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永遠の蝕 - 破邪の刻印  作者: Daikon


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11/12

屋敷から駅まで徒歩10分なのに、当然のように高級スポーツカーで送迎された件について

「よーし、今日はめっちゃ楽しみだな!」

武はまるで一度も東京に行ったことがない子供みたいに、声を弾ませてニカッと笑った。


「お前はただの旅行でテンション上がってるだけだろ」

司狼がニヤリと笑い、目を輝かせながら口を挟む。

「俺はプロジェクトが楽しみなんだよ。このレンガの謎をどうしても解き明かしたい」


正直なところ、期待で胸を躍らせていたのは全員同じだった。この世界において、誰もが確実に笑顔になれるものなんて旅行くらいだ。旅行には大きく分けて仕事、家族、友達の3種類があるが、仕事よりあとの2つのほうが好まれるのは言うまでもない。まあ理由はともあれ、これから始まる旅でどんな体験が待っているのか、俺たちもワクワクしていた。


「お坊ちゃま、駅に到着いたしました」

運転手が後ろを振り返り、司狼に告げる。


窓の外に目をやると、重厚な駅の入口が目の前に迫っていた。司狼の屋敷からここまで歩いても10分程度なのに、なんでわざわざこんな高級車に乗ってきたのか謎である。


「早くしろよ、新幹線に乗り遅れるぞ!」

車から飛び出すなり、武が落ち着きのない様子で俺たちを急かしてきた。


「少しは落ち着いたらどうなの? あんた、そのままだと五体満足で東京に着けないわよ」

すぐ後ろから降りてきた結衣が、すかさず武にお説教をかます。


「二人とも落ち着けって。駅で騒ぎ起こすなよ」

俺は二人の間に割って入り、まあまあと宥めた。


「はいはい、分かりましたよーだ」

武は呆れたように目を丸くすると、不満げにブツブツ言いながら歩き出した。


「結衣様……あ、結衣ちゃん! 荷物持とうか?」

後ろから追いかけてきたキヨミが、親切に声をかける。


「気にしないで、自分の分くらい自分で持てるから。キヨミちゃんこそ自分の荷物に気をつけてね」

結衣は優しく微笑んで返した。短い時間だったが、二人が確実に仲良くなっているのが伝わってきて微笑ましい。


駅の中に入り、俺たちは新幹線を待つことにした。見渡してみると、構内は家族連れや友人グループでごった返している。みんな旅行に胸を躍らせている様子で、特に子供たちははしゃぎ倒していた。


だが、父親たちの表情をよく見ると、笑顔の裏にある本音が透けて見えた。せっかくのリフレッシュ旅だというのに、頭の中は予算やスケジュールのことでいっぱいなのだろう。妻や子を楽しませるだけの金はあるか、道中でトラブルは起きないか。彼らは不安をポーカーフェイスの裏に必死で隠しているのだ。


結局のところ、貧乏人は金や予算の心配をし、金持ちは安全や快適さの心配をする。立場が違えど、人間生きていくうえでストレスからは逃れられないらしい。


「シン? また何考え込んでんだよ」

武に突然肩を揺さぶられ、ハッと我に返る。


「あ……いや、なんでもない。大丈夫だ」


「本当か? 水でも飲むか?」


「いや、マジで大丈夫だから気にしないでくれ」


「そっか? ならいいけど」


はぁ、なんで俺は毎回こうなんだろう。いちいち深読みしないように気をつけてはいるのに、勝手に思考が深みにハマってしまう。本当にこの性格は直さないとな。


「お、見てみろよ! 新幹線が来たぞ」

司狼が目を輝かせながら声をあげた。


「よっしゃあああ! 行くぞー!」

武がその場で跳びはねんばかりに喜ぶ。


「やっと来たわね」

結衣がほっと息をついた。さっきまでキヨミと楽しそうに喋っていたようだが、打ち解けてくれたみたいで本当に良かった。


俺たちの周囲には3人のボディガードが控え、危険がないか全方位に鋭い視線を走らせている。


「それじゃ、乗りましょ」

結衣が先陣を切ってドアへと向かった。


だが乗り込もうとした瞬間、男二人組が結衣を押しのけるようにして強引に割り込んできた。

「おいガキ、邪魔だ。俺たちを先に入れろよ」


「な……ちょっと、何すんのよ!?」

結衣は不快感で顔を真っ赤にして叫んだ。


「あはは、悪気はねぇんだよ」

男たちは馬鹿にしたような笑みを浮かべ、結衣の怒りなど意に介さず車内へ消えていく。


「なんなのアイツら……!」

頭に血が上った結衣が追いかけようとしたため、俺は慌ててその腕を掴んで止めた。


「やめとけって。頭冷やせよ、怒ったって何の解決にもならないぞ」


「でも、あんな失礼な---」


「シンの言う通りだ、結衣」

武も間に割って入る。

「昨日の今日だろ? 余計な目立ち方はしないほうがいい。あんな奴ら放置しとけって」


「……ハァ」

結衣は大きなため息をつき、ガックリと肩を落とした。

「分かったわよ……でも、次同じことが起きたら絶対にタダじゃおかないからね」


「ああ、分かってるって」

俺が苦笑いしながら頷くと、緊張が解けた結衣は列車に乗り込み、俺たちもそのあとに続いた。

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