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竜の息子と鬼の弟子、魔術と機械の世界で出会い、そして――。  作者: サーデェンス・ロー
銀緑の少女を護るモノ  (転)
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01-27 一騎当千(後)

01-27 一騎当千(後)

Ver1.0




 サウスゲートの南西に築かれた砲台群を目指し、死を告げる風が市街を縫い進む。


「――――」


 風は連邦兵では抗ずる事の出来ない死を振り撒きながらも意思を持ち、その行先にいる彼等を無視してすり抜けるか、微かに留まり殲滅するかを選びながら南西へと駆けて行く。


 風が抜ける町並みは王国側のそれと変わりなく、“構造強化”を施された木材や石材で組まれたそれらは『人間の世界』に慣れない彼をしても見慣れた景色であった。


「王国側の生き残りは――この町には居ないのだな」


 しかし、王国側のそれとは異なる建設方式の建屋が見え始めた事でようやく立ち止まった風――グラン・サウスココルは見慣れたその町並みに対する余分な感傷(きづき)を零す。


 グランの周囲にある家々からは“刻印”の残滓(まりょく)が薄っすらと見えているのに対し、彼の視線の先にある連邦製の建屋は何の魔力も発していない。


 加えて、普段であれば周囲の町並みと一緒に見えるもの――グランに馴染みがある人間の残り(まりょく)を感じる事も出来ず、南方街道沿いに見える連邦製の建屋からも何の“魔力(いろ)”も見えない事から、彼は世界に自分しか居ないような錯覚を感じていた。


 今回の戦端が開かれる以前――第2次(サウスウート‐サウストザックバール)会戦の折、王国側がサウスゲート外苑まで連邦を押し返してから両国は攻勢を停止して休戦期間に入ったとの事だった。


 しかし、10年の時を経て再び主を失った家々を前にしたグランは『こんな危険な場所に戻ろうと思ったのは何故だろうか』と居なくなったこれらの持ち主達の事を想い――。


「――――?」


 同時に『ここを離れた人々はどうしているのだろう』という純粋な疑問を抱いた彼の耳に微かな声が届く。


「王国軍の奇襲部隊は東側に主攻線を移したと思われる!」


 微かに届く声を辿り、グランが警戒しながらその発生元へと近づけば整列している連邦兵と幌を張った荷台を連結した車両群がその目に映る。


「よって、我々は直ちに南東部へ急行、襲撃を受けると思われるウエストフォーの防衛に当たる。――各員は対装甲戦闘に備えるように。乗車!」


 洩れ届く指揮官の口上から察するに、彼等は南東部の砲台群を襲撃しようと動いている部下(ラフィーア)達に差し向けられる敵の増援とグランは認識する。


「――逃がせないな」


 連邦の呼称で『ウエストフォー』という名前らしい砲台群(もくひょう)を突破した後、南方軍の指示から逃れるべく市街に潜伏するようにとグランはラフィーア達に命じていた。


 そんなラフィーア達にとって対装甲(きりゅう)戦を意識した歩兵との市街地遭遇戦など悪夢以外の何物でもない事から、グランは視線の先に居る連邦部隊の排除を決定。


 “遠見”の先でに居る邦士官が訓示を行ったのを見届けてから数十秒後――走り出した車両の操縦席の上へと飛び乗ったグランは騎士剣を天板(あしば)へと差し込み、『中身』を引っ掻き回すようにそれを捏ね回す。


 戦車の装甲をも切り裂く騎士剣を生身の人間に向ければどうなるかなど考えるまでもなく、足場とした車両が安定を失いながら加速を始めたのを確認したグランは後続(つぎ)の車両へと襲い掛かる。


「――行かせる訳にはいかないからな」


 確固たる意思(ことば)と共に同じ手順を踏んだ2両目の車両も暴走を始め、それらが王国製の住宅――まだ“構造強化”の“刻印”が生きている頑強な(それ)――へと突っ込んだのを見届けたグランは、中の兵員を開放しつつある3両目(さいご)へと急襲する。


 連邦兵は散開されれば厄介極まりない存在となるが、密集しているのであれば王国の兵と大した差はなく――一息(ひといき)で間合いを詰めたグランは、まだ混乱から立ち直っていない彼等を迅速に切り捨てていく。


「――18」


 そうして3両目の兵員を残らず斬り殺したグランはこの場での生き残りを片付けるべく身を翻し、先程暴走し走行不能となった車両が牽いていた幌荷台へと突入する。


 足を踏み入れた直後に騎士剣を薙ぎ払う事で比較的無事だった敵兵の大凡を切断し、倒れ伏していながらも反応した生き残りを刺突によって仕留め、これと同じ手順をもう1両分行う。


「――やはり、遮蔽物の多い場所に居る魔導騎士は手に負えんな」


 襲撃を終え、その戦果を記憶(ことば)としたグランは刀身に微かに残る血を振り捨て、魔力を通す事で再び切れるようにした騎士剣を鞘に収めた彼は自分の所業(せんか)を前に知識でしかなかった戦訓を自分のものとする。


 屋根の上の死角や路地の隙間にいるただの1人によって100近くの兵員が一度に失われ、それはその1人の魔力が尽きるか討たれるまで続けられる。


 連邦側の指揮官として考えてみれば悪夢という他ない状況を前に、魔導騎士という戦力の厄介さを再認識したグランは自らの経験をその記憶にしっかりと刻み込む。


 同時に、『そろそろ自分の目的を果たさなければ合流に間に合わないかもしれない』と思い至った彼が踵を返そうとすると、硬い何かが引っかかる。


「これは……?」


 それは北方で自分に傷を負わせた因縁の火器であり、ノース・クラウでラフィーアから教わった所作に倣って引き金を引けば轟音と共に砲火が噴き上がり、銃口の先にあった車両に大穴が空く。


「――使える……か?」


 座学で使い方を習った事しかない武器であり、戦場に不確定要素は入れない方が良い事はグランにも判っていたものの、遠距離からの攻撃手段が有ると無いとでは取れる選択肢が違い過ぎる事も彼は理解していた。


「――――使えなければ捨てればいいか」


 黙考の末に長銃を手に取ったグランはそんな呟きを残し、砲台群(もくてき)に向かって走り出した。






「――戦車が出払っているという情報は、確かなのだろうな」


 肉眼でも南西の砲台群を確認出来る距離まで近付いたグランは、自らの目で確認した事実を思考に刻むべく言葉を洩らす。


 資料にあった南西側の砲台群は先程墜とした北西側と同じ様な構造をしていた筈だが、その内側から見えるのは数多くの対空砲や弾薬庫と思しき建屋だけであった。


「――――」


 防護柵もない広間の先にあるその陣地からは外側のような威圧感を覚える事は出来なかったが、グランは遮蔽物が何もない広間の先にあるそれを難敵と認識し、その攻略法を思案する。


 防壁の内側に据え付けられている対空砲は見慣れた機銃の他に空に砲身を向けた戦車砲のような物もあり、対空戦車も3両が警戒に当たっている事から連邦側が竜騎の事を如何に警戒しているのを窺い知る事が出来た。


 しかし、グランにとって開けている場所では対処出来ない戦力である(どうしようもない)戦車の姿は見えず、空を向いた戦車砲(みちのへいき)もいきなり水平を向くような事は無いだろうと彼は考える。


「――竜血石に鱗鎧を重ねた此方の守りを抜かれるのは、外側の砲や上を向いているあの砲ぐらい――単純だが、突っ込んだ方が早いか?」


 策を弄する事は悪い事ではない。


 しかし、その工夫とは裏腹に単純であればあるほど作戦の強度は高くなり、十分な戦力も重なれば敗北の目は出にくくなる。


「――行くか」


 そうして方針を纏め上げたグランは近づくまでは出番のない騎士剣ではなく先程鹵獲した長銃(25mm)を構え、“身体強化”を巡らせながら建屋の影から防壁へ至る更地へと飛び出す。


 走り出したグランが最初に狙うのは操作する連邦兵が剥き出しとなっている上向き戦車砲であり、見様見真似で構えた25mmを“身体強化”の膂力で固定した彼は銃の上側に付いた印に敵兵の姿が映った瞬間に引き金を握り込む。


「――っ」


 グランが鹵獲品(25mm)に求めていたのは騎士剣の間合いに入るまでの足しになれば良いという程度の期待であったが――その威力は、中々に強烈であった。


 銃器に疎いグランの射撃精度は望むべくもなく、走りながらの発砲はその狙いを更に粗末なものとする。


 しかし、人間を撃つには過剰に過ぎる25mm弾体は掠めただけでも人体を抉り、連邦兵からすれば聞きなれた砲音が予想外の方向から響いた事に敵兵達は混乱し、グランにとっては予想外の好機すら訪れる。


「――――」


 その混乱の中、(うえ)ではなく自分の方を見た連邦兵へと狙いを移しながら走るグランは、今更のよう彼等が作る兵器に恐怖していた。


 グランが成している事は銃口を危険度の高い敵に向け、銃器(これら)を扱う連邦兵を真似て指を動かしているだけ。


 そこには剣技や魔術のような技量はなく――ただ指を動かすだけで1人の人間が死に、長銃の駆動部を操作するだけで次の(たま)が銃身に装填される。


 王国の魔石銃も連邦製の銃器と同じく誰でも使う事が出来る武器であるが、グランや魔導騎士には防ぐ術がある魔石銃の事を脅威と感じていなかった。


 同時に、戦車等の兵器は機竜と同じ分類であり、元々が人間1人で抗ずるものではないと認識していた事から別の脅威として認識していた 。


 しかし、こうして連邦製の兵器を自分の手に取って扱えばその威力は筆舌に尽くし難く――その『便利さ』を前にしたグランは恐怖にも似た震えを感じていた。


「――こんなにも簡単に殺せるとはな」


 そんな思案の中、弾丸を使い切った長銃を投げ捨てたグランは騎士剣を抜きながら“身体強化”の魔術を強め、砲台群(もくひょう)の下へと間合いを詰める。


 その最中、流石に何発かの弾丸がグランを叩くものの、竜血石と鱗鎧は『戦車砲を受けても原形を保てる』と豪語したラフィーアの言葉通りの防御力を発揮する事で彼の足を止めさせない。


「――――今の此方も大概だな」


 機竜にすら損傷を与える25mmを受けても衝撃を感じるだけという自らの守りに対し、そんな自嘲を零したグランは魔導騎士(いまのじぶん)の本懐を開始する。


 まず、動かれると厄介な3両の対空戦車の足回りに深手を与えたグランはそれらを遮蔽物として利用し、次に自分を狙う火砲を無害化した彼は最後に生き残っている敵兵切り捨てていく。


 そうして徐々に静かになっていく狂騒の中、防壁の外や砲台群に通じる通用口をも切り潰したグランは要塞砲を目指して防壁を駆け上る。


「――内側からなら、こんなにも脆いのだな」


 艦載機竜隊(じぶんたち)の全力を出し切る事で漸く無力化した同規模の砲台群が、自分1人によって無力化される。


 そんな事実を前にしたグランは『強固な要塞も想定していない状況に耐えられない』という新たな常識を記憶に刻みながら登り切った防壁に配されている要塞砲の天蓋装甲に着地し、下段に構えた騎士剣の横薙ぎによって長大な砲身を根元から切り落とす。


「終いだ」


 返す刃で自らが乗っている天蓋装甲を深く切り裂き、防壁に降りる序に砲塔の基部に至るまでを深く切り裂いたグランは懐から出した信号弾を宙に放り、騎士剣の峰に当て打ち上げる事で青弾を空へと打ち上げる。


 本来の用途からは大きく外れた使用方法であったが、魔導の粋はその効果を発現する事でサウスゲート南東の空に青い煙を咲かせ――自らが目的を果たした事を告げるそれを確認したグランは手早く防壁の内側へと滑り降りる。


「――後は……」


 そうして大地に足をつけたグランは今し方蹂躙したばかりの対空陣地を見渡し、襲撃中から目星を付けていた場所へと走り出す。


 連邦製の兵器は利用価値が高い。


 身を持ってそれを理解したグランは襲撃時に使った長銃よりも長くがっしりとした銃――機竜が使っている25mmを連結したようなもの――に近づき、地面との接続部を切り飛ばすと自分の身の丈ほどあるもそれを担ぎ上げる。


「――中々に重いが……あとで片方だけにすれば苦も無く使えるか?」


 そうして鹵獲品の持ち具合を確かめるグランは騎士剣を仕舞い、東へと走り始める。


「――――副官が25mmを欲しがるのも、同じ理由なのだろうな」


 その最中、目的を果たした事で余裕の出来た頭に今し方生まれた気付きを放り込んだグランは、ずいぶん前から気になっていた疑問への推察を呟く。


 機竜の対戦車兵器として左腕に括り付けられている25mmは連邦の対空戦車のそれを鹵獲・転用した装備であり、王国では整備は出来ても製造する事が出来ない装備である。


 その所為なのか王国内の25mmを執拗に探し、意地でも確保しようとするラフィーアの姿勢をグランは理解出来ていなかったのだが――自分も同じような行動を起こした事で漸く理解が追いつく。


「王国は連邦の火器(これ)に恐怖し、連邦は王国の魔術を恐れている――か」


 建物の影から影へと走る事で敵との遭遇を避けつつ部下達との合流を目指しているグランの思考は、その単調な行軍の末に自らが抱いていた最大の疑問へと手を伸ばす。


 グランが零した言葉は王国内に蔓延(はびこ)っている想いであり、王国と連邦が幾度となく戦力喪失による休戦を挟んでも尚戦いを止められない理由にして、彼が未だに理解できない感情(りろん)であった。


 『敵は敵でなくなるまで殺し尽くす』


 それは竜の里でも共通する認識であり、グランとしても恐れを抱く程に尊敬できる火器(もの)を作る連邦(そんざい)が相手であっても排除する事に迷いはない。


 しかし、戦いを止める機会があり、その相手が自分達とは方向性の異なる優れた者であるのならそれを機に諍いなど止め、協力する術を探せばより良い『何か』を作れるかもしれないのに何故また戦火を開くのだろうという疑問がグランの中に残り続けていた。


「――――」


 自分の動機が奴への復讐である以上、戦いによって生まれた因縁や遺恨はグランにも理解できる。


 だが、殺している以上は自分も殺されるのが当然の節理であり、自分も奴が竜のシキタリに反しない方法でグゥエルナーを殺していたのならば人間の世界に留まる事もなく、師と共に魔素の空に還れたのだろうとグランは思う。


 しかし、現実はその軌跡を描かず――結果としてグランは奴を討つまで止まる事が出来なくなり、その身体が動く限り里のシキタリを果たすべく奴を追い続ける未来しかなくなってしまった。


 それに対し、今戦っている人間達には幾つかの選択肢があり、停戦や終戦(じかんぎれ)となればグランのように『相手を殺す事を許されない状況になってからも仇を果たして自分も罰で死ぬ』か『想いを果たせずに恨みを募らせながらも罰に触れる事なく寿命で死ぬ』事を選ぶ事が出来る。


「――――まさか、な」


 そうして自分と他の戦人(にんげん)との比較を終えたグランの脳裏に1つの気付きが走り、そのあまりにも身勝手な予想に彼は自らが至ったそれに否定の言葉を重ねる。


 互いが力尽きても尚戦火が収まらないのは『自分達が満足した状態で終わらせたい』という欲に突き動かされての行動であり、自分が罰に触れない状態で相手を殺し続けたいという贅沢の結果である。


「――っ」


 思案の末、知らず知らずのうちに王国の禁忌に触れていたグランは唐突に表れた“色”に驚き、つんのめるように足を止める。


「こんな所に……?」


 そのまま近くの物陰に潜んだグランは“遠見”によって唐突に表れた無数の“感情(いろ)”を探れば、思ったよりも近くに人間の列が形作られているのが見えた。


「――やはり、掴み難い…………?」


 これほどの大軍に近づいていた危機(こと)をそんな愚直(ことば)で塗りつぶしながら索敵を続けるグランは、ふと感じた違和感に“目”を凝らす。


「――――まさか、これらの大半は戦人ではないのか?」


 “目”に映る“感情(いろ)”は怯えの“色”が強く、“遠見”で群衆の様子を確かめてみれば武器を持っているようにも見えなかった。


「――――」


 その事実を前にしたグランは、静かに黙考する。


 彼等は艦載機竜隊(じぶんたち)の攻撃目標ではなく、そもそも軍規による民間人の保護は交戦対象にも適応される。


 更に言えば貴重な弾薬や集中力を消費してまで戦力外であるそれらを害する意味はなく――唐突に表れた数に驚きはしたものの、それらに関わる必要はないとグランは結論付ける。


「……余計な手間を掛けさせてくれるものだ」


 そのまま地上を走れば群衆を掻き分ける事となり、此方に攻撃の意思がなくとも大混乱が起こるのは必至。


 そんな推察の下、群衆との接触自体を避ける方針を固めたグランは人間の(それ)を飛び越えるべく底が見え始めている保有魔力を使い潰す勢いで魔術を組み、大跳躍を成す。


「――市街に近い場所への急襲は面倒事を引き起こす可能性もある、か」


 その飛翔――ラフィーアの“風舞”すら真似て高度を伸ばした空の中、グランは眼下に見た光景を言葉とする事で今得た経験を記憶に刻む。


 同時に、戦に長けたその頭脳は自軍基地と人民の居住地を重ねれば面倒(それ)を敵に押し付けられるかもしれないという非情な策を脳裏に過らせたものの、『市民の盾である』という軍の基本理念や『道義』にも外れるであろう考えを、グランは(かぶり)を振って打ち捨てる。


「――――――此方は、人間には馴染めないのかもしれないな」


 着地の衝撃に震える足を前に出し、速度を緩めぬまま思案を区切ったグランは目をそらしていたもののずっと張り付いていた諦めを想う。


 理論を尊び、規則(シキタリ)と損益が『正』となるならばどんなに非情な選択をも受け入れる里で育ったグランにとって、理を考慮しつつも道義や感情に重きを置く『人間の世界』は何をするか判らない外竜に溢れた世界のようだと感じていた。


 そう――理論に緩みがあるという事は個々の判断によって結果が変わってしまうという事であり、理の無い者が付け入る隙があると言う事になる。


 グランから見れば、それは好き好んで諍いの種を残しているように見え――その最たる例は彼が『人間の世界の指標』としているラフィーアにあり、自分よりも聡明で判断力に優れた彼女もまた感情に重きを置く場合があり、それは往々にして争いを連れてくる。


 グランとしては降り掛かった面倒事以上に見ていて飽きないラフィーアの“耀き(いろ)”を好ましいと感じているもののそれは個々の考えであり、見る者が違えば彼女の行動は和を乱す罰となり、あの少女を消したいと想う者もいるのだろう。


「どちらにも、認めるべき理があるのは確かなのだがな……」


 ラフィーアは自身の尊厳や自由を守るべく無理をしているのだとグランは感じ取っているが、『人間の世界』ではそれを周知させる事は出来ないらしく――知らずに慣習を守る他の人間達は、容赦なく彼女の逆鱗を踏む。


「――――人間の世界は、本当に面倒だ」


 自己(かんじょう)慣習(かんじょう)のぶつかり合いはその本質が互いの正義(どうでもいいこと)である為に不毛の一言に尽き、法の網を抜けてしまった時点で収拾がつけられない。


「――本当に、面倒な話だ」


 里よりも多くの(シキタリ)がありながらも『人間の世界』にはそれ以上の事例があり、それらを判断する裁定者はさぞかし大変なのだろうとまだ見ぬ同業者の事を憂いたグランは終点わりが見え始めた思案を宥めながら足を早める。






 里でもそうであったように、竜の(グラン)は人間の行動には理解出来る正しさがある事を信じていた。


 だが、外竜にも感じた事のある一片の正しさすら見出せない行動をとる人間もいる事を――竜の友は思い知る事になる。


その戦力、まさに人間サイズのヴァンツァー。(ただし、まともな火器はない)

1940年代の装備で市街地に居る彼をどうにかしろというのは無理な話であり、妥当な結果です。



2021/04/03 Ver1.0:実装

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