10 食料調達
「ごほっごほっ・・・参ったなこりゃ」
界人は天井の崩落からなんとか難を逃れ息をついていた。
襲撃してきた謎のモンスターはいつの間にか消えており襲ってくる気配がない。幸い他のモンスターもまだ出現していないため、とりあえずは安全だろうと考えた。
「崩落もとりあえず収まったし、出口まで掘るしかないのか?」
出口まで塞がってしまった通路を見てげんなりしつつミスリル鉱石の採掘用に持ってきていたピッケルで出口を塞いでいる岩盤を叩く。
カーンッ!
「マジか。硬すぎてこのピッケルじゃビクともしねぇ・・・」
何回か岩盤を叩いて試してみたが、岩盤には少し傷が入るだけであり全く掘り進められなかった。しかも硬すぎるせいか手が痺れて力が入らなくなってくる。
「この硬い岩盤に傷をつけた攻撃ってどんな強さだよ」
界人は謎のモンスターの攻撃を思い出しつつ戦慄していた。
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「離してっ!離してよっ!」
「ダメだ有本さん!一旦、安全な所まで逃げないと」
小夜は界人がダンジョンの奥に取り残されたまま逃げることは出来ないと戻ろうとしていた。しかし、司やM4達に危険だと止められ取り押さえられていた。
「四津谷君を助けないと!怪我をしているかもしれないじゃない!」
小夜が騒がしくしていたのでメディナが近づいてきた。
「どうしました?」
「それがーーー」
司はメディナに界人が仲間を救助してダンジョンの奥に取り残されてしまったこと、小夜が取り残された界人を救助しようと戻ろうとしていたので自分達が取り押さえていた事を話した。
メディナは事情を理解したうえで小夜に近づいた。
「勇者様。すみませんお許しください」
「うっ!?」
そう言うとメディナは小夜の首の後ろに手刀を落とした。小夜が意識を失い取り押さえから抜けだそうともがいていた体から力が抜けた。
「勇者様は私が運びましょう。皆様は出口に向けて移動してください」
メディナが意識の無い小夜を背中に背負うようにして抱え出口に向かって歩き出した。
「・・・あ、俺達も行くぞ」
「すげぇ、首トンで気絶するのってアニメとか漫画だけだと思っていた・・・」
一人おかしな感想呟いた者もいたが、メディナの行動に唖然としていた司達も移動を開始するのだった。
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崩落して界人が閉じ込められてから恐らく、数日が経過した。
ここには太陽がなく、ずっと薄暗いままなので昼夜の感覚が曖昧になってくるので正確な時間は分からない。だが、腹の減り具合と眠くなったら寝ていたのでかなりの時間が経っているだろうことは分かっていた。
閉じ込められて初日はモンスターが襲ってくるかもしれない事を警戒してずっと起きていたが、いっこうにモンスターが出て来ないので眠気に抗えず眠ってしまった。だが、襲われず無事だったこともありダンジョンの中で睡眠が出来るようになっていた。
「はぁぁ・・・やべーなぁ。食料と水がもう底を尽きそうだ」
塞がれた出口付近の通路で開通と救助を待っている状況だが、その気配は微塵も感じられない。さすがに誰も救助に来てくれないことはないだろうと不安に思いつつも別の意味で救助が出来ないのだろうと考える。
「この岩盤の硬さのせいで開通までに相当時間がかかるんだろうな」
界人は岩盤を掘り進めようと何時間もピッケルで叩いたが、掘れたのは5センチ程度だった。しかも、ピッケルの片側が欠けてしまったので柄の長い金槌になってしまった。これ以上道具を壊すのはマズイと思い掘るのをやめてしまっていた。
「・・・やっぱり、進むしかないか」
散々考えた結果、生き残るにはモンスターの肉や食用出来る物を探し水を確保するしかないと考えた。
直ぐに身支度を整えた界人はまた戻って来れるように塞がれた岩盤を眺め決心した。
「絶対に生き残ってやる」
ギルドで貰った地図を見ながら、しばらくダンジョンを歩いていると10層の中腹辺りまで来た。
キュイキュイ、キュイー。
前方からモンスターの鳴き声と思われる音が聞こえた。
「あれはホーンラビットか」
界人はすぐに近くの岩に身を潜み、冊子でモンスターの情報を確認する。
『ホーンラビット』危険度:G
額に角の生えたウサギ型モンスターの一種。
角を使った突進攻撃をしてくる。ステータスは低いので新米冒険者でも簡単に狩れる。
ただし、群れでいることが多いので群れの規模によっては危険度がFに上がることもある。
弱点は爆音や引っ搔く音など。耳が発達しており音を拾いやすいため、不快に感じる音を聞くとショックで数秒動かなくなる。
食用可。味は鶏肉に似ているが、濃厚で非常に柔らかい。角は薬の材料として使われる。
ギルド買取り金額は(良質な物)角:銅貨7枚。肉:銅貨7枚。皮:銅貨1枚。魔石:5枚。一体:銅貨20枚。
冊子から顔を上げ、ホーンラビットの数を把握する。
「三体か、やってみるか」
界人は岩陰に隠れながら位置を見てカバンから装備の手入れ用ハンマーとミスリル鉱石を一つ取り出した。このミスリル鉱石は界人がダンジョンで採掘したものの一つである。
ミスリル鉱石を手に持ち魔力を込めると少しだけ淡く光り硬くなる。そして、硬くなったミスリル鉱石に思い切りハンマーを振り落とすとキーン!と金床を叩いた時のような耳をつんざく音が響いた。
ホーンラビットはつんざく音でショックを受けたのかそのまま微動だにせず固まった。すぐさま岩陰から飛び出し、ホーンラビットの喉をナイフで掻き切るように仕留めていく。
「ふう、なんとか倒せたし食料も確保できたか」
仕留めたホーンラビット逆さにしてカバンに括り付けた。
「次は、急いで水の確保と血抜きだな」
また地図を取り出し、10層の水源場所に向かうのだった。
数時間後、安全地帯に着いた。安全地帯はダンジョン内で何故かモンスターが寄り付かない場所として冒険者達の休憩場所によく使われる。ただし、どの階層にもあるわけではないらしい。
10層にある湖で水の確保とホーンラビットの血抜きと水洗いをして解体してきた。その際に、水棲のモンスターであるスモールトラウトに襲われたのだが、ただ跳ね回って体当たりしてくるだけだったので簡単に避けてナイフで仕留めた。ちなみにコイツも普通に食べられるようでスモールといいつつ地球の鮭と同じサイズである。
持ってきていたスクロールで火を起こし、ホーンラビットの肉とスモールトラウトを焼いて頂いた。
「うーん、下処理をしっかりしたからか生臭さはそんなにないな。でも味気がないから塩が欲しい・・・。それに肉ばかりだとタンパク質しか取れないから途中でぶっ倒れるかもな」
界人は焼いた肉を頬張りながら、地図を広げた。
「11層からならベリー系の植物が群生してるのか。おっ、ここは岩塩が採れるじゃん。でもなぁ、モンスターがなぁ」
11層に現れるモンスターの情報を見て界人は悩まし気に頭を傾げる。
「ゴブリンとシャドウスネークか・・・」
『ゴブリン』危険度:G
鬼系モンスターの一種。鬼系モンスターの進化系統の最弱個体とされている。
特徴は小柄で緑色の体色。尖った耳。醜悪な顔。黄土色の濁った眼。
装備は粗末な作りの棍棒と腰に巻いた小汚い薄布。棍棒を大雑把に振る攻撃ばかり仕掛けてくる。
人型ではあるが知能が低いため、罠なども有効。繫殖力が強く数は多いため、五~六体程の集団で行動している。素材としての価値は低く、魔石のみ買取対象。ギルド買取金額は魔石:銅貨5枚。
『シャドウスネーク』危険度:F
ヘビ系モンスターの一種。
全身の体色は黒色で日陰などの暗い場所を好む。普段から気配を消しており発見は困難。
索敵能力に優れた斥候や[気配感知]のスキル持ちがいると容易に発見できる。敏捷のステータス以外は軒並み低いため、攻撃が当たれば簡単に倒せる。牙に弱い麻痺性の毒を持っている。
食用可。味は鶏肉に近く弾力があり、クセが少ない。
皮は鞣して使うと服飾の素材になるため、買取需要は高い。
ギルド買取金額は(良質な物)牙:銅貨3枚。肉:銅貨8枚。皮:10枚銅貨。魔石:5枚。一体:銅貨26枚。
ゴブリンはこの階層にもいるので慎重に戦えば勝てるだろう。だが、楽観は出来ない。一対一なら負けない自信はあるが、ゴブリンは集団で行動するので一人だとどうしても手数が足りなくなる。
そして、シャドウスネークは岩陰や茂など暗い場所から気配を消して奇襲を仕掛けてくる。耐久力はないが、敏捷性があり逃げられると厄介だ。噛まれると体が少し痺れる程度の毒を貰ってしまう。そんな状態でゴブリンの集団に見つかってしまったら確実にアウトだ。
「仕方ない。10層でしばらくレベル上げをするか」
それからナイフや道具の手入れをして早めに眠りについた。




