三人の勇者VSクディア
そうは言っても……あの待針の仕組みを理解しなきゃまたどうせ捕まるだけだ。
「どうした?来ないのか?」
「くそっ!」
クディアからの攻撃をなんとか避けるが、待針の仕組みがわからない以上、下手に手を出せずにいた。
「逃げてばっかりで面白くねぇな!」
クディアは高笑いし、二人を煽る。
「くそ!ムカつく!もういい!」
リランは挑発に乗せられ、クディアに突っ込んでいく。
「炎線!」
炎が一直線になってクディアに向かっていく。
「貰ったぞ……」
「は?」
「技通」
リランが放った炎は穴を通り、針ごと折り返して返って来た。
「え?!また体が……」
「危ねぇリラン!避けろ!」
「キャー!」
リランはまともにカウンターを食らった。
「何してんだ!」
「また体が……げほっ……動かなくなったの……」
「また……?」
どうなってんだ一体。
「針星群!」
空から大量の針が二人に襲いかかる。
「とにかく避けろ!今は動くんだろ?!」
「うん!」
二人は物陰に隠れてやり過ごした。
「ちっ。外したか」
「ねぇどうしよう。あんな途中で動けなくなってたらいつまで経っても倒せないよ」
「それなんだけど……俺にちょっと考えがあるんだ。サポートしてもらってもいいか?」
その頃、集会所から戦塵の立ち上る方角へ走って向かっていた住民たちはというと……。
「クワガタ!ちょっと待ちなって!」
「なんだよ!もう戦いは始まってるんだ!」
「だからなんのだよ!」
「誰がこんなところで戦ってるっていうんだ!」
住民たちは口々に不満を漏らす。
「だからさっき言った戦士二人だよ!」
「は?」
住民たちはまだ状況を理解できずにいた。
「なんでこんなところで戦ってんだい……」
「そんなの知らないよ!でも俺たちのために戦ってくれてるのは確かだろう?」
「そうは言っても話が急すぎてついていけないよ!」
クワガタは突然立ち止まった。
「みんな……さっきからなんでそんな他人事なんだ?自分の国のことだろ?!」
その言葉に住民たちは黙り込む。
「またそれかよ……もう勝手にしろ!」
クワガタは住民たちを振り払い、走り去っていった。
「クワガタのやつ行っちまったぞ……」
「でも急にそんなこと言われてもねぇ……」
住民たちは顔を合わせる。
「俺たちはどうする?」
「クワガタは嘘をつくようなやつじゃないから、言ってることは本当なんだろう。でも、これでもし戦いに負けた時、その後殺されるのは俺たちだ」
住民のほとんどが縦に首を振った。
「確かにその通りだな。どうせ殺されるなら、俺は長く生きたい」
「私も」
「俺も」
次々と住民からは声が上がる。
「でもそれじゃ、いつまで経ってもこのままじゃないの?」
一人の子供が声を上げた。
「え?」
「クワガタさんは毎日人が殺されていくのを見て、きっとこの生活が嫌になったんだと思う」
大人たちは俯き始める。
「私もこんな生活続くのやだ!今はまだ生きてるけどいつかお父さんも、お母さんも、友達も、そして私自身も殺されるなんて、そんなの嫌だ!」
子供は涙ながらに訴えた。
「ま、まぁとりあえずクワガタの後を追ってみるか?」
「そうだな……見るだけでも価値はありそうだ……」
住民たちは子供の全力の訴えに少し心が傾き、クワガタの後を追うことにした。
一方、戦いの最中のアリアたち。
「考えって?」
「とにかく俺のいう通りに動いてみてくれ。さっきみたいな遠距離で攻撃できるやつあるか?」
「う、うん……あるけど」
「じゃあここから頼む」
リランは手で銃の形を作り、人差し指をクディアに向けた。
「火縄銃!」
バン!ババン!
炎を纏った、小さな銃弾がクディアの元へと飛んでいく。
「うぁ!」
クディアの体に直接当たり、燃え広がる。
「あちちちちちち!」
クディアはその場にのたうち回った。
「どうだリラン……」
「動かない……」
リランの靴底には針のようなものが刺さっていた。
アリアはうんうんと頷いた。
「え?何かわかったの?!」
「俺についてこい!」
「え?!ちょっと!私の質問聞いてる?!」
クディアはいまだに地面に転がっている。
その隙をつき、アリアは一気に距離を詰める。
アリアの右手が緑色に光り始める。
「葉桜一輪!」
「うぉぇっ……!」
緑色の花びらが開くと同時に、地面に大きな窪みができた。
「……っ!」
「アリア?!」
「リラン!針抜いて!」
アリアの靴底には待針が刺さっていた。
「わかったぞ!」
アリアはニヤけた。
「何がわかっただよ……はぁ……はぁ……」
「お前の待針のトリックがだよ!」
「ほう……」
アリアは腰に手を当て、クディアを指差す。
「待針の発動条件はこっちから攻撃を仕掛けた時だ」
クディアは図星を突かれたような顔をした。
「どうやら当たっているみたいだな」
「どういうこと?」
「最初、リランが攻撃をした時とさっき攻撃をした時、そして俺が攻撃をした時、待針が靴に刺さってたのは全部こっちから攻撃をした時だ。あいつから攻撃を食らった後は自由に体が動いてたから」
「じゃあこっちから攻撃をした時に待針が出て来て私たちの動きを封じるってこと?」
「そう……そして待針が出てくるのは地面に足がついた時……」
「え?」
リランは少し嫌な顔をした。
「察しがいいな。背中を貸してくれ」
アリアは笑顔で言った。
「私一応女なんだけど?」
「一緒に戦ってる仲間だろ?それに俺の方が軽い」
リランはヘッドロックを決めた。
「いだだだだだ!」
「本当つくづくムカつくわ!さっさとやっちゃいな!」
リランはアリアが背中に乗りやすいように少し屈んだ。
「助かるぜ!」
アリアは遠慮することなく、リランの背中を蹴り上げ、空中へと高く飛んだ。
「ひぃー!痛い!ちょっとは遠慮しなさいよ!」
「桜蕾!」
アリアは空中からクディアに向けて桜の蕾を投げつける。
「なんだ?」
「起爆!」
アリアが指をパチンッと鳴らすと蕾が次々と爆発する。
「うわぁぁぁぁ!」
「リラン!」
「了解!」
リランはアリアの落下地点の真下に入る。
「ナイス!」
再び背中を蹴り上げ上空へと舞い上がる。
「あぁこざかしい!」
クディアの周りには大量の針が宙に浮いている。
「針千本」
空中で身動きの取れないアリアを千本の針が襲いかかってくる。
「くそっ!」
なんとか腕でガードするも体には大量の針が刺さる。
「はぁ……はぁ……ぷっ!」
アリアは口の中に溜まった血の塊を吐き捨てた。
「こっちからもいくぞ!」
アリアは空中に大きな円を描く。円の中には桜色の薄い膜が出来上がり、それを殴るようにして破った。
「桜波!」
衝撃波がクディアを襲う。
「うわぁ!」
思わず膝をついた。
「あと少し……」
爆発音が近づいて来た。もうすぐだ!
「桜波!」
「うわっ!」
地響きと突風がクワガタの体を襲う。
「なんだ今のは……」
クワガタは空を見上げた。
「あれは……アリアか?!相手は……」
相手を見て驚く。
「クディアじゃねぇか!なんでここに!」
アリアは民家の屋根の上に降りた。
「あ!」
「大丈夫。ここは地面じゃない」
「おぉ……なるほど」
「戦いにくそうだな……はぁ……はぁ……お前、リランがいなくなったら、戦えねぇんじゃねぇのか?」
アリアは黙ったまま何も言わない。
「図星だよなぁ」
クディアはリランを見てニヤリと笑う。
「食らえよ」
リランに向かってトップスピードで走り出す。
「和花針乱!」
クディアの大技がリランを襲う!
「がふっ……!」
リランは勢いよく吹き飛ばされた。
「リラン!」
アリアはリランに駆け寄ろうと民家の屋根から降りた。
「しまった……」
待針が刺さり、体が動かなくなる。
「お前にもお見舞いしてやる!」
アリアは民家を突き破り、木に叩きつけられた。
「くっそ……」
アリアがゆっくりと体を起こすと、意識が朦朧として既に反撃する気力のないリランの姿があった。
「おい……大丈夫か……?」
「げふっ……!」
体を揺さぶると血を吐き出した。
こいつがいなきゃ……クディアとはまともに戦えない……。俺ももう一発食らったらお陀仏だ。なんとかしないと……。
クディアの足音が近づいてくる。
「おーおー二人揃ってこんなところで仲良くお昼寝とは」
アリアは睨むことしかできなかった。
「死にそうなのはこいつか?」
クディアはリランをゆっくりと持ち上げる。
「や……め……」
「こんな瀕死の状態でまだそんな目ができるのか。王国の兵士とは素晴らしいものだな」
クディアは最後の一撃に向け準備を始める。
「おい……やめろ!」
「やめるわけねぇだろ!」
「リラン!」
「ア……リア……」
「俺たちに歯向かうってことはこういうことなんだよ!」
「くそっ!」
「シザースカッター!」
その時、アリアとリランの目の前にツノを2本生やした男が現れた。
その男の攻撃はクディアを遠くへ吹き飛ばした。
「お、お前……」
「クワガタ!」
「危ないところだった。無事か?」
「助かった……」
アリアはほっと安堵した表情を見せた。
「まさかこの町にクディアが来るとはな」
「ク…………」
「いいよ。リランはそこで寝てろ」
「クワガタ!頼みがある!」
「くそっどこのどいつだ」
クディアは既に立ち上がっていた。
ボガーン!
物音とともに民家の屋根が崩れ落ちる。
空中には一匹のクワガタとその背中に乗るアリアの姿があった。
「ポカ属か……下級種族のくせでしゃばりやがって!」
クディアは二人に向かって針を向ける。
「来るぞ!避けろ!」
「針千本!」
大量の針が二人を襲うも、クワガタはそれを全て避け、一直線にクディアへと向かっていく。
「ははっ!そんなボロボロの体で何ができる!」
「それはお前も同じだろ!これで終わりだ!」
アリアの右手が桜色に光り出す。
「おい!見ろ!あれ!」
「え?!クディアじゃないか!」
住民たちは戦場へとたどり着いていた。
「でも、あいつボロボロじゃねぇか?」
「まさか本当に誰か……」
「見て!あれ!」
子供が指差した方向には、クワガタに乗るアリアの姿があった。
「なんだいあれは……クワガタと……誰だい……」
クワガタはさらにスピードを上げる。
「ありがとうクワガタ!」
アリアはクワガタの背中を蹴り上げ、トップスピードでクディアに突っ込んでいく。
「速い!防御が間に合わ……」
「桜花一輪!」
アリアが放った一撃は、クディアの腹部に突き刺さり、桜の花びらが舞い散った。
「おぉぉぉぉぉ!ふきとべぇぇぇ!」
クディアは勢いよく森の奥へと飛んでいった。




