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僕たちの通る道には花が咲く  作者: 石田侑士


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3/13

虫の町 プロテア

 もうどれぐらい歩いただろうか。そんなことすら、もう覚えていない。今、どうやって足を動かしているのかすらわからない。

 国は今どうなっているんだろうか……偽りの平和に酔いしれているのだろうか……。

「そんなことは……どうでもいいか……とにかく何か食べないと……」

森だというのにキノコ一つ見つからない。ましてや川もなく、雨もしばらく降っていないため水すら飲めていなかった。

「お腹もすいた……喉も乾いた……お父さん……お母さん……」

ザザッ!

「あぁ……」

足を滑らせてその場に座り込む。もう立ち上がる気力すらない。アリアはその場に寝転がって目を閉じた。このまま終われるならそれはそれで良いかもしれない。もう苦しい思いをしなくて済む。

「おい!大丈夫か?!少年!」

なんだか声が聞こえる。どこか遠くの方で誰かが僕を呼んでいる気がする。

「少年!聞こえているのか?!」

虫……。虫が僕のことを呼んでいるのか。ん?虫…………?

アリアは、突然目を開けて起き上がった。

「おぉ。無事だったか。何回も声をかけてたんだぞ」

「は?」

これは夢か?目の前でクワガタが喋ってる……。

アリアは目を擦りもう一度よく見る。

「どうした?」

……いや、クワガタだ。クワガタが喋ってるんだ。クワガタが喋ってる……?

「え?!クワガタ?!」

「いや遅っ!」

「待って待って!」

「疑問に思うことはいっぱいあるだろうが、まずは、今君が一番疑問に思ってることを答えてあげよう」

おぉ……物分かりのいいクワガタだな。

「なぜ二足歩行で歩いてるかだろ?それはだな……」

「いや、それじゃねぇ!」

「わからない!」

「わかんねぇのかよ!もういいわ!」

「どうもありがとうございましたー」

「そうじゃねぇよ!勝手に終わんな!」

クワガタは手を広げ、首を横に振り、ため息をついた。

「なんだってんだうるさい奴だな」

そのなりで、二足歩行が最初の疑問なわけねぇだろ!

「なんで喋れるか、だろ?まずは」

クワガタは納得いかない表情を見せた。

「最初にそれ?ナンセンスだわー」

 いちいち鼻につく奴だな。

「ちなみに俺がなんで喋れるかというとだな、俺は昆虫と人間のハーフなんだ」

 アリアは理解できずその場で固まった。

「何そのハーフ」

「一般的にポカ属と呼ばれている」

「それを聞いてもポカ属ねぇとはならんのよ」

「じゃあお前はポカ属を初めて見たというのか?」

そりゃ見たことねぇ奴の方が多いだろ!と心の中で思いながら頷いた。

「そーかそーか」

クワガタは嬉しそうに笑った。

「じゃあ俺の町にこいよ!小さいけど歓迎するぜ?」

まぁ、この状況だ。一人でいるよりクワガタといた方が身のためかもな。

「わかった。よろしく」

 二人はクワガタの住む町へ向けて歩き出した。

「ちなみに気になってたんだけどさクワガタって昆虫だよな?」

「お!詳しいな!そうなんだよ!」

「だったら、腕?足?が6本ないとおかしくないか?」

「いい質問だな!そこは実は人間なんだ!だから手足合わせて4本しかない」

いや……そんな自信満々に説明されても……。

「クワガタの部分はこのツノと羽かな?」

「羽?」

「そう!俺は空を飛べるんだぜ!」

「まぁ……クワガタだし……」

 アリアは当然だろという顔をした。

「なんだよその顔は!お前らなんて空も飛べないじゃないか!ばーかばーか!」

 アリアは無表情でクワガタの首を絞める。

「わー新しい技思いついたー。必殺、虫の息」

「わかったわかった!バカにした俺が悪かったから手を離してくれ!」

 クワガタはその場で息を切らしながら四つん這いになった。

「お前……はぁ……恐ろしいな……そうだ……ちょっとの間逆らわないようにしよう……」

「そうしろ……」

そう言いアリアも地面に倒れ込んだ。

「なんだお前。限界なんじゃねぇか。家までおぶっていってやるよ」

「すまねぇ……」

アリアはクワガタの背中に乗っかった。

「せっかくだ、空飛んで行こうぜ!」

「おぉ?」

クワガタは羽を広げ、バタバタとはばたかせた。

「あ、ちょっと待て。お前名前なんていうんだ?」

今ここで聞くか?!

「……アリア」

「そうか!俺はクワガタ!よろしくな!」

そのまんまだな。

「じゃあアリア!いくぞ!」

「おぉー?!」

体がふわっと浮き上がり、あっという間に森の木よりも高いところまで飛んだ。

「おぉ……すげぇな……さすがクワガタだ」

「だろ?一気に行くぜ!」

クワガタは猛スピードで空を切っていった。

「あそこだ!俺の町!帰ったらすぐ飯作ってやるからよ!もうちょっと我慢しろよ!」

クワガタは町に向かって猛スピードで下降し始める。

「あ、やべ!止まらねぇ!あぁーーー!!」

「おいおいおい!」

ズドーンッ!という音とともに二人は地面に頭から突き刺さった。

「てめぇ……覚えてろ……」

「いやぁ……生きてたから……結果オーライ……」


ーークワガタの家の中。

「さっきはすまん!さぁたくさん食べてくれ!」

アリアの目の前には見たことのない肉やスープがたくさん並んでいた。

「これなんだ?」

「ワニ!」

「これは?」

「クマ!」

「これ……」

「シカ!」

アリアは顔をしかめた。

「お前ら何食ってんだ?」

「俺たちの主食はこんな感じよ。虫だからな!」

「理由になってねぇし」

「俺たちって、ここにはクワガタ以外にも虫が?」

「あぁ基本的にみんな虫だ。家の外見てみろよ」

アリアが玄関から外を覗くとそこには、カブトムシや蜂、カマキリなど多種多様な虫と人間のハーフが普通に生活していた。

「どうだ?すごいだろ」

アリアは何度も頷いた。

「この町の名前はプロテア。ポカ属が住む自然いっぱいの町さ」

「へぇ……」

「まぁとりあえず食えよ。せっかくの料理が冷めちまう」

初めて見る料理。なんだか手にするのも気が引ける。

「ガブっといけガブっと!」

アリアはワニの肉を掴み、思い切り頬張った。

「え?!うまっ!」

「だろぉ?見た目が悪いだけで味はめちゃくちゃ美味しいんだよ!」

「まだまだあるからたくさん食べてくれよな!」

数週間、何も食べていなかったアリアは、用意された料理をあっという間にたいらげた。

「お前すげぇな……」

「たとえ数週間食ってなかったとしても、俺だってこんなには食えんぞ」

「いやぁおいしかったよ。ありがとう!」

クワガタは嬉しそうに笑った。

「ちなみに、この動物はどこで買ってんだ?」

クワガタは家の外にある森を指差した。

「そこで狩ってる」

「は?買ってる……?」

「いや、狩ってる」

「は?」

アリアは完全に思考が停止した。

「あとで一緒に行こうぜ!今日の晩飯を取りに行かなきゃ」

「お、おう」

そう言いながらクワガタは洗い物を続けた。

「すげぇなぁこの生活。めちゃくちゃ楽しそうだ」

「まぁな、あることを除けばすげぇ楽しいよ」

「あること?」

その時、家の外から賑やかな子供の声が聞こえてきた。

「アリア、狩りに行くぞ。ついてこい」

クワガタの表情が一気に曇った。

今まで明るかったはずの声も急に小さくなった。


ーープロテア内のとある民家。

「ようよう!カブトムシさんよ!また遊びに来てやったぜー!」

二人組の子供が木の棒を振り回しながら、土足で家の中に入っていく。

「あ、ちょっと……」

「なんだよ?!」

大人サイズのカブトムシが小さな子供に睨まれて萎縮する。

「いえ、なんでもありません」

「じゃあ今日もやろうぜ!」

「よっしゃ!お馬さんゲーム!」

「いぇーい!……お前もいぇーいって言えよ!」

子供がカブトムシの体を木の棒で思い切り叩く。

「あぁ……すみません。いぇーい!」

「ノリの悪い奴だな」

「まぁいいじゃねぇか!ルールは簡単!この町を早く一周した方の勝ちー!」

「さいしょはぐー!じゃんけんほい!」

「よっしゃー!」

じゃんけんに勝った子供が、カブトムシの背中に乗る。

「くっそー!俺ダッシュかよ!」

「へへっ!自分のじゃんけんの弱さを憎むんだな!いくぞ!よーい……ドン!」

と同時に、子供がカブトムシの尻を木の棒で何度も叩いた。その姿はまるで競馬のようだった。

家の中からほかの住民がその様子を覗いていたが、全員が見て見ぬふりをしていた。

「おい!早く走れよ!負けちまうだろ!」

どんどん差が開いていく。

「何やってんだよ!」

「すみません……はぁ……これが私の全速力です……」

「あれれー?カブトムシに乗ってるのに遅いんじゃなーい?」

「くっそー!使えねぇな!」

子供はカブトムシから降り、思い切り蹴飛ばした。

「棄権すんのかー?じゃあ今回は俺の勝ちだなー」

「あのカブトムシ使えねぇ!あとでお父様に言いつけてやる!」

カブトムシはその場に倒れ込んだ。

「はぁ……はぁ……お尻が痛い……」

涙目になりながら、お尻をさすっている。

子供たちが帰ったのを確認し、住民がぞろぞろと外へ出てくる。

「大丈夫かい?」

「最近あの子たちの遊びもエスカレートしてきたなぁ……」

「どうにかしないと……」

「どうにもできるもんじゃないよ!あたしたちだって殺されちまうかもしれないんだよ?!」

住民たちはため息をついた。

バンッ!

突然、森の中から銃声が聞こえた。

「おいゴルァ!カブトムシってのはどいつだぁ!」

銃を持った男が怒鳴りながら町へと入ってきた。

「やばい!ポーハイに住む人間だよ!みんなうちの中へ戻んな!」

「カブトさん!あんたが狙われてんだから早く逃げなきゃ!」

「俺はいい!カマキリさん!あんたは逃げなきゃ!」

「あぁん?お前がカブトムシだな?」

「そしてお前……俺がカブトムシを探してると知ってて、何で手助けしようとしてんだ!」

男はカマキリを思い切り蹴り飛ばした。

「キャー!」

「ぷっ!なんだお前。メスか?わかりにくい見た目してんなぁ……そして気持ち悪ぃ」

男がゆっくりとカマキリに近づいていく。

「まぁこうやって生かしてもらってるだけでもありがたいと思え、下級種族ども!」

「ちょっと!目的はそいつじゃないっすよ!」

「あぁそうだった」

男は必死に逃げるカブトムシに銃口を向けた。

「お前……俺の息子を不快な気分にさせたらしいな……虫の分際で生意気なんだよ!」

 バンッ!バンッ!バンッ!カチャ……カチャ……

「ちっ!弾切れか……まぁいい。もうどうせ生きてねぇだろ」

「おい!こいつの死体持って帰って息子に見せろ。きっと喜ぶ」

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