女の子
「おい、何してんだ?」僕は少し威圧的に言った。
「………何よ?」そういって『彼女』は思いっきり僕をにらんだ。
「何よじゃないだろ。それ、僕の何だけど」
「これ、あんたの自転車なの?」
そう、窓から見た景色とは、女の子が僕の自転車をしばらく眺めた後、何事もなかったように、さも自分のもののように乗って行こうとしていた、というものだった。
「そうだよ。だから返せよ、ってか降りろよ。」
「はぁ。分かったわよ、降りればいいんでしょ?」
悪びれた様子もなく、というかまるで僕のほうが悪いかのように、自転車から降りてハンドルをこっちに向ける。
「どうもすいませんでした。」完全な棒読み、しかもうっとうしそうに彼女は言い、その場を去ろうとする。
僕はとっさに彼女の腕をつかみ、一言ガツンと言ってやろうと思ったが、彼女を正面から見て、何も言えなくなった。ていうかセリフが出てこなかった。
…身長は僕よりだいぶ低いが、ぱっちり開いた目に、僕は吸い込まれそうになる。まるでヨーロッパかどこかのお嬢様のような整った顔。そんな女の子を目の前に、僕が言葉を失うのも無理はない、よな。
「何よ、いきなり。」
僕は必死にセリフを探した。
「い、いや…君高校生?学校サボってるの?」自分でもびっくりするくらいベタなセリフ。というかこれだと、警察官の職種質問と変わらないな。
ふう、と彼女は溜息をつき
「高校には行ってないの。サボってるとかじゃなくて、高校ってこところ自体に行ってないの。で、昨日の夜ちょっとあってね、家出したの。で、歩き疲れたところであんたの自転車を見つけたってわけ。あんたの自転車だけ、鍵が付いてなかったわ。ってなんであんたにこんなこと話しなくちゃいけないのよ。」
なるほど、家出娘ってことか。
「昨日から家出したってことは、昨日から何も食べてないの?」
「そ、そうだけど。」彼女は伏し目がちに言う。
「じゃあ、とりあえず僕の家に来る?今の時間ならだれもいないし、冷蔵庫をひっくり返したらなんか食べ物もあるし。」
今は3時少し前、今の時間なら家族は誰もいない。
「ほ、本当にいいの?」
「そんな長居するわけじゃないだろ?それくらいいいよ。」
「あ、ありがとう、ございます。」さっきの彼女はどこへやら、どっちが本物の彼女かわからないが、素直に彼女はお礼を言った。




