第2話 あやかしタヌキを回収する
神さまは白い髪と白いひげをなびかせて、どこかへ飛んで行ってしまった。
後に残ったのはオレと、草むらに突っ伏してポキョ~ポキョ~と力なく鳴くたぬきのあやかしだけだ。
オレは立ち上がった。
そしてたぬきのあやかしの横に立つと、やつを見下ろしてまじまじと眺めた。
草むらにペチャンとなっている姿は、毛皮の敷物のようだ。
「犬……犬に見えないことはない」
『いぬではありません……たぬたぬは、いぬではなく、たぬきです……』
草むらに突っ伏してメソメソと泣いているたぬきは、メソメソしながらも訂正した。
「たぬきだってイヌ科だろう? 犬はお仲間じゃないか」
『でもっ、たぬたぬはぁ、【たぬき】なのですっ』
健気に反論するときも、やはりたぬきはメソメソしていた。
小鳥がホキョーと一声鳴いて飛んでいく。
休耕地が広がる田舎の大地に人の気配は他にない。
太陽光がさんさんと降り注ぐ真昼間ではあるものの、ちょっとだけ不気味だ。
オレはたぬきの前足の両脇へ両手を差し込んで、ひょいと持ち上げる。
もっふもふで大きく見えたが、たぬきは意外と軽かった。
あやかしだからか?
びろんと力なく伸びるたぬきの腹側を、オレは上から下までしっかり確認する。
もふもふした耳に、灰色の顔。
鼻先は黒で目と目の間あたりは灰色だ。
あご下から頬を通って目元まで黒い。
目も黒いから、どこに目があるか分かりにくいな。
近くで見ればキラキラと光っているから目の位置は分かるけど。
口元はキュと短く前に突き出ているからか、とがっているようにみえる。
両手で両脇をつかんでいるから、前足がよく見える。
たぬきの前足って、肩の高い辺りまで毛が黒いのな。
後ろ足は黒いハイソックスをはいてるような感じだ。
そして、もふもふだが短めの毛先が黒い尻尾。
犬といえば犬。
たぬきといえばたぬきだ。
オレは、たぬきのつぶらな瞳を覗き込みながら口を開いた。
「お前の家を壊しちまったのはオレだ。それについてはオレが悪い。仕方ないから一緒に暮らすか?」
『え? いいんですか?』
たぬきは右に頭を傾げた。
可愛い。
雄であることは確認済みだが、可愛いものは可愛い。
「ああ。ばーちゃんに頼んでみる」
『やったー。たぬたぬに、お家ができるー』
たぬきは無邪気に喜んでいるようだ。
そんな無邪気なたぬきの家を壊してしまったことに良心がチクチクと痛む、ような気がするが気のせいだろう。
オレはたぬきを赤ちゃんみたいに抱っこして、ばーちゃん家へと戻ることにした。




