低い声が洞窟にこもる。彼は倒れたヒイロを見下ろし、容赦なくその命を奪おうと武器を構えた。

「待て待て、そいつを殺すのは損だぜ」

レイが遮るように手を挙げる。

「オレはコイツの正体を知っている」

一瞬ニヤリと邪悪な笑みを浮かべ

声を張り上げて叫ぶレイ。

「コイツの正体は、この国の王子だ!」

「なっ!?」

山賊たちの動きが止まる。

「もちろん、信用できないのなら殺せばいい!」

(この嘘なら絶対バレない)

――なぜなら、誰も王子の顔を知らないからだ。

この国の王家の子は、十五歳になるまで決して仮面を外さない。

つまり、目の前にいる少年が本物か偽物か、誰にも判断がつかない。

レイの理路整然としたハッタリに、山賊たちが一瞬気圧される。

「ま、まさか本物か......?」

「王族を殺したら国軍が動くぞ......」

だが、重圧使いの男は忌々しげに目を細めた。

「……いや、おかしいだろ。あの怪力があるなら、そんな縄くらいすぐに引きちぎれるはずだ」

鋭いツッコミに、場の空気が再び凍りつく。

「………」

「えーあーそれは……ほら!」

「王家の誇り的なやつで抵抗しないんですよ!」

「誇り?肉を食いたいと叫んでたやつがか?」

段々と誤魔化しが効かなくなってきた。レイの口元から笑みが消えかける。 

「えーっと………………チッ」

(まぁ、もういい具合だろう)

「――作戦開始だ!」

レイが叫ぶと同時に、服の裾から滑り出させた薬品を地面に叩きつけた。

爆発的な勢いで白煙が広がり、洞窟内を覆い尽くす。

それと同時に、ヒイロが規格外の怪力で縄を爆散させた。ヒイロは鋭く地を蹴り、その凄まじい蹴りの風圧だけで、洞窟内に灯されていた火を全て一瞬で吹き消した。

完全なる暗闇。

山賊たちが視界を奪われて混乱する中、商人は事前に『捜索』の魔法で位置を特定していた、洞窟にある「鏡」の場所へと迷わず移動する。

レイのこれまでの演技とハッタリはすべて時間稼ぎであった。

ヒイロと商人、両方に自然に目を瞑らせて暗闇の中でも動けるようにするための。

もちろん、山賊たちもすぐに暗い視界に慣れ始める。だが、暗闇の乱戦では『重圧』のような味方を巻き込みかねない固有魔法は発動しづらい。

火を灯そうとした山賊もいたが、レイが事前に仕掛けた煙幕がそれを阻害する。

「野郎ども、力押しでいくぞ!」

シンプルなフィジカルの殴り合い。

そうなれば、当然ヒイロの独壇場だった。

暗闇を切り裂くような打撃音が響き渡り、山賊たちが次々と沈んでいく。

レイもまた、商人をサポートしながら戦線の一翼を担った。

洞窟の最奥。

「そこまでだ、ネズミども」

重苦しい足音とともに、奥から一人の男が現れた。山賊のボスだ。

ボスはヒイロの前に立ち塞がり、太い腕を前に突き出した。

「お前が……あの重圧の中で動いたとかいうガキか。果たして、この攻撃にも立ち上がれるかな? ――『有獄鎖オーダー』!!」

ジャラリ、と不気味な金属音が響く。

現れたのは、まるで生き物のように不気味に脈打つ、漆黒の鎖だった。

「うおっ、なんか生き物みたいで気持ち悪ぃ鎖!」

ヒイロは顔をしかめながらも、一切躊躇することなく地面を蹴った。凄まじい踏み込みに、頑丈な石造りの床が蜘蛛の巣状にひび割れる。一瞬でボスの懐へと肉薄し、その大振りの右拳を容赦なく叩き込んだ。

「これでもくらえぇぇ!!」

大砲のごとき一撃。しかし、ボスの前に突き出された黒い鎖が、まるで意思を持つ蛇のようにうねり、ヒイロの拳を正面から絡め取った。

バキィィィン!!!

激しい衝撃音が響き渡る。だが、砕け散ったのは鎖ではなく、ヒイロの突進の勢いだった。

「……え?」

ヒイロの動きがピタリと止まる。

拳は鎖にガッチリと掴まれたままだ。それだけではない。鎖と接触した右拳から、じわじわと奇妙な感覚が広がってくる。まるで、自分の腕が自分のものではなくなっていくような、恐ろしい感覚。

「がははは! 無駄だ! 」

ヒイロは左拳で鎖を引きちぎろうとしたが、右腕に激痛が走る。動きを封じられた。引っ張れば引っ張るほど、黒い鎖は生き物のように皮膚へ食い込み、ヒイロの体から「力」そのものを吸い上げていく。

「う、動かねぇ……!? なんだこれ、体がめちゃくちゃ重い……!」

「その鎖に捕まった肉体は、もうお前のものじゃねぇ」

全身の筋肉から命令が拒否されているかのように、指一本動かすのにも凄まじい労力がかかる。

「終わりだ、小僧」

ボスは容赦なく、身動きの取れないヒイロの腹部に向けて、丸太のような太い脚で強烈な前蹴りを叩き込んだ。

ドゴォッ!!!

「がはっ……!?」

防御の踏ん張りすら効かないヒイロの体は、そのまま後方の壁へと激しく吹き飛ばされ、硬い壁に突っ込んだ。

(力が入らない……!)

激しい衝撃とともに血が流れ出した。視界が赤く染まる。

「…………っ!」

だが、ギラギラとした燃えるような陽色の瞳は敵を睨みつけるのをやめない。



一方、レイと商人の前にも敵が立ち塞がっていた。武器を持った山賊数人。その中には一文字の傷の男—重圧使いもいた。

「『風操ふうそう』」

長髪の男が腕を上げて固有魔法を発動する。

フワリ。

冷たい風がレイの体を撫でる。

「なるほど、南西の方角に奴らはいる!岩陰に隠れているぞ!」

(……!!バレた!)

ブォン。

さらに、突風が洞窟内から外へと吹いた。

煙幕は完全に吹き飛ばされる。

洞窟内には再び火が灯されてしまった。

ズドンッ。

体が一気に重たくなる。

重圧使いの男がレイに唾を吐きかける。

「メガネ、お前はじわじわといたぶって殺してやるよ。」

狙いを定められ、剣を向けられる商人。

「その点お前は大丈夫だ楽に死ねる」

痛みの中、レイはあることを思い出していた。

――つい先ほど、硬貨と一緒に売れると思って煙幕の薬品を商人のカバンからくすねていたことを。

まだ、煙幕は作れる。一瞬の隙なら、確実に突ける。

こいつらが商人の命を奪うことに気を取られている一瞬に煙幕を張れば、自分だけなら逃げ切れる。

この商人を見捨てさえすれば。

「逃げろ」

頭の中で何度も繰り返す。

金さえあればいいのだ。

命さえあればいい。

自由さえあれば。

他人なんてどうでもいい。

ずっとそうやって生きてきた。

そうしなければ、生きられなかった。

なのに――

「た、助けて……」

震える声が耳に残る。

鬱陶しい。

知らない。

関係ない。

なのに足が動かない。

(見捨てろ。生き残るのが最優先だ)

心の中で自分に言い聞かせるように、レイは強く目を閉じた。

山賊が商人に向け、無慈悲に剣を振り下ろす風切り音が聞こえる。

――直後、レイの身体に鋭い衝撃と痛みが走った。

「がはっ……!」

目を開けると、自分の足元に商人が転がっていた。

気がつけば、身体が勝手に動いていた。商人を庇うようにして押し退け、代わりに自分が刃の軌道上に飛び込んでいたのだ。

(クソ、何やってんだオレは……!)

自身の愚かさに毒づきながらも、レイはくすねていた薬品を渾身の力で地面に叩きつけた。

「ここはオレに任せて、お前は逃げろ!」

再び立ち込める白い煙。その中に商人の背中が消えていくのを見届けた。

煙が薄れる中、斬撃によって動けないレイは取り押さえられる。

「トドメだ」

重圧使いの男が冷たく笑い、剣を振り上げる。




その光景が、遠く壁際に倒れていたヒイロの網膜に映る。

もはや思考は止まっていた。

ただその景色が目に入るとほぼ同時に体が動き出す。

 


ブチッ。


何かが千切れる、湿った音。

誰も動かなかった。

いや、動けなかった。

何が起きたのか理解できなかったからだ。 


ポタリ。


赤い雫が石の床に落ちる。

その視線の先。

そこには――



右腕のなくなった少年が立っていた。

「……な」

ボスの喉から、声が漏れる。

理解した。

あの音は。

自分の腕を。

自分で引きちぎった音だった。

鎖に繋がれた右腕を。

ヒイロは残った全身のバネを使い、思い切りボスの顔面に頭突きを叩き込む。

頭蓋のぶつかり合う凄まじい音が響き、ボスの体勢が大きく崩れた。その瞬間、ヒイロはボスの腰に刺さっていた短剣を左手で素早く抜き取ると、ボスの鎖を操る腕の腱を迷いなく一閃した。

「が、あああああッ!?」

動きの止まったボスの背後に回り込み、短剣をその首筋に突き立てる。

「おい!」

ヒイロは、血に染まった陽色の瞳で山賊たちを睨みつけた。

「この男を殺されたくなかったら、今すぐ止まれ!」

血をボタボタと流しながら吼える少年の姿は、およそ正気のそれではない。凄まじい気迫に、山賊たちの動きが一瞬で凍りついた。

レイは、目の前の光景に困惑が止まらなかった。

意味が分からない。

自己犠牲という綺麗な言葉の範疇を完全に超えている。

怖い。

コイツは何者なんだ。

山賊たちがヒイロの狂気に気圧され、大人しくなったその一瞬。

ザシュッ。

短い音とともに、小さなナイフが重圧使いの男の首筋に突き刺さる。

「が……は……?」

男は白目を剥き、その場にカクリと崩れ落ちた。

煙の奥から姿を現したのは、逃げたはずの商人だった。

その目には怯えよりも決意が宿っている。

「さっきの間に毒を仕込みました。本当は使いたくなかったんですけどね。高いから」

『重圧』の拘束が解けた瞬間、レイの身体が跳ねた。全身の激痛を意志の力でねじ伏せ、何が起きたのか理解できていない『風操』の男の顎へと全力の蹴り上げを叩き込む。

脳を揺らされた男が倒れ込むと同時に、その武器を奪い取り、鋭い切っ先を周りの山賊たちに向ける。

ボスが、苦渋に満ちた声を絞り出す。

「……降参だ」

しばらくの後、洞窟内には縄でぐるぐる巻きにされ、一箇所に集められた山賊たちの姿があった。

戦いは終わった。ヒイロは手近な布で右腕の応急処置を終えていたが、その顔色は紙のように白く、身体は小刻みに震えている。

「に……にく……」

ヒイロの口から、掠れた声が漏れる。

「というか、何でもいい……何か食べるもの……。さ………ち……」

レイは山賊の荷物から見つけた干し肉や食糧をヒイロの前に差し出した。

「………なぜ、こんなことをしたんだ?」

ひたすらに貪り食うヒイロを、レイは見つめ返すことしかできない。

「…………助けたかったから?」

「…………」

心の奥底を支配する恐怖。

何を考えている。 

何をしている。

意味がわからない。

助けるため?

度が過ぎている。

ある限りの食糧を食べ尽くし、バタリと眠りにつくヒイロ。

(なんなんだ、コイツ)

金のためじゃない。

自分の命のためでもない。

見ず知らずの他人のために、自分の腕を引きちぎった。

そんな人間、レイは知らない。

(……気味が悪い)

そう思った。

なのに。


どうしてか、目を離せなかった。

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