01-32 東の塔
Ver1.0
「――――っ」
寒々と冷え切った夜の砂漠にあって、落下の勢いと共に騎士剣を砂地へと突き入れたグランは術具でもあるソレを起点に魔術を発現させる。
使用する魔術は“干渉”を変化させる形で創られたという“探査”であり、グランは砂漠の砂と地雷とを感覚的に区分ける術をもって安全な道を作るべく先行し、続く部下達の安全を確保していた。
「――――」
尚、地雷に対するこの手順もまた先人が遺した戦訓であり、異物があれば魔石弾を叩き込む事で無力化させるのが正当な手順となる。
しかし、今は物音を立たせる事すら憚られる隠密作戦中であり、発見したとしても無力化は行わず、着色弾によってそこにある事を示すに留め後々に駆け付ける機竜隊が始末する手筈となっていた。
「――この範囲にも無し、か」
とはいえ、こうも空振りが続くとグランをしても油断がよぎり始めてくる。
「――――次だ」
その面倒な衝動を意図して抑えつつ、効果範囲内の確認を終えたグランは今し方発現させた“探査”の端へと跳び、着地点に差し込んだ騎士剣を起点に再び“探査”をかける。
「――――石と宝石、か」
つい最近にグランが知り得た事だが、『人間の世界』において彼のような土の属性の魔力を持つ者は珍しいらしく、“探査”の魔術を使える人間は今回借り受けた魔導騎士の全員を含めても2人しか居なかった。
そんな現実を知ったグランが「自分も君と同じようなモノなのか」とラフィーアに問うと、彼女は「土の属性は誰しもが羨む才能ではありません」という『人間の世界の常識』を彼に返していた。
『特筆した利用価値が無かった為に求められず、学び育てる環境もない事からその芽を拾う事もできていません』
それに続くラフィーアの説明はそんな言葉で締めくくられており、分母の少なさは保有者自体の減少にも繋がり、その流れを加速させているともグランは聞いていた。
そして、今し方呟いた言葉はそれを聴いた時にも零したグランの感想であったが――その2つが似ても似つかぬものだと疑っていなかったラフィーアから話を切り上げる方にこそ苦労したなと思い返す彼の“探査”に巨大な反応が入り込んでくる。
「――――」
その判り切った反応に視線を上げれば世界を塞がんばかりの巨体をもって夜空を突いている“目標”があり、見知った外装を前にしたグランは余所見をソレに向ける。
「――――――やはり、そうなのだろうな」
第一段階の時から眺めていた“目標”は近付けば近付く程に“霊廟”と似た面影を見せており、今ここに至っては「倒れていなければ“霊廟”もこんな姿をしていたのだろう」と思わずにはいられぬ威容をグランに示していた。
「『人間の世界』は広いな…………本当に」
そうしてグランにとっても興味の尽きない場所となった“目標”はラフィーアにとっても因縁の場所であるらしく、作戦前から滲み出ていた彼女の“決意”を切っ掛けに聞き出した情報もまた興味深い内容だった。
当時の“目標”は近付くモノを無差別に焼く危険な遺物――ラフィーアの推察では連邦が“目標”を調査しようとした折に「“目標”が攻撃されたと認識する行動」を取った結果と思われる――と化していた。
そんな“目標”に対し、当時のラフィーアはゼフィリアから預けられた刻印によって状態を変質させ、その警戒を解く事に成功したらしい。
グランとしては“霊廟”に類する“目標”の状態を変えられただけでも驚嘆すべき事であったが、当時のラフィーアが帯びていた任務はそれ以上の驚きを彼にもたらすものだった。
連邦領の只中に存在する“目標”を占有し、そこに“キャリア”を据える事で竜の休息が可能な王国側の拠点とする。
それは劣勢にある戦局を一変させるであろう一大計画であり、“目標”の警戒を解けた事でその策略は成功したかに見えたものの、強引に同行していた『お偉方』が“目標”の付近に居た連邦巡回部隊に無用な攻撃を仕掛けた事で状況は一変。
竜騎隊が到着する前に王国側の戦力がこの地に居る事を連邦側に察知された事でその計画はご破算となり、当時のラフィーアは“目標”の警戒を解いたままでの退却を余儀なくされたとの事だった。
グランが聞いた限りではその経緯にラフィーアが負うべき責任はないと考えていたが、当の本人はその失点を取り戻すべく意気込んでおり、作戦前に見た彼女は布鎧越しにも判る程の重装備を仕込ませた状態で機竜へと乗り込んでいた。
「――――着いたか」
そんな余所見の中、グランは“目標”外苑に降り立ち、その“魔力”を確かめるべく聳える外装へと手を伸ばす。
ここに至るまでに“探査”に掛かった障害物はなく、第一段階に続いての空振りとなれば余計な感情が殊更強く過ぎり始めるが、その慢心こそが死への片道切符であり――沈黙によってソレを殺している中、本隊である後続が“目標”の傍へと辿り着く。
「――予定通りだ。副官は機竜を隠し、他の者は体制を整えつつ周囲を警戒」
“目標”の外装に魔力はなく、連邦の歩哨も見えない事を確認していたグランは背後に映る“部下”達に向けて次の行動を命ずる。
「「了解」」『……了解』
それを受けた部下達の動きもまた迅速であり、機竜の曳いていた荷車から降りた魔導騎士達はグランを中心に散開し、愛機から降りたラフィーアも機内から伸ばした魔導鋼線で乗機を操り、“干渉”の魔術によって乗機を砂の中へと沈めていく。
その“動き(いろ)”に振り返ったグランの表情――慣れ親しんだ機体が砂の中に沈んでゆくのを見据える彼の視線はいつにも増して硬く、それを成しているラフィーアの表情にも納得しきれぬ棘が含まれていた。
不確定要素の多い潜入作戦においては装備を放棄する状況も十分に発生しえる。
2人の中にあるわだかまりはそんな作戦に竜晶を載せているラフィーアの機竜を投入しなくてはならなかった事にあるが、当然ながら王国にとっても貴重な竜晶型を使用せざるをおえなかったのには当然ながら理由がある。
今回の作戦においての最大の争点が潜入組の行軍方法であり、揉めに揉めていたこれは徒歩による進出が候補に挙がる程の混乱を見せていた。
そもそも敵地深部に向けての大戦力投入という作戦自体が王国にとっては未知のモノであり、実例のない課題に議論が紛糾するのは致し方のない事であったが――最終的には上役からの『“目標”の内情確認を重視する』という書簡によって魔導騎士を温存する方針が定められた。
だが、『足を用意する』という指針が定められたとしても戦力の消耗を避けたい意見が消える訳ではなく、進軍と撤退に加え、調査中の“隠蔽”にも魔力を使うとなると魔石型の機竜では『敵と遭遇しなくても放棄せざるをえない』という予測が立ち塞がる事となった。
これまでの戦果から機竜を優先的に配備されているザックバール派遣軍にあってもそんな無駄遣いが許される筈もなく、議論は再び紛糾したらしい。
しかし、迫る決行日と妥協の結果、長大な稼働時間を持つ竜晶型であるラフィーアの機竜がその足に選ばれるのは致し方のない結果といえた。
とはいえ、その決定をラフィーアに知らせた時の『……運竜になった覚えはないのですが』という怨嗟の声は今でもグランの耳に残っており、ふとそれを思い出した彼の背筋を震わせているのだが――。
そんな尊い犠牲によって魔導騎士達の足は確保され、機竜と一緒に沈めている荷車が無事であれば帰りも楽ができる手筈となっていた。
「北回り組の状況はどうか?」
「……最後に視認した状態ですと、行程の3分の2を越えた辺りに。…………念の為にお伝えしますが、彼等が遅いのではなく竜士様の進出速度が秀でている為です」
そんな思案の中、乗機への隠蔽工作を行うラフィーアに情報を求めれば的確な報告が返され、それに含まれている“棘”にたじろぎつつも考えを巡らせたグランは幾つかある選択肢から最適思しき命令を発する。
「――此方は北回り組が着くまで“目標”周辺の地雷探しを続ける。魔石銃を扱える者は此方に、残りは副官の護衛に付き、機竜の隠蔽が済み次第“目標”内部の調査を開始しろ」
「「了解」」
「大尉には自分が」
周囲を警戒していた魔導騎士達が復唱し、再び剣に手を掛けたグランの元には魔石銃も抱えている騎士が付く。
「――“色”は見えないが、少数の敵兵が潜んでいるのはまず間違いない。身の安全を第一としつつも迅速な制圧を心掛けるように」
それらの傾注の最後に注意を示したグランは部下達の敬礼を背後に跳躍し、まだ調べていない領域へと騎士剣を突き入れた。
グランがラフィーア達を見送ってから幾ばくかの時間が過ぎた頃――。
北回りの経路を調べていた残りの部下達と合流したグランが“目標”に近づくと、その入口の陰に2人の“魔導騎士”が潜んでいるのが“目”に映った。
「――ご苦労」
「制圧は成功。中尉と同輩は奥に」
その片割れにグランが声を掛けると、彼等はあっさりと“隠形”を看破された事への“驚き(いろ)”を滲ませながらも役目を果たし、気が付いて居なかった北回り組の動揺を置いてきぼりにしたままグランは“目標”内部へと足を踏み入れる。
「――――」
そうして通り過ぎた暗がりの中には薄っすらとした染みがあり、通路の端にあるそれは連邦側の排除が迅速に行われた事を示し、“目”でなければ判別がつかない程の隠形はその技量の高さを示していた。
「(――――人間の世界は、相変わらず驚きに満ちているのだな)」
それを成した彼等の在り方はまるで“霊廟”の物語にあった忍のようであり、脳裏に過った感情をそんな言葉で区切ったグランは思い出の場所と同じ内装が施された通路を進み続ける。
「しかし――暗いな」
そんな郷愁のなかで際立つ明確な差――ままならない通路の現状に、グランは不満を零す。
彼等が歩みを進めている通路の光源は足元を薄暗く照らす微かな光だけであり、限られたそれは先を見通す事の出来ない影を助長し、敵地である事がその不安を否が応でも引き立てていた。
「(……集魔型の非常灯が生きているのに、それより耐用年数に秀でている反応型が点いていない。炉が死んでいるのなら構造自体を維持出来ないのだから、意図的に消灯させていると考えるのが妥当だが――)」
そう思案を巡らせるグランは“霊廟”での経験から“目標”の状態を推し量れているが、それを持たない部下達の“魔力”は歩を進める度に揺らめいており、無為に気を張っているのは明らかであった。
「――――」
上官としてはソレを緩和した方がいいと考えるグランであったが、その術を持たない彼は通路に引かれた連絡用の魔導鋼線を目印に進み続け――。
「――どうだ?」
「……間抜けが足元に張られた線に引っ掛かって転倒しましたが、制圧は完了しました。……今は4名が捕虜2人の尋問を行い、残りの4名が周辺確認を継続中です」
その終わりは通路と同じような薄暗さに満たされた広間であり、その中心に据えられた扉を調べている小柄な背にグランが短な問いを投げかければ、彼の優秀な副官は扉に手を添えたまま必要な情報を返してくる。
「――足元の状態によってはそういった事もあるだろう? あまり味方を蔑むな」
調査を続けているラフィーアが言葉を向けている相手は彼女よりも力に優れた魔導騎士であり、気分を害された彼等が文字通り手を離せない少女を無礼討ちしようとすれば、文字通り一息で事が済んでしまう。
そんな天敵達に囲まれた状態でも辛辣さを隠さないラフィーアをグランが窘めると、非凡な彼女はさも心外だと言わんばかりの表情で振り返る。
「……連邦には足元に張った線を引く事で起爆する爆弾があります。……こういった場所では、足元にこそ気を払わねばいけないのですよ?」
そうして続けられた言葉は戦訓に裏打ちされた非情な現実であり、静かな怒りを灯していた周りの“感情”はその冷や水によって青くなり、彼等は気まずそうに視線を泳がせながらラフィーアに向けていた“色”を離していく。
「そうか。――捕虜はどうする?」
「連れてはいけませんので、情報を取り終えたら両手を縛り付けた状態で放置するのがよろしいかと」
「殺さなければ軍規には触れない、か。――判った、そうしよう」
投降した敵兵は居なかったと報告して『処理』する事も出来るらしいがそれは禁じ手に近い悪手であり、余計な小細工を弄して南に付け入る隙を与える必要もないのだろうと考えたグランはラフィーアの案を採用する。
「それで……肝心の『扉』はどんな感じだ?」
そうして作戦進行に問題がない事を確認したグランは、肝心の作戦目的へと視線を向ける。
まるで機竜よりも大きなモノが通る事を想定しているかのように大きく、それ相応な重厚さを伴う扉はグランが想像していたものよりも巨大であり――原型を留めていればここまで“心”に響くのかと彼は静かに驚いていた。
「……連邦の技術では開錠の切っ掛けも掴めなかったようですね」
「――見た目は連邦が好きそうな分野に見えるがな」
ラフィーアはそんなグランの内情を知ってか知らずか彼が着くまでに調べ上げた扉への所見を述べ、その情報を前にした青年は素直な疑問を洩らす。
使われている材質を見れば扉が“霊廟”やフライア級に用いられている技術で形作られているのは確であるが、扉の随所にある点検口の先には機械的な部品が見て取れ――中のソレ等を順序通りに動かせば開けられるのではなかろうかとグランは目論んでいた。
「……なるほど、竜士様にはそう見えるのですね」
「そうだな――まぁ、王国の建築様式からかけ離れているのは確かだろう」
グランの言葉が意外だったのか驚いたような“感情”を見せるラフィーアに、彼は明確な確信をもって応える。
木材や石材に刻印を施す事で元の材質からは想像も付かない程の強度を持たせるのが王国の様式であるのに対し、連邦は魔術によらない科学的な技法によって均一な製品を作り上げてくる。
常識そのものが異なるのだから建物1つとっても大きな違いが生じるのは当然といえばそれまでなのだが、その両方に通じる特徴を持った“目標”双方の技術を纏めて極めた先にあると考える事も出来るのだろう。
故に――王国でも開ける事が出来るのであれば、連邦でも解析出来る筈。
「……では、竜士様はコレを開ける事は出来ますか?」
「――――ふむ」
そんな飛躍した思案の中に投げ掛けられたラフィーアの問いがグランを現実へと引き戻し、目の前の扉へと意識を向けた彼は“霊廟”での思い出に考えを巡らせる。
目の前にある扉は“霊廟”にもあったモノだが、そこにあった4枚の扉は既に破壊されていた。
否。正確に言うのなら『竜によって破られていた』になるのだが――。
「時間が掛かるのは確かだろうな。――“霊廟”にあったこの材質は、竜剣を弾いた」
グランがかつて試した事のある結果を質問への答えとすると、周囲を警戒していた部下達がぎょっとした表情で彼を見る。
「……竜から賜った剣を前にそう長く持たせられる訳ではありませんが……まぁ、強引に開ければ静かになった“塔”を起こしかねないという危惧もあったのでしょう」
「連邦にも竜騎士は居るが、あえて実行しなかったという事か?」
「……もしくは、連邦の竜騎士はそれを許される程の信用が無いのかもしれません」
「――――」
ラフィーアの予想は不憫な彼等への憐れみが含まれていたが、敵側の落ち度は此方の利であり――。
「――どう考えたとしても、“目標”の封印は守られたままと言う事か?」
「……幸いにも、そういう事のようです」
ラフィーアが挙げていく状況証拠を纏めたグランの確認に、副官は肯定的な言葉で応じる。
「――――」
“霊廟”がそうであったように“目標”もまた知識と技術の宝庫である事に間違いはなく、たとえ理解が及ばなくとも自分達より前に居る存在を知るという事は自分達を高める良い材料になる。
故に、今回の偵察に躍進を続ける連邦の原動力を探りたいという意図があるとグランは考えており、それが『判らなかった』事に変わりはないが、先の会戦でザックバール派遣軍を砕いた技術の出所がここではないと知れただけでも十分な成果になるのだろう。
「……竜士様。……私個人としては一度開けて中を確認したのですが、再施錠するまでに襲撃を受けてしまえば連邦に利する事になってしまいます」
「だが、中身を見れれば連邦が本当に開錠できなかったのかを確認する事ができる上、“目標”の内情を更に詳しく把握できる、か。――開放したとして、再施錠にどれだけ掛かる?」
「………………障害がなければ、3分程で」
ラフィーアからの危険を伴う提案にグランが理解を示すと、彼女は幾ばくかの熟考の末に指標となる数字を述べる。
示されたそれは平常においてはかくも短い時間であるが、戦場においては永遠にも等しく思える場合もある時間である。
「――――」
しかし、この場合においては時間そのものが問題ではなく、予想できない何かが起こる危険性こそが判断すべき事なのだろうとグランは認識する。
「――――許可する。開錠してくれ」
「……了解しました」
その可能性を踏まえた上で、情報を確定させる事のできる事実と自らの好奇心に従ったグランは実行を命じ、彼と同じような“感情”を発していたラフィーアもまた満足気な言葉と共に扉の端に備え付けられている操作部へと移動する。
「…………我は咎人、なれど古の理を望む者なり」
その先で唄うラフィーアの言葉は魔術的には何の意味もない詞であるが、彼女が行うそれはこの年若い才媛が全力を傾けている証であり――その成果が扉に走る光となって現れ始める。
『――スカイクラウン06が応対します。スカイクラウン01管理者、ファスエル発行の認証キーを受信。運用権限レベルEまでを許可』
「――っ、なんだ?」
そんな淡い光と共に響いた硬質な声に驚いたグランは“目”を振り、部下達にも動揺の“色”が見えた彼は警戒を強めながらラフィーアの背後に走り、それを背に庇いながら周囲へと視線を飛ばす。
「……“塔”の声です。……管理者や端末を持たないモノがよくやるとの事ですので――多分、大丈夫の筈です」
生物が発しているとは思えぬ声質にどよめく周囲の騎士達をよそに、一人冷静なラフィーアは解錠作業を続けながら魔術と詞を紡ぎ続ける。
『指示内容を受信中――第1層の隔壁への干渉を許可します。尚、当機の旧管理者、シグスが設定した規定により自動開閉機能を封印されております。開閉を希望される場合には独力でのご対応をお願いいたします』
何の変化もなく続けられる硬質な声に顔を上げたラフィーアは扉の前へ歩み戻り、今度はその巨大な構造物へと手を伸ばす。
「……御(ON)」
そうして幾ばくかの集中の末に紡がれた祝詞を切っ掛けに、幾つもの魔法陣が開いては左右に移りを繰り返し――扉の隙間から溢れる光が増していく。
「凄いな」
「……褒めても何も出ませんよ」
鍵を持っていたにせよ魔導騎士では取っ掛かりすら掴めなかった扉を操るラフィーアの姿を前に、グランは素直な称賛を送るものの時折ひねくれる彼女は素っ気のない言葉で応じる。
「そうか。――だが、この場にいる他の者では出来ない事に変わりはない」
「…………これで、最後です」
その難儀な人間の風習にグランが言葉を重ねる中、明るい“感情”を滲ませたラフィーアの言葉を合図に扉の閂と思しき4つの構造物が広間の側へと飛び出し、拘束を解かれた扉がゆっくりと上がり始める。
「……動かした感じでも、開けた形跡がありませんでしたが……はてさて、本当の所はどうなのでしょうか」
埃と錆び屑を振るい落としながら動く扉の先にはこれまでと同じような暗がりが広がっており、ソレを前にしたラフィーアはありもしない懸念を口にしながらその先へと“好奇心”を向けた。
2022/8/13 Ver1.0:実装




