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あまりにも見すぎていたのか、突如やわらかい布のような物で視界がを覆われてしまった。

突然のことで「えっ、何?アイリーン様?」と、大きな声を出してしまった。

「ふふふふ、余所見しちゃダメだよ。彼が素敵だからって恋しちゃダメ。アンちゃんには素敵な婚約者がいるんでしょ」

語りかけるように言うアイリーン様は、彼が私の婚約者であるということを知らないようだ。

視界を塞いでいたのは、アイリーン様の持っていたハンカチのようだ。手で覆われている物を少しだけずらす。触り心地が少しスベスベしているからハンカチだと思われる。

それにしても、気になる。

何故、アイリーン様がそのようなことを言うのだろう。

「あのお客様って…」

「よく来るわよ。色々な女性といるのを見るかな。火遊びにしても数が多すぎるから、あの人と結婚する人は大変だと思うわ」

女の敵よね!と最後に聞こえた気がするが私の幻聴であって欲しい。

やはり、ミーシャやカロリーナが言ってたことは本当のようだ。疑っていたわけではないが、半信半疑だった。

私が見たのは、ジェーン様と一緒に居たところだけ。それも、たった一回だけ。

上擦りながら「そ、そうなんですね」と、だけ返事をする。

その火遊びしているような男が私の婚約者です。なんて、言えない。

それにしても、アイリーン様はユーゴに夜会やお茶会で会ったことがないのだろうか。

「でも、あの人ってどこがで見たことがあるのよね」

「どこで見掛けたのですか?」

「んー、どこだったかしら。思い出せないわ。でも、あのテーブルいいな。あんな男前にエスコートされて、美男子が来るってどういうことなのかしら!!!もしかして、三角関係!?」

キャキャしているアイリーン様の声が耳元で聞こえるから、頭がくらくらしそうだ。

三角関係の中に兄が含まれているのは複雑だが。

アイリーン様がキャキャしていると、何処からひとり来て「アンちゃんは、どちらが好み?」と話し掛けられた。

えっ、急にどうした。戸惑っていると「リリベル、アンちゃんは、もう売却済みよ」と助け出されたのか?

「やっぱら、グレン様の遠縁なだけあって早いな。まあ、私の好みは先にエスコートして入ってきた人かな」

「だよね!!!あんな、カッコいい人にエスコートされたい!!抱き締められたい!!」

「わかる」

興奮しているのか、ハンカチから手が離れヒラヒラと床に落ちる。

後ろを振り向けば、手を合わせて、はしゃいでいる。

それにしても、兄がここでも人気があるとは。

あれが兄ですとは、絶対に伝えたくない。

「2人とも店内に人があまりいないから目立っているよ。ほら、あのカッコいいって言ってる人に睨まれているよ」

注意しに来たテイラー様に言われるが、あれは睨んでいるのではなくて、通常の兄です。

「それにしても、いつも一緒にいら男の人とは違うのね。あの人も美人だけれど。そして、いつもの軍服じゃない」

えっ、テイラー様。もしかして、あなたも兄のことを…と思っていると「そうね。でも、いつもの軍服も素敵だけれど、私服も素敵」と、うっとりしているリリベル様がいた。

苦笑いをしているから、違うのだろう。

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