第7話 ちゃっかりたぬき(犬)
「あっ⁉ おまっ、たぬたぬっ! 悪い子っ!」
オレは慌てて箸を置いた。
いくらたぬたぬがあやかしだとしても、たぬきに天ぷらはまずいだろ?
「こらっ! 吐き出せっ! うわっ、飲み込んだっ⁉」
たぬたぬの口をグッと掴んで天ぷらを奪い返そうとしても無駄だった。
目の前でゴクンと天ぷらを飲み込んだあやかしは、もう何もありませんよ? といったとぼけた表情を浮かべてオレを見上げている。
「たぬたぬぅ~」
「はははっ。天ぷら一個くらいで死にゃしないよ、修司」
オレの慌てぶりを見ていたじーちゃんが、隣で腹を抱えて笑っている。
コップで酒を飲んでいたばーちゃんも、あきれた様子で口を開いた。
「そうだよ、修ちゃん。野良で生きてきたなら雑食だよ。いまさら天ぷらくらいで騒がない」
「だって、ばーちゃん……」
「はははっ。そんなに心配なら、動物病院へ早く行け」
じーちゃんは笑いすぎて苦しそうだ。
「あぁ、そうしな。お医者さんに聞くのが一番だ」
ばーちゃんはきっぱりそう言うと、グビッとコップの酒を飲み干した。
「ばーちゃん……」
ちょっと冷たくない?
もっとこう……ペットのやらかしには慌てない?
「修司は、変なところで細かいからな」
「そうそう。修ちゃんは意外と繊細だから」
じーちゃんとばーちゃんは顔を見合わせてうなずきあっている。
なーぜーだぁー⁉
「それでいて、大きなところが抜けてるからな」
「そうそう」
その評価には不満があります、という表情を浮かべてオレは祖父母を睨んだ。
一方、たぬたぬはといえば、ばーちゃんの側へ行って頭を撫でてもらうと、今度はじーちゃんの膝のなかにすっぽりと収まった。
じーちゃんとばーちゃんはデレデレとした表情を浮かべてたぬたぬを見ている。
ダメだ。
コイツは思ったよりも性悪だぞ?
オレはじーちゃんの膝の中にいるたぬたぬへ手を伸ばしてもふりながら思った。




