第六話 太陽、燦々
この作品はAIを使用しています。ストーリーの構成と下書きは自分でやっていますが、読みやすい文章にしてもらうためにAIを使用しております。ほとんどの文章力はAIのものです。ご了承ください。
「ん……うおっ」
目を覚ましたレイは、視界に飛び込んできた光景に思わず声を漏らした。
見覚えのない木目の天井。
ぼんやりした意識のまま、「知らない天井だ……」と定番のセリフを呟いた、その瞬間。
胸のあたりに妙な重みを感じ、思考が止まる。
「……?」
怪訝そうに視線を落とすと、そこにはすやすやと眠るヒイロの頭があった。
「……っ、起きろ! 重いっ!!」
レイが怒鳴りながら身をよじる。
「……ふぁ。んんー……メロンパン……」
ヒイロは寝ぼけたまま、的外れな寝言を漏らし、もぐもぐと口を動かした。
しかも、だらりと垂れたよだれがレイの服へじわりと染み込んでいく。
「うげぇ……汚ねぇな!」
慌ててヒイロを押しのけ、レイは周囲を見回した。
どうやら自分はベッドに寝かされていたらしい。
見慣れない部屋だが、どこかの民家のようだ。誰かが助けてくれたのだろう。体には丁寧に包帯が巻かれ、あれほど激しかった傷の痛みもかなり和らいでいる。
「おお、起きたか」
がちゃり、と扉が開き、一人の老人が粥を載せた盆を手に部屋へ入ってきた。
窓からは心地よい朝日が差し込み、天井から吊るされた干し薬草が静かに揺れている。
「ここは……?」
「ワシの家じゃ」
老人が短く答えた、その直後。
「ハッ、ご飯の匂い!」
弾かれたようにヒイロがガバッと跳ね起きた。
「貴様の飯じゃないぞい。さっき死ぬほど食べたじゃろ」
「へへっ、つい」
老人の冷ややかな視線を受けても、ヒイロは頭をコツンと叩いて誤魔化すだけだ。
「なぁにヘラヘラしとるか! 食った分はしっかり働けぇい!」
「痛っ!」
容赦ない拳骨がヒイロの頭にクリーンヒットする。
その光景を、レイはベッドの上で呆然と見つめるしかなかった。
「あの……えっと……」
「ああ、お主を助けたのはワシじゃ。ほれ、食えるか?」
老人はそう言って、湯気の立つ粥をレイに差し出した。
「貴様、よほど疲れておったんじゃろう。丸一日眠りこけておったぞ。
……それに引き換え、あそこの陽色の坊やは晩飯時に目を覚ましてな。ワシらの飯をほとんど一人で平らげおった」
「やれやれ」と肩をすくめる老人の顔には、「親切なんてするもんじゃない」という本音がありありと滲んでいた。
レイは隣を見る。
そこではヒイロが雑巾を持たされ、床を必死に磨いていた。
「……すみません。あの、地図はありますか?」
気を取り直して尋ねると、老人は快く古びた地図を取り出し、ベッドの上へ広げてくれた。
「ここはドラグ村じゃ。ついでに言うと、ワシがこの村の村長をやっとる」
「ドラグ村……?」
聞き覚えのない名前だった。
首をかしげるレイの前で、老人は地図の隅を太い指で示す。
「ここじゃ」
そこは地図の端、ほとんど余白と変わらないような場所だった。
「王都から馬を飛ばして、二、三か月といったところかの」
「遠っ!?」
「何せ辺境じゃからなぁ」
そんな場所にも村があるのか。
レイは思わず絶句する。
「辺境すぎて、王都の情報なんぞほとんど入ってこん。それにこの辺りは治安も悪い。夜は絶対に外を歩くんじゃないぞ」
その時だった。
ドシャドシャと派手な水音を立てながら、ヒイロがバケツを抱えて戻ってくる。
「よぉーし! ピッカピカにするぞぉ!」
「うおおおおお!」
無駄に気合いだけは十分な雄叫びを上げると、ヒイロは勢いよく雑巾で窓を拭いた。
――パリーン!!
乾いた破砕音が部屋に響く。
窓ガラスが見事に粉々に砕け散った。
「…………」
室内が静まり返る。
老人の肩が、わなわなと震え始めた。
「窓を拭いて、窓そのものを無くす馬鹿がどこにおるかぁぁぁ!!」
(あいつに任せてたら、一生掃除が終わらないどころか、家そのものが解体される……!)
強烈な危機感を覚えたレイは、慌ててベッドから身を起こした。
「あ、あの! オレも何か手伝います!」
◇
「畑!仕事!!頑張るぞ!!!」
意味のわからない気合いの入り方をしているヒイロ。
(なんでこんなテンション高いんだよコイツ)
げんなりとした感じでヒイロを見つめるレイ。
「まず耕したらいいんだよな?」
「ああ多分」
「よっしゃ任せろ!!」
全力で片手で鍬を振り上げるヒイロ。
(猛烈に嫌な予感がする!)
「ま、待て!」
ドゴォン!!
「………」
3メートルくらいの大きさの穴の空いた空間を見つめるレイとヒイロ。
「これでいいのか?」
「……」
「……シオンより先に村長に殺されるかもしれない」「え?」
「なんでもない」
遠くの方から老人の怒号が聞こえる。
◇
畑仕事の他にも、井戸の水汲み、料理の手伝い、薬草の採取を手伝った2人。
が、井戸の水を村長ぶちまけたり、火加減を間違えて家を燃やしかけたり、薬草と間違えて謎の虫を捕まえてきたりと、結果は散々だった。
「うーん……。お前たち、根本的に仕事ができないな」
頭を抱え、深いため息をつく老人の言葉に、二人は同時に声を上げた。
「ひどいっ!」
「オレも!?」
「まぁ、もういいわ。今日のところはしっかり休め。その代わり、明日から丸一週間はきっちり働いてもらうからな!」
言い捨てると、ガチャンッ!と荒々しくドアが閉められた。
嵐が去ったような静寂の中、レイが弾かれたように立ち上がる。
「……よし、逃げるぞ」
「え?」
呆然とするヒイロを置いて、レイは目にも留まらぬ速さで荷物をまとめ始めた。
「助けてもらった礼はしたいが、モタモタしてたらシオンが追いついてきちまう」
「待って、シオンって誰だよ」
「あ、説明してなかったな」
手を動かしながら、レイはこれまでの経緯を早口で説明した。
ひと通り聞き終えたヒイロは、ぽかんと口を開ける。
「……ん?俺って、神様だったのか……?」
「知るかよ。んなわけねぇだろ」
「そうだよな!俺は俺だもんな!」
「……?」
「にしても、変な名前だなー。きょうきょう……?」
「とにかく、オレたちはシオンの追跡をかわしながら移動しなきゃならないんだ。こんな村に一週間も居座ってたら、確実に足がつく」
慌てるレイに対し、ヒイロは顎に手を当てて「んー」と唸った。
「来たら来たで、迎え撃てばいいんじゃないか? この村でさ」
「はあ!?」
「というかさ、話を聞く限り、そのシオンって奴がいたのは廃墟なんだろ? 少なくとも、ここからはかなり離れてるんじゃないか?」
こんな辺境の地。周りはほとんど草原だ。
「……確かに」
(こいつ、……意外と冴えてるな……)
ヒイロは人懐っこい笑みを浮かべ、レイの肩を叩いた。
「だから今はとにかく、恩を返すことを考えよ!せっかく助けてもらったんだ、人の善意にはちゃんと応えたいだろ?」
「……まあ、そうだな」
レイは小さくため息をつき、まとめたばかりの荷物をベッドへと放り投げた。
そして気がつく。
ベッドが一つしか無いことに。
(え、コイツとオレ同部屋なの??)
(1週間???)
◇
「グォオオオオッグォオオオオッ」
「………っうるっせぇえええ!!!」
ゴンっとヒイロを蹴り付けるレイ。
「フゴッ……グォォー」
「……全然効いてねぇ!」
なんとかヒイロを押しのけ、起き上がる。
朝日が眩しい。
ひょこっと老人が窓から現れる。
「プラトニックラブ?」
「黙れジジイ」
しまったおもわず声に出た。
「ホッホッホッ。すまんのベット、一つしかなくて。まあ、今日も頑張りたまえ」
(趣味悪すぎんだろこの老人)
「今日はこのお触れを村中に回してこい。ついでに村の老人たち生きとるか確認してこい」
「………はぁ」
「あ、最後の家の変人は放っておいてもいいぞ」
「……?はぁ…」
やる気のない感じで返事をし続けるレイ。
「ほいじゃあ頑張って」
手を振ってどこかへいく老人。
「…おい、起きろヒイロ!昼になっちまうぞ!!」
バシッバシッと頭を叩く。
「ん…おぉうぉん」
「肉あるぞ!」
ガバッ。
「え!?」
「うそだ」
しゅん…としたように眉毛を下げる。
レイはその様子に思わず少し笑ってしまう。
「…おはよ、ヒイロ」
「ああ!!おはよう!!!」
――ガラッ。
「テンションがもう朝チュンのそれじゃな」
窓から老人が顔を出していた。
「…………」
レイは無言でカーテンを閉めた。
◇
「まずは……ここか」
老人に渡された村の地図を頼りに、2人は家を尋ねる。
「ノックしたらいいのか?」
「多分?ノックってどうするんだ?」
こうか?といいながらなぜか腕をブンブン振るヒイロ。
「お前絶対ドアぶち破るだろ」
ヒイロを後ろに退かせてレイが前に出る。
「すみませーん」
コンコンコンコンッ
「あらぁ可愛らしいお嬢さんね」
優しそうなおばあさんが出て来る。
「ハハハ。これ回しに来ましたー」
「まぁ、ありがとうねぇ。良かったらお茶でもどう?」
「ええ!いいんですか!やったー!!」
後ろからヒイロの声が響く。
「いただきまーす!」
目の前に並ぶ大量のクッキーと紅茶。
「遠慮なく食べてねぇ」
「ちょっとは遠慮しろよ」
もぐもぐ…。
「あなたのその髪、綺麗ね」
おばあさんはヒイロの頭を見つめながら言う。
「えへへ。ありがとうございます!」
「……太陽みたいな髪」
おばあさんの笑顔が、一瞬だけ止まった。
「あのお伽話に出てくる勇者様みたい」
「お伽話?」
「ええ。私のおばあ様がよく聞かせてくれたお話」
「へぇ!どんな話なんだ?」
おばあさんは少し黙り込んだ。
「……秘密よ」
「ええ!?」
「だって私の初恋なんだもの」
そう言って、おばあさんはまた笑った。
◇
「ええっと次は…ここか!」
コンコンコンコンッ
バァンッ
勢いよく飛び出してきたのは小さな子供たち。
「よお!!」
「こんにちわわ」
「めがね!」
(ゲッ子供かよ…オレ子供嫌いなんだよなぁ…)
ぐるぐるメガネの奥で嫌そうな顔をするレイとは対照的に、ヒイロは目を輝かせる。
数分後
「ヒイロお兄ちゃん!こっちこっち!」
「おれ木登りできるぞ!」
「俺も!」
「じゃあ競争だ!!」
「うおおおおお!!」
ドサドサドサッ。
「待て待て待て待て!!」
気づけばヒイロは子供たちを肩車しながら村中を走り回っていた。
レイは遠巻きにそれを眺める。
(なんであいつ、初対面のガキと五分で仲良くなってんだ……)
(やっぱ感性が似てんのか…?)
「ヒイロお兄ちゃん!」
「ん?」
「お兄ちゃんってさぁ」
子供が不思議そうに首を傾げる。
「なんか、太陽みたいだよね」
「太陽?」
「うん!」
「なんか見てると安心する!」
他の子供たちも頷く。
「わかる!」
「ぽかぽかする!」
「お兄ちゃん好き!」
ヒイロは照れくさそうに笑った。
「えへへ。ありがとな!」
ヒイロは少し考えてから、満面の笑みを浮かべた。
「俺もみんな好きだぞ!」
「ほんと!?」
「ほんとほんと!」
子供たちが歓声を上げる。
レイは遠くからその光景を眺めていた。
「……太陽」
シオンの言葉が脳裏をよぎる。
「黄金の太陽をその身に宿し――」
(……馬鹿馬鹿しい)
レイは頭を振った。
あんな狂人の妄言を、本気で信じるつもりか。
(こんなの、ただの偶然だ)
レイはそう結論づけた。
子供のうちの1人がこちらへタタタッと走って来る。
もじもじとした様子で耳打ちをして来る。
「なんだ?」
「……お姉ちゃんはなんか、性格悪そうだよね」
(ぶっ飛ばすぞクソガキ)
◇
「だぁー!疲れたあ!!」
川辺におもむろに転がるレイ。
「イテッ」
少し傷に障った。
「そろそろ休憩するか!」
ヒイロは微笑みながら横に座る。
「ああ。頼む」
そよそよと気持ちの良い風が吹く。
「良い村だよな」
川に流れる木の葉を眺める。
「そうだな!みんなお菓子くれるし!」
くるくると川の上を踊る緑色の葉。
ワイワイと騒ぐ子供たちの声。
「いいなぁ…」
レイは慌てて口をつぐんだ。
なんでそんなことを言ったのか、自分でも分からない。
恥ずかしくなって隣を見る。
ヒイロもまた、川を見つめていた。
「俺も」
「……え?」
「なんか、ずっとこんなのがいいなって思った」
夕陽が金色の髪を照らす。
「覚えてないけどさ」
ヒイロは笑った。
「俺、多分こういうの好きなんだ」
◇
気がつけば、もう夕方になっていた。
「ここが最後か…」
ヘトヘトになったレイとまだ元気いっぱいのヒイロ。
コンコンコンコンッ。
……。
返事がない。
もう一度ノックする。
だが、何も反応がない。
「俺に代わって」
「すみませーん!!!」
ゴンッドゴォンッ
「………」
ヒイロは中へズカズカ入る。
「!?」
真っ暗な部屋。
部屋の壁一面に、大小さまざまな鏡が並んでいた。
どの鏡にも白い布が掛けられている。
ただ一枚。
部屋の奥の鏡だけが、蜘蛛の巣のようにひび割れていた。
「……」
歩くたびに床が軋む。
へんな匂いもする。
「ぐっぐぐっ…ぐう……」
床から何かが這いずり出て来る。
男だ。
ボサボサの髪。
中年くらいの年で、白衣のようなものを着ている。
「ぐう……」
「大丈夫か!?」
駆け寄るヒイロ。
「……あ…ぐ……」
「おい!」
レイは息を確認する。
「………コイツ!」
「どうした!?」
「寝てるだけだ。安心しろ」
「寝相悪すぎるだろ!」
だが安心したように左手で胸を撫で下ろすヒイロ。
「おい起きろ!おじさん!」
「ぐぐっ……おじさん!?おじさんとは失礼な!」
そう言って勢いよく起きる中年男。
「吾輩、まだ49であるぞ!」
そう言って胸を叩く。
埃が舞った。
「………」
「いやー!申し訳ない!夜通し実験しててね」
男はいそいそと机の上に乗った器具やらを片付け、お茶を用意する。
「はぁ…」
(この村の人全員お茶出してくれるな……)
もはや食べすぎてお腹いっぱいなお腹を見つめるレイ。
「実験?何してるんだ?」
「お!聞くかい少年。いいだろう話してやろう」
男は鼻息を荒くし始める。
レイは興味がないと言ったように出されたお茶を啜る。
「そう、吾輩の研究は時空の歪みについてだ!」
「時空の歪み?なんだそれ!」
「最近の事件、知ってるかな?」
「全然知らない!新聞見てないからな」
(食ってるからな)
男は何故か声の音量を下げる。
「……実は最近、魔獣の大量発生が多発しているんだ」
「それも、各地で」
「へぇー!」
「………」
「多くの学者は一過性の偶然の産物だと認識しているが、吾輩はその原因を時空の歪みと見た」
「どういうことだ?」
「ふふ…吾輩は見たのだよ」
「何を?」
男は少し黙った。
「……鏡の向こう側から、何かが出てくるところを」
「……!」
レイとヒイロは顔を見合わせる。
「その話、詳しく聞かせてくれ」




