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僕たちの通る道には花が咲く  作者: 石田侑士


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9/13

国を貶める者

 いいか?とにかくパグラスはあの二人を誘い出せ!

「そろそろ時間か……」

コンコンッ!

パグラスは大きな扉をニ回ノックした。

「なんだ?誰だ」

「兄貴、俺だ」

「どうした?入れ」

ダリアはパグラスを見て不思議そうな顔をした。

「珍しいな。お前から話しかけてくるなんて」

「いや、ちょっと昔の話をしようと思ってな」

パグラスは椅子に腰を下ろした。

「あぁ……俺たちは今となっちゃ仲の悪い兄弟として見られがちだが、昔は仲が良かったじゃねぇか」

「確かになぁ。お前も昔は虫が得意だったんだけどな」

「兄貴が俺を無理やり連れていったときに目の前に俺らと同じぐらいのサイズのでかい蜂が現れて……」

「そうだそうだ!お前それで刺されたよな!」

ダリアは笑いながら話した。

ちっ!笑ってんじゃねぇ!こっちはそれから虫がトラウマなんだよ!

「いろんな話もしたなぁ。自分が王になったら何をしたいか」

「懐かしいな王様ごっこもやったな」

ダリアは笑顔で頷いている。

今やその夢すら無くなっちまったけどな!お前がガキを作ったせいで!

「どうしたんだよ急にこんな話して。どういう風の吹き回しだ?」

「いやぁ……」

パグラスは少し照れくさそうにした。

「実は兄貴に感謝を伝えたくて、あるものを用意したんだ」

「おぉ?」

「子供の頃を思い出せるようにと思って、森にあるんだがついてきてくれないか?もちろんヨウラクも一緒に」

「おぉ……そうか……お前がそんなことを」

ダリアは嬉しそうにした。

「待ってろ今、ヨウラクを呼んでくる」

こうして三人は王宮を後にし、森へと向かっていった。

「おい、出てきたぞ!ダリアとヨウラクもちゃんといる!」

「うまくいったみたいだな」

クディアとドラムボタンはその様子を物陰からコソコソ見ていた。

「俺たちも森へ向かうぞ」

  一方三人は、森の中を進んでいた。

「パグラス、何があるんだ?」

「何があるんだ?」

 ヨウラクは父の話す言葉を真似して喋っていた。

「あっと驚くものだよ、心臓が止まるくらいびっくりすると思う」

パグラスは両手を広げて表現した。

あのパグラスがねぇ……。完全に道を踏み外したと思ってた。無理やりでも俺の側近に添えて更生させようと思っていたが、それは間違いだったらしいな。まだちゃんと良心が残っててよかった。これからはこいつと一緒にこの国と世界を支えていければ。

ダリアはそんなことを思いながら森を進んでいた。

虫野郎どもと生活なんてまっぴらごめんだ!ましてや他種族もだと?!そんなの怖すぎる!絶対に許さねぇ!こいつをここで殺して、俺が子どもの頃に描いてた夢のように自由に生きてやる。

パグラスはそんなことを思いながら森を進んでいた。

「もうすぐ着くぜ!」

「なんだ?何もないじゃないか」

「大丈夫。ちゃんとあるから。ちょっと準備があるから待っててくれ」

そう言ってパグラスはその場を離れた。

「なんだ?」

「お父さん何があるの?」

「さぁな。俺にもわからん」

ダリアは辺りを見渡した。

ガサガサッ!

「なんだ?!」

「布留め(ぬのどめ)!」

突然、草むらから布が飛び出て来た。

「うぁ!」

布は二人の体に絡みつき、身動きを封じた。

「なんだこれ……」

「お父さん、痛いよ!」

「待ってろ!今解いてやる!」

ダリアはヨウラクの体に巻き付いた布を噛み切ろうとするも布は硬く、切れることはなかった。

「なんだこれ、どうなってんだ!おい!パグラス!いねぇのか!」

「おやおや、これは国王様」

「なんだ貴様ら!誰だ?!」

仮面をつけた二人組が草むらから現れた。

「お探しの人間はこの男で間違い無いですか?」

そこにはボコボコに殴られ、血だらけになっているパグラスの姿があった。

「パグラス?!」

「何やらあなたにプレゼントを用意してたみたいですが、もう手遅れのようですね」

「お前ら!何が目的だ!身代金か?!」

「そんな安いものでは無い。もっと高価なものをいただきに来ました」

「は?」

仮面の男はヨウラクに目を向ける。

「まさかお前ら!」

「鉄布(てつぬの)」

男は手から鉄の硬度を持った布を取り出した。

「何する気だ!やめろ!」

仮面の男は鉄布を振りかぶり、ヨウラクに向かって振り下ろした。

バコン!

「……かっ!」

「ほう……さすがですね」

仮面の男の攻撃を喰らったのはダリアだった。ヨウラクの上に覆い被さるようにして攻撃から守っていた。しかし、頭から血を流し、意識はすでに朦朧としていた。

「お父さん!お父さん!」

ヨウラクは父に向かって叫び続ける。

「もう一発いきますよ」

ダリアはもう一度頭を殴られた。

「…………っ」

ダリアはその場に倒れ込んだ。

ヨウラクが必死に呼びかけるも全く返事がない。

「おい、こいつもさっさとやっちまえ、うるさくてかなわんわ」

「おぉ、すまねぇ」

仮面の男はヨウラクを殴った。

「任務は完了か?」

「おう。終わったぞ」

パグラスは意気揚々と立ち上がった。

「まったく……こんなメイクじゃバレてもおかしくないからな?」

「まぁいいじゃねぇか。あとはここに、昨日捕まえておいたポカ属の体の一部を置いておけば……」

「おぉ……」

「まるでポカ属がこの国の王を殺害したみたいに見えるだろ?」

「確かに!あとはお前が王宮に帰ってこの事態を伝えるんだ……いいな」

「任せておけ」

クディアとドラムボタンは森の奥へと身を隠し、パグラスは王宮へと戻っていった。

この特殊メイクでバレなきゃいいが……。

「はぁ……はぁ……」

「え?!どうされました?!パグラス様!」

王宮の門番をしていた兵士がパグラスの異変に気付いた。

「俺と……国王とヨウラクで森に行ってたんだが……突然、襲われたんだ……戦ったんだが……」

「おい!すぐに手当を!」

「待て!はぁ……はぁ……俺はあとでいい!早く……早く兄貴とヨウラクを助けに行ってくれ!」

パグラスはその場で涙を流した。


ーーその日の夜。

「パグラス様……」

王宮で手当をしていたパグラスは落ち込んだフリをしていた。

「パグラス様!パグラス様!いらっしゃいますか!」

「どうした!今はまだ手当の途中だ」

「あ、左様でございましたか」

「構わん!入れ!」

「はっ!」

兵士が一人息を切らした状態で部屋の中へと入ってくる。

「リランさんにも聞いていただきたいので、ここに居ていただいてもよろしいですか?」

「わかりました」

「率直に申し上げますと……国王様とヨウラク様はもう……」

「んな?!嘘だろ?!」

パグラスは立ち上がり、兵士の胸ぐらを掴んだ。

「てめぇ!冗談だとしても許さねぇぞ!」

「パグラス様!傷口が開きます!」

「冗談ではありません……現場に向かった医師がそう判断しました……」

「ちくしょう……」

パグラスは手で目元を覆い隠した。

「そしてもう一つ、この写真を……」

兵士が出した写真にはポカ属の体の一部と思われるものが映り込んでいた。

「これって!」

リランは驚き目を丸くした。

「えぇ……おそらく……」

「ポカ属がやったのか……」

パグラスは兵士が持っていた写真を奪い取った。

「この写真をこの国にばら撒け!」

「んな!なぜそんなこと!」

「ポカ属が俺の家族を殺したんだろ?!」

「そんなことをしたら私たちとポカ属の仲は!」

リランが必死にパグラスをなだめる。

「だったらなんだ?!こんな人を殺すような種族と一緒に暮らせっていうのか?!」

「そんなことダリア国王は望んでいない!」

「その国王が死んだんじゃないか!」

その発言にリランは驚きを隠せなかった。

なんだ今の……。妙に何かが引っかかった。

「これは命令だ!早くしろ!」

「あ、ちょっと!」

リランの必死の抵抗も虚しく、その写真は国中に一気にばら撒かれた。

国王と王子の殺害。そして容疑者はポカ属。この衝撃的なニュースは国を混乱の渦へと巻き込んでいった。

「これはどういうことだー!」

「説明してくれー!」

「本当にダリア国王は死んだのかー!」

国民はこの事実を受け入れることができず、毎日のように王宮へと押し寄せてはデモを起こしていた。

「意外と国民は動かねぇな」

ダリア国王が亡くなった今、パグラスが代わりに国王の座についていた。そして新しい兵として、クディアとドラムボタンを迎え入れた。

「なぁにパグラス。ここまでは想定内さ」

「なんだと?!まだ考えがあるのか?!」

「あぁ……」


 ーー時は現在。クワガタの家。

「違和感はあった。でも、確信がなくて私は動くことができなかった」

「くっそー最低だな!そのパグラスってやつ!」

「えぇ……でも悲劇はまだ終わらなかった」

「まだあるのか?!」

アリアは大きな声を出した。

「違和感の時点で私が行動していれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに」

リランは悔しそうに机を叩いた。


ーー今から7年前。ダリア国王が死んでから数週間が経った頃。

結局、国王とヨウラクを殺害した犯人は見つからず、街には少しずつだが、いつも通りの光景が戻りつつあった。

「いらっしゃい、いらっしゃい!」

「今日はポカ属がいいお肉を取って来てくれたよー!」

「新鮮な魚もあるよー!」

活気にあふれている商店街を一人の男がお店の様子を覗きながら歩いていた。

「おや?ドラムボタンさんじゃないかい?」

「あぁ、どうも」

「どうしてこんなとこに?」

「いやぁ、街の様子はどうかなって」

「そうかいそうかい。ありがたいねぇ」

商店街の店員たちは笑顔で答えた。


 ーー王宮内

「ドラムボタンはどこへ?」

「街の様子を見に行っているようですよ」

「街の様子?何しに?」

「そんなのは知りません」

リランは冷たく答えた。

「なんだその態度は……」

リランはパグラスに怪しい動きがないか、側近に立ち、常に観察していた。


ーーその日の夜。

街は再び悲劇に襲われた。

ーー街の中のある家では……。

「いただきまーす!」

「お母ちゃん今日はなんの肉?」

「今日はどうやらシカが取れたらしいよ!」

「へぇ!」

家族はシカ肉を口にする。

「ん?!」

ーーまた別の家。

「今日のご飯何ー?」

「今日はポカ属が取って来てくれたサメのお肉だよ!」

「へー珍しい!」

「美味しいらしいよ」

「ふーん。いただきまーす……」

家族はサメの肉を口にする。

「え?!」

キャーーー!

夕方ごろ、晩御飯にありついた、家庭から順に悲鳴が上がっていく。

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