第36話~え?安いの?~
偶然とはいえ、整体に使いやすいベッドを手に入れ飾り付けも終え遂に店としての形がようやく出来た。
これでいよいよ開業する事が出来ると思ったが肝心な事を忘れていた。
そう、店の名前だ!
店の開業の事ばかり考えていて店の名前の事を全然考えてなかった…
どうしよう、何て名前にする?
元の世界での店の名前は「ファースト整体院」だったがそもそも整体院という言葉が通用するかどうかも怪しい病院という概念がないこの世界でいきなり整体院という言葉が出てきても皆ピンと来ないかもしれない。
一応リノンに確認してみたら整体という言葉は聞いたことがないらしい。
これは困ったなと思ってつばさに相談したら「アライグマクリニック」とか言ってきたので思いっきり頭をひっ叩いた。
こいつに聞いた俺が馬鹿だった。
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翌朝、
仕方ないので俺は1人冒険者ギルドに行きヘイルダンさんに相談する事にした。
どの道開業する事は報告するつもりだったしね
冒険者ギルドに着いて受付でギルドカードを見せてヘイルダンさんを呼んでもらうようお願いしたらそのままギルドマスターの部屋に案内された。
中に入ったらヘイルダンさんが机に向かってなにか仕事をしていた。
「おぉアオイさんよくいらっしゃいました!」
「ヘイルダンさんどうも。すいません忙しい時に来ちゃって」
「いえいえ、大丈夫ですよいつもの事ですから。それで今日はどうされました?」
「あ、実はですねお店の準備がほぼ出来たのでそのご報告をしようと思いまして後ご相談もあって…」
「おや、遂にお店をオープンされるのですね。おめでとうございます。で、相談とは?」
「ありがとうございます。はい、実は店の名前に悩んでいまして、」
「ほぅ、店の名前ですか?どういうことでしょうか?」
「はい、実は僕のやる仕事というのは人の身体の負担や疲れている場所を軽減させる物で整体というんですけどあまり馴染みのない仕事なのでそのままの名前で出しても人が来ないんじゃないかと思ってしまって」
「なるほど、それで店名をどうしたらいいかと?確かに整体という言葉は私もはじめて聞いた言葉ですし、ほとんどの人がイメージ出来ないかもしれませんね」
エルフであるヘイルダンさんが知らないなら間違いなくこの世界には整体という物は存在しないのだろう、だとしたらますますやりづらくなるな…
待てよ?それなら一度ヘイルダンさんに簡単にやってあげた方がイメージしやすいか?
「あ、あのヘイルダンさん。もしよろしかったらどういうものか、一度体験してみませんか?」
「ふむ、確かに一度どんなものか受けてみた方がイメージしやすいですからね、私も興味がありますしお願いします。」
ヘイルダンさんが受けてくれるので俺はアイテムボックスから購入した折り畳みベッドを出しその場で組み立てた。
3つ購入して全部置こうかと思ったが最初のうちは全部置く必要がないと思い1つだけアイテムボックスにしまっておいた。
一緒に購入した大小のタオルを用意して準備が出来た。
上着を脱いで軽装になったヘイルダンさんをベッドに誘導した。
「ヘイルダンさんお待たせしました。このベッドにうつ伏せで寝てください。」
「これはまた、珍しいベッドですねこれでやられるんですね」
「はい、よければその開いてる穴に顔を入れてください。」
「ほぅ、これはそんなに負担がかからないのですね」
「大丈夫そうですね、因みにヘイルダンさんはどこか痛い所や疲れてる場所はありますか?」
「そうですね、私は昔から腰が辛くて時々痛みが出たりしますね。」
そう言ってヘイルダンさんがうつ伏せになったら俺は大きいタオルをかけて早速始めた
因みにどこが悪いのかを聞いた後に俺のスキル「弱点感知」も使い身体を見てみた。ヘイルダンさんの場合出てきたのは「腸腰筋」と「脊柱起立筋」だった
腸腰筋は、上半身と下半身をつないでいて、歩く時に脚を持ち上げる役割を持ち、姿勢と歩行との関連性を多く持つ筋肉だ。
でも長時間デスクワークをしてると腸腰筋が常に収縮し、緊張状態になるから、姿勢が乱れたり腰痛、肩コリ、場合によってはつまづきやすくなったり脚がむくんでしまったりする。
次に脊柱起立筋は骨盤や背骨から頭部まで付いている筋肉で、作用として両側の脊柱起立筋が働くと腰を反る動作を行い、片側の脊柱起立筋が働いた場合は身体を傾ける作用がある。
また一番の動きはその名の通り背骨を立てる作用(姿勢を維持させる)だ。
日頃からギルドマスターの仕事をやったりと今日みたいに机に向かって仕事をしてる事が多ければこの2つが辛くなるのは当然だし、何よりエルフは長命種だから余計にきつくなるだろう。
そう思い俺は一応確認しながら触診をしたが、やっぱりスキルと同じ場所に負担がかかっていた。
このままだと下手したらぎっくり腰にもなってしまう可能性があるが、そもそもエルフってぎっくり腰になるのかな?
それはさておいて俺は触診を終えヘイルダンさんの身体を施術し始めた。
エルフの身体は普通の人間と違い細くスラッとしているが基本的には人間とほとんど変わらないから問題はない。
まず最初に下半身から行ってから上半身に移りゆっくりと的確に緩急をつけて行った。
「ヘイルダンさん、痛かったり違和感があったら言ってくださいね?」
「わかりました。しかしこれは初めて経験しましたがとても気持ちいいですね…」
「ありがとうございます。こうやって受けてる人の悩んでる部分にアプローチをかけて身体を楽にしていくんです」
「なるほど、この整体ですか?どういうものか分かれば確実に人気が出るでしょうね…」
「それは良かったです!やっていける自信がつきます!」
それから20分程行っていったがいつの間にかヘイルダンさんは寝てしまっていた。
日頃から相当疲れてるんだなと思うが俺は最後の整えを行う為にヘイルダンさんを起こし横向きに寝てもらった。
「ではヘイルダンさんこれから最後の締めを行いますね?」
「最後の締めですか?一体何をするんですか?」
「最後の締めは骨盤矯正です」
「こ?骨盤矯正とはなんです?」
骨盤矯正とは骨盤に付着する筋肉を中心に、指圧や関節運動を行って悪い癖を取り除き、ゆがんでしまった骨盤を本来の正しい位置に戻す施術のことで俺の場合は手で行い、ボキボキと骨が鳴るが安心だとヘイルダンさんに説明したのだが、ヘイルダンさんの顔が段々青くなっていった。
「ちょ、ちょっと待ってください!アオイさん?それは危険なのでは?私をどうするつもりですか?」
「あ、あの安心してください!痛みはないですし、安全な方法でやってますから害はないです!」
「そ、そう言われましてもボキボキなるのはそれは骨が折れてるのでは?」
確かにそう思うかもしれないが実際には骨が鳴ってるわけではないが説明が大変なので大丈夫といっておこう。
「安心してください。決して危険なことはありませんから!では準備しますね」
説明しながら俺は矯正の準備をした。
ヘイルダンさんはまだ怖がってるがそのまま行った。
「ではヘイルダンさんいきますね」
「ア、アオイさん待ってください!まだ心の準備が…!!」
ボキボキッ
「!!」
俺は迷わずに矯正を行った
かなりボキボキと鳴ったが手応えはあった。
ヘイルダンさんはまだ呆然としているが声をかけると痛くなかったようだ。
「不思議ですあんなに音がなったのに痛みがないなんて…!」
「だから言ったじゃないですか?大丈夫だって」
「しかし、いきなりやられてはびっくりしますよ!」
「本来でしたら最初にお話をしてから了承を得てやりますから大丈夫ですよ」
「え?あの、私には相談がありませんでしたけど…?」
「ハハハ…それは、すいません。」
うん、やっぱり最初に了承を得ないとそうなるよね、次からは気をつけよう
そして俺はヘイルダンさんを逆向きに寝かせて同じように骨盤矯正をかけた2回目は慣れたみたいで大丈夫そうだった
終わった後の身体を確認してもらうと、痛みがや辛さがなく動きやすいとの事だ。
こんなに楽になるなら毎日通いたいと言ってくれ、早くも常連になってくれそうな予感だ。
料金は?と聞かれたが今のところ30分で銅貨6枚60分で銀貨1枚と考えている。
宿代より高くないし、週1とかでも全然いけると思ったがヘイルダンさんからしたら安すぎるとの事だ。
冒険者なら銀貨3枚でもいいと言ったが、対象はあくまでこの街に暮らす人達だあまり高すぎると却って来なくなると思ったがコースを増やし目的に分ければいいのではと思いヘイルダンさんと話し
30分 銅貨6枚
45分 銀貨1枚
60分 銀貨3枚
になった。これなら基本30分を選んでたまに贅沢で長めの時間を選ぶ形になるから大丈夫と言われた。
ヘイルダンさんの事だから60分のコースを選びそうだけどそれならそれで良い。
店がオープンしたら必ず行くと言ってくれ俺はギルドを後にした
店に戻ってつばさ達に料金の事を話し、食事にしようとなった時につばさから
「んで、店の名前は?」と言われ
肝心な事を決めるのを忘れてた!!
その事を思い出した俺を見てつばさは
「お前…何しに行ったんや…アホやのぅ」
何も言い返せない俺だった…




