第二話 ぐるぐるメガネは伊達メガネ
この作品はAIを使用しています。ストーリーの構成と下書きは自分でやっていますが、読みやすい文章にしてもらうためにAIを使用しております。ほとんどの文章力はAIのものです。ご了承ください。
「肉だァァァァァ!!」
ヒイロは一直線に森を駆け抜けた。
段々と濃くなる肉の匂い。
木々の隙間を抜けると、開けた場所に出る。
そこには焚き火。
その上では、こんがりと焼かれた肉が串に刺さっていた。
「やったあああああ!!」
ヒイロは歓喜の声を上げながら飛び出す。
「待てって言ってんだろ!」
背後で息を切らしながらレイが叫んだ。
だが遅い。
焚き火の周囲に座っていた男たちが、一斉に振り向いた。
全員、剣や斧を携えている。
無精髭に獣の毛皮。足元には酒瓶が転がっている。
そして、奥の木に縛られている商人らしい人物。
どう見ても山賊だった。
違うと言われても誰も信じないレベルで山賊だった。
沈黙。
男たちはヒイロを見る。
「……」
「……」
ヒイロの目は肉しか見ていなかった。
「その肉、一口だけ――」
「待て待て待て」
慌ててレイが静止する。
「なんだぁ?お前ら」
山賊の一人が立ち上がる。
ひときわ大柄な男だった。
顔には大きな一文字傷。手には巨大な斧。
周囲の山賊たちもニヤニヤと武器を構え、二人を包囲するように動き出した。
「ガキが二人。……いや、一人はずいぶん上等な服を着てやがるな。もう一人はただの浮浪者か?」
縄に縛られていた商人の男がこちらを見るなり叫んだ。
「ひぃっ、助けてくれぇ!」
レイはぐるぐる眼鏡の奥で、冷徹に周囲の状況を観察していた。
(人数は六人。全員、武器の構えを見る限り、それなりに場数を踏んでいる。……ちっ、この馬鹿のせいで最悪の鉢合わせだぞ)
大柄な一文字傷の男が両腕を前に突き出す。
「『重圧』」
ズドォン!!!
目に見えない何かが、頭上から叩きつけられた。
草の生えた地面が蜘蛛の巣状に砕け散る。レイとヒイロの身体は、抗う間もなく地面へと叩きつけられた。
盗賊の仲間たちは、重圧に巻き込まれないように少し遠ざかる。
「ぐっ……!」
肺が潰されそうだ。呼吸をすることすら激痛が走る。
周囲の木々が折れる音がする。
(固有魔法…!!)
男がニヤニヤと下卑た笑みを浮かべ、ジリジリと近づいてくる。
「お頭に持って帰ろう」
前髪を掴まれ、無理やり顔を上げさせられる。
「この女は高く売れそうだ」
顔を見ようと男はレイのメガネに手をかける。
ペッ。
レイはなけなしの力を使って男の顔に唾を吐きかける。
「お前、息クセェんだよ。オレの顔の近くで喋んな」
強気に笑いながら男を睨むレイ。
「……!このガキ!!」
男は容赦なくレイの腹を蹴り飛ばし、頭を踏みつける。
(なんとか、なんとかここを切り抜けねぇと……!)
絶体絶命の状況下、レイは必死に周囲へ視線を走らせた。何か利用できるものはないか。
しかし、その視線の先で、信じられない光景を目にする。
「……はぁ?」
ヒイロが、肉へ向かって、必死に手を伸ばしていた。
身体は地面に圧着され、陽色の髪は泥に汚れ、鼻血まで流している。普通なら意識を失っていてもおかしくない重圧。それなのに、彼は動いていた。
「……あと、少し……!」
震える指先が、しっかりと肉を突き刺していた棒を掴む。
(何してんだコイツ!?)
術者の男も、引きつった声を上げた。
「あいつ痛覚とかねぇのか!?」
「まさか食い意地だけで動いてる!?」
周囲の驚愕をよそに、ヒイロは至福の表情で肉を口に放り込んだ。
もぐもぐ。
もぐもぐ。
ゴクリ。
「ぷはー! 助かったぁ!!」
「……」
「ありがとう! あとちょっとで飢え死にするかと思った!!」
ヒイロは山賊の方を向き、満面の、ひまわりのような笑顔を浮かべた。
(頭がイカれてんのか!?)
レイは困惑を隠せない。
だが、ヒイロは泥にまみれた顔のまま、ペロッと唇を舐めた。
「……ごちそうさま!ちょっと焼きすぎだけど、ジューシーで美味かったよ。で、さ」
「あ?」
山賊の男が怪訝そうに眉をひそめる。
「お前、状況わかって――」
地面に伏せたまま、ヒイロはギロリと男を睨み据えた。
その瞬間、ピリ、と周囲の空気が凍りつくような錯覚をレイは感じた。
「お前さぁ、その足退けろよ」
低い、けれど不思議とよく通る声だった。
「ひっ……!?」
レイの頭を踏みつけていた重圧使いは思わず後ろずさる。
ただ睨まれただけだ。それなのに、まるで巨大な捕食者の前に引きずり出されたかのような、圧倒的な生命の危機を感じていた。
ヒイロの身体が、地面に縫い付けられているはずのその身体が、ゆっくりと、しかし尋常ではない力強さで起き上がり始めたのだ。
「な、なんなんだお前はぁ!!」
「おい、何をビビってやがる! 『重圧』を緩めるな!」
仲間の怒鳴り声に、術者の男は我に返り、必死に魔力を込める。
「く、クソがぁッ! 潰れろぉぉ!!」
「………」
ヒイロは、片手をついて身体を起こした。ミシッと骨が確かに軋む音がする。だがそんな事を気にする素振りもない。
「よし、動けるな」
ヒイロは泥を払いながら山賊たちへ歩み寄る。
一歩。また一歩。
ズシリという音と共に、ゆっくりと足を動かす。
確実に重みは感じているのだ。痛みも。
「化け物め! 死ねぇッ!!」
男が、恐怖をかき消すように巨大な斧を振り下ろす。
一撃で大木をも両断する一閃。
――パシィンッ。
乾いた音が響いた。
ヒイロは避けることもせず、ただの素手で、振り下ろされた斧の刃を真横から叩いて軌道を逸らしたのだ。
凄まじい衝撃波が走り、斧は男の手から滑り落ちて地面に深く突き刺さる。
「あ、ありえねぇ……!」
「次、俺の番な」
ヒイロは拳を突き出した。
ドォン!!!
大砲でも撃ち込まれたかのような衝撃音が響き、男の巨体が綺麗な放物線を描いて遥か後方の木々へと消えていった。数秒遅れて、ミシミシと木がへし折れる音が響き渡る。
「……さて」
ヒイロが拳を解き、残りの山賊たちを振り返る。
その陽色の瞳はギラギラと燃え盛っている。
「ひ、ひぃぃぃぃっ! 出た、怪物だ!!」
「アイツが一撃で……! 逃げろ、逃げろぉ!!」
戦意を完全に喪失した山賊たちは、焚き火の肉も、縛られていた商人もすべて放り出した。しかし、ただ一つだけ、商人の荷物のうちの一つであろう鞄だけをかかえて、脱兎のごとく森の奥へとクモの子を散らすように逃げ去っていった。
静寂が戻る。
パチパチと、焚き火の爆ぜる音だけが響いていた。
「ふぅ……。やっぱり、肉は力が出るなぁ!」
さっきまでの威圧感はどこへやら、ヒイロはへにゃりと締まりのない笑顔に戻り、自分の腹をさすった。
そして、未だに地面にへたり込んだまま硬直しているレイへと近づき、ぽんと手を差し伸べる。
「大丈夫か? えっと……メガネ」
「……レイだ」
レイは差し出された手を睨みつけ、その手を借りることなく立ち上がった。泥を払いながら、ぐるぐる眼鏡の位置を直す。
「お前……何者だ? あの重圧の中で動けるやつなんて、まともな人間じゃねぇ。お前の固有魔法なのか?」
「……さぁ?」
ヒイロは首を傾げる。
「あー! それより肉! まだ残ってるじゃん!」
ヒイロはレイの追及を綺麗にスルーし、焚き火に残された肉の串へ飛びついた。
「美味い! 」
「味が濃い! 」
「最高!」
と、今度は涙を流しながら貪り食っている。
「なーなー、レイ! この肉、半分あげるよ。さっきのチョコのお礼!」
ヒイロが満面の笑みで、脂の滴る肉串を突き出してくる。
レイはしばらくその肉とヒイロの顔を交互に見比べたあと、深く、深いため息をついた。
「……もらう。オレも腹減ってんだよ」
「すみませーん!僕のこと助けてもらってもいいですか?」
奥で木に縛りつけられたままだった商人が叫ぶ。
「あ」
存在すら忘れていた。
◇
「助けてもらってありがとうございます。これはお礼です!」
そう言って商人は自分の荷物からありったけの金と食糧を出す。
「お前いいやつだな!」
感激したようにヒイロは商人の手を掴む。
その勢いの良さに少し引いた様子の商人。
「地図はあるか?」
レイは金を素早くポケットに突っ込み聞く。
「多分あると思いますけど……」
そう言って荷物を逆さにして探し出す。
(結構ガサツだな……)
本や、薬、時計に硬貨。様々なものが出てくる。
しかもほとんどヒビ割れてたり破れていたりしている。
(商人がこんな雑に物扱っていいのか!?)
ガサガサ。
今度は特殊な形状のナイフが出てくる。
「あ。ここにあったのか」
ドサリ。
ドクロマークの入った瓶。
「お、掘り出し物発見ですね!」
(何があってもコイツから物は買わねぇ……)
バサリ。
落ちる紙のような何か。
『王子失踪から三年――やはり陰謀か!? 専門家が語る』
見たことのある見出し。
「あ。この新聞、今朝食べたやつだ!」
「新聞食べたのかよ」
「まずかったぞ」
「だろうな」
ヒイロは二度と食べたくないという風に渋い顔をする。
「でも、もう諦めたらいいのに。三年も見つからないならさ」
ヒイロは不思議そうに言う。
「……そうだな。オレもそう思うよ。」
レイはしばらく新聞を見つめたあと、また元の場所に戻し、落ちた硬貨や金目のものをこっそりポケットにしまう。
「すみません。地図…なかったです」
「…なんで商人が持ってないんだよ」
「地図いらないんすよね」
商人は懐から水晶のようなものを取り出す。
ブォン
水晶に矢印が浮かぶ。
「僕の固有魔法、『探索』なんですよ」
「代わりに次の街までなら案内できますよ」
レイは水晶を見つめながら答える。
「じゃあ案内してくれ」
「了解です!」
矢印に沿って歩き出す一行。
「お二人はどうしてあんな森の中に?」
「あぁ…」
なんて説明するべきか言葉に詰まる。
「お腹空いてパン追いかけててさ」
「ぶつかって」
「鏡がバリーンって割れて」
「気づいたらここ」
ヒイロは生き生きと話す。
(そんな説明で誰がわかるんだ)
と内心レイはツッコミを入れる。
「鏡?」
商人は聞き返す。
「鏡ってもしかして…あ!」
血相を変えてガサゴソと自分の荷物を確認し出す商人。
「うわぁ!やっちゃったー!」
「どうしたんだ?」
頭を抱えてその場に座り込む。
「お客様に売る鏡が山賊に取られたままなんです!僕がわざわざこんな森を通ってまで届けようとしたのに!」
商人はしばらく頭を悩ませた後覚悟を決めたように立ち上がる。
「よぉーし贋作売るか!」
「プライドとかないのか?」
今朝新聞を食べてた男が聞く。
「だって高値で売れるんですもん」
「いやぁ、あれさえあれば半年は遊んで暮らせたのになぁ……」
悔しそうに空を仰ぐ商人。
「………」
レイは三つ編みをいじる。
ぐるぐる眼鏡の奥で、何かを企むように目を細めた。
同じ頃。
月明かりも届かない洞窟の奥。
奪われた財宝と禁じられた魔道具が眠る、山賊たちのアジト。
「……持って帰ってきたのはこれだけか?」
洞窟の奥から、低い声が響く。
その一言だけで、屈強な男たちの肩が跳ねた。
包帯を巻いた一文字傷の男とその仲間たちは、冷や汗を流しながら頭を下げる。
「す、すまねぇ」
「チッ。まぁいい。この鏡一つで半年は遊んで暮らせる金になる。」
そう言ってボスらしき人物は奥へ消えていく。
ガンッ。
傷の男は苛立ったように壁を殴る。
「あの陽色のガキとメガネの女!よくもこの俺をコケにしやがって!」
でかい声で怒鳴り散らす大男。
「おい!おそらくまだこの辺に奴らはいるはずだ!体制を整えて報復に行くぞ!攻撃系の固有魔法のやつは俺についてこい!」
そう言って武器を物色し始める。
「む?むむ?」
洞窟の入り口に立っていた仲間が何かを見つける。
「どうかしたか?」
目をよく凝らす。
「いや………」
ズルッズルッと何かを引きずって歩く人影。
「向こうから来た」
「は?」
月明かりに照らされる桃色の髪が見えた。
片手には陽色の髪をした男。
もう片方の手には先ほどの商人。
どちらもぐるぐる巻きにされている。
少女は突き抜けて明るい声を出す。
「あのぉこれあげるんで仲間に入れてください!」
「は?」
唖然とする山賊たち。
レイは少し考えるように顎に手を当てた。
そして、上目遣いをするように山賊たちを見つめる。
「………給料、でますよね?」




