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竜の息子と鬼の弟子、魔術と機械の世界で出会い、そして――。  作者: サーデェンス・ロー
砂地を駆ける為に     (承)
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01-17 休暇の使い方

01-17 休暇の使い方

Ver1.1




 ――――その大きさを、今でも覚えている。


 その時に自分が居た場所は――そう、ジャルダイム大陸の中央よりやや南方。竜の里と接する、南方(サウスココル)領の最北端。


 当時の自分はそこで山菜採りに従事しており、幾つもの傷が残る手で長草をかき分けながら食料(それら)を探し歩いていた。


 精強な軍と広大な農地(りょうど)を有しているものの経済的には中央や北と比べるべくもないサウスココルの農村に学校などある筈もなく、物を持って歩けるようになればアースラー山脈に向かって日々の糧の足しを探すのがこの辺り幼子の日常だった。


 その扱いに『子供である』という甘えはなく、成果がなければ食事を減らされ、同じように山を捜し歩く同年代の子供がある日を境に居なくなるような日々。


 そんな世界(それ)しか知らぬ当時の幼子(じぶん)は、それを不幸と思う知識もなく、改善しようとする意思もなかったが――『思考の無い人形』の様に地面を見て歩く自分の顔に、ふと影が差す。


『――竜、気質』


 驚いた幼子が顔を上げれば、同じように視線を巡らせた影の持ち主と目が合い、言葉と共に首を伸ばしたソレが近づいた事で自分を隠す影が濃く広くなる。


 するりと伸びる首に細身の四肢、肩から生える長大な翼。


 その影の様に黒い鱗と大地の様に深い茶の皮膜を持つ巨躯は、すなわち――竜。


「――――」


 エクスリックス王国にて神と等しく扱われているソレは確かに神々しく、その青い瞳に見据えられた幼子は凍り付いたように動きを止めていた。


『人間――何故、風髪、土瞳』


 村に住む大人達から友人が居なくなるのは熊や狼に出会った所為だと幼子は聞いていたが、この大きいモノと出会っても居なくなるのだろうかと幼子が未来を憂う中、その脳裏に言葉が響く。


「――――」


 見上げている巨躯は人とは似ても似つかない蜥蜴のような顔をしていたが、何故か幼子はそんな彼が笑ったような気がした。


『――問い。童、此方、来る、否。選べ』


 そして、それに続く言葉は――とても暖かいように思えた。


 幼子が住む村で、自分は『誰でもいい内の1人』であり、村に住む全員が『そうである』ように、それが『普通』だと考えていた。


 今思えば唾棄すべきそれを、その頃の幼子は『それでもいい』と考えていたが――。


 しかし、その人生で初めて選択を迫られた時、理由は判らずとも必要とされる事を嬉しく思った幼子はその問いに前に進む事で応えた。


 その選択が幸せだったのか、不幸だったのかは――きっと、グゥエルナーにも判らない。


 だが、例え死が隣人の場所であろうとも、帰りたいと思える故郷ができた自分は幸せなのだと――。






「――――朝か」


 そうして、ずっと見ていたい夢から目覚めた青年――グラン・サウスココルは呟きと共に身体を起こす。


 窓から差し込む陽光は既に夜の寒気を隅へと追いやっており、グランの視界に映る部屋は穏やかな空気を帯びていた。


 その光に照らされている部屋の造りはグランの見慣れぬものであり、そんな中で目覚めた彼はここに留まる事になった経緯を思い返しながら支度を整えに掛かる。


 2度目となるファルストリア連邦勢力圏内での襲撃を終えたグラン等は母艦へと帰艦し、その母艦であるフライアもまたエクスリックス領内へと入り、今は北部の大都市ノース・クラウへと寄港していた。


 この町は数多の術具を生産する事から『魔導の聖地』とも呼ばれ、その技術力からフライア級の整備拠点の候補地にもなっていた


 今回の寄港もその拠点化を実現する為の技術交流が目的であるとされ、それが済むまでの間、乗員には半舷上陸が許さる事となった。


 与えられた休暇は艦載部隊の人員が先行する形となり、昨日は作戦後の規定行事(しゅくはい)――久しぶりの大都市という事もあって盛大な事になった――を挙げていた。


 その『付き合い』を終えたグランは何故か佐官用に割り振られた宿舎へと案内され、引っ掛かる事はあれども彼がグゥエルナーと死別し(はなれ)てから初めての休暇が始まった訳だが――。


 その初日に降り掛かった夢はグランにとっては中々に最悪な(まぶしい)ものとなり、幸先の悪い始まりとなった。


「――――まぁ、仕方のない事だ」


 その原因は先の戦闘時に使用した“鱗薬”の副作用であり、まだ(くすり)の魔力が抜けていない為に元となった“(まりょく)”に強く結びついた記憶が呼び起こされたのだとグランは自分の状態を結論付ける。


「とは言え――どうするかな」


 日の高さから察するに、時の頃は既に10を越えている事から朝食が許される時間はとうに過ぎているだろう。


 そして、先に述べた生成魔力の不調(ふくさよう)に加えて先日の戦闘で受けた左肩や脇腹の傷の調子も良くない事を考慮に入れたグランは思案を巡らせる。


 早期の復調を目指すのであれば多少無理をしてでも食べなければならないのだが、生憎にも“鱗薬”の副作用の影響は大きく、食欲は少ない。


 結果、昼まで待つ事を決めたグランであったが、それまでの時間を動かせる部位での訓練に充てるかそれとも休息に集中するかで再び彼が迷い始めると、その耳にノックの音が届く。


 来客の予定はなかったと記憶を巡らせたグランが僅かな警戒と共に戸を開けると、休暇中に見る事はないだろうと思っていた銀の色と艶やかな緑の布飾り(リボン)が彼の視界を占めた。


「君か。――なにかあったのか?」

「……いえ、折角の休暇ですので、協力者との親睦を深めておこうかと」


 開いた扉の先からグランを見上げるのは銀髪の小柄な少女――グランの協力者であり、軍務においては彼の部下となるラフィーア・フィルトメルはそう返してから軽く会釈する。


「――――そうか」


 そんなラフィーアの服装はグランの見慣れた軍服ではなく、袖の長い女性用のシャツ(ブラウス)に上下が繋がった緑のスカート(ジャンパースカート)という出で立ちだ。


「……何か、ご予定がありましたか?」

「いや、そういう訳ではないが……」


 その見慣れぬ服装に身構えてしまったグランを訝しんだラフィーアが小首を傾げながら問いを投げ掛けるも、彼にとってはそんな些細な仕草も何故か眩しく、慣れぬ目を守るように視線を逸らす。


「……では、ノース・クラウの町を見て回りませんか? ……良い思い出ではないと思いますが、竜士様達の守った町ですよ?」


 そんなグランの困惑をよそに、ラフィーアは先の会戦を言葉尻に乗せながら彼を外へと誘う。


 ラフィーアの言葉にはグゥエルナーを失った戦いに配慮するような気配が含まれていたものの、それ以外の意図は感じられず――何の目的もなく、ただ自分を外に連れ出そうとしているだけだとグランは認識する。


「――すまないが、遠慮する。……今日は出来うる限りの素振り、もしくは休息に充てようと考えていた」


 それはグランにとって何ら不利益の無い話であったが、そんなラフィーアからの他愛ない要望に彼は断りを入れる。


 『自分に不利益なものでなければ、他者からの誘いは断るべきではない――それが友人であれば尚の事』


 それはグゥエルナーの言葉でありグランもその意味を理解はしていた。


 だが、“鱗薬”の副作用がある今、グゥエルナーの思い出を連想してしまう事から離れたいという思惑があり、同時に今もグランを悩ませている得体の知れない動悸や動揺も考慮に入れてそう判断したのだが――。


「……それはダメですね」

「――?」


 しかし、そんなグランに返された協力者(ラフィーア)の言葉はいつになく鋭く、違和感を覚えた彼が応えを発する間もなく彼女は言葉を続ける。


「……休暇とは、戦場によって固まってしまった感情や感覚を平静に戻す為に必要な緩和薬であり、仕事でするような事をするのは極力避け、可能ならば楽しい事をするべきです」

「――奴を墜とす前に、そんな気にはなれない」

「……それはもっとダメですね」


 その言葉に驚いたグランが思わず本心を吐露するも、ラフィーアはずいと踏み込んで戸を締められなくしながら更に言葉を続ける。


「……何らかの害を成した者は、相手から『報復される義務』を受ける事になります」

「――――」

「……それは、復讐を成した者もまた処した縁者から『報復される義務』を受ける事に外なりませんが……それをしなくては進めないというのであれば、自分の命を賭けて復讐する事は正しい事です」


 自らの指針を否定したラフィーアに反論しようとしたグランであったが、彼が言葉を発する間もなく続いた彼女の言葉は彼の意思を肯定するものであり、思わぬ雲行きに彼は言葉を失ってしまう。


「……ですが、竜晶となった竜は、もう無念を晴らす事しか想えません。……だから、竜士様が知った他の想いを伝えてあげないと、竜――グゥエルナーさんは、『怨念』以外の事を想えません」


 そして、グランの指針を汲んだ形で続くラフィーアの言葉は、竜晶となってしまった盟友を想う『理論』であり――。


「……今の竜士様には貴方の『想い』を待っている存在が居ます。……であれば、自由に動ける者が動けない者を満たしてあげる事が乗り手の努めでは?」


 グランの中にある『奴を殺すまではそれ以外の行動を容認できない』という彼の指針を覆すだけの理論を言い切ったラフィーアは、応えを待つようにグランを見上げる。


「――まるで自分の事のように、口が回るな」

「……竜に関わる事で後悔したのに関しては、私の方が先ですもの」

「――――準備をする」

「……はい、お待ちしております」


 そうして口では敵わぬ事への『負け惜しみ』にも理性的な言葉で返したラフィーアにグランが降参する(ねをあげる)と彼女は身を引き、軽い会釈の後に扉を閉める。


「――――やはり、言われた通りだな」


 その閉じられた扉の木目を見ながら、グランは疲れたような吐息を洩らす。


『“姫”を言い負かせるとは夢にも考えない事だ』


 それは事あるごとにグゥエルナーが零していた言葉であるが、それを共感できなくなってから自分に降りかかった事を寂しく思いながら、グランは壁に掛けていた外衣(サーコート)に袖を通した。






 日は高くとも気温は低く、ほのかな暖かさを伴った風がまだ青々としている麦畑を揺らす。


 そんな昼前の頃、遠くにノース・クラウの町並みが見える基地からの小道に2つの人影が緩やかに歩を進めていた。


「……北部は海の匂いがすると聞いていましたが、そんな事はないのですね」

「――ここにアレが来るのは北から風が吹く頃だからな。……秋頃までなら南や中央とそう変わらなかったと思う」


 その人影の前の方。少し前を進むラフィーアの呟きに、グランは子供の頃の記憶を思い返しながらその答えを送る。


 ラフィーアの言う潮の香りとは北海から吹き込む海風であり、この地に塩害をもたらすソレは農家を悩ませる厄介者であるとグランが続けると、彼女は意外そうな顔でグランを見上げる。


「……詳しいのですね」

「――ああ」


 そうして視線と言葉を交わしてしまうと、グランを導くように進む銀と緑の色がいやがおうにも目に留まる。


 今のラフィーアの出で立ちはいつもの服装(ぐんぷく)よりも肌の露出が少ないものの、胸元が大きく開いたジャンパースカートの意匠はその下に着ている白いブラウスを強く強調しており――グランの感覚で語るのであれば、とても眩しすぎる服装であった。


「――――」


 魔導鋼線を使っていないその装い――中央や北で子供の頃に見た事のある服装ではある――はラフィーアの事をふんわりと包んでおり、小さな所作でも揺れるその動きに眩んだグランは目をつむる。


「……強引に連れ出してしまいましたが、竜士様の方が詳しいかもしれませんね」

「――それは判らないよ。此方も懇意にしていた商人の護衛で何度か訪れただけだからな」


 とは言えその内情はグランの都合であり、会話をしている最中に目を閉じ続けるのが失礼である事を理解はしている彼が恐る恐る瞼を開ければ、歩みを進める度に揺れる銀髪とそれを縫い留める緑の布飾りが彼の目を縫い留める。


「――――人間の世界は不思議が多い」


 グランの目に映るラフィーアの端々は何の変哲もない物理現象の筈だが、彼の目はそれらをとても愛らしいと認識しており、“霊廟”の記録で見た妖精のようなそれに耐え兼ねた彼は再び眼を逸らす。


 そうして逸らした視線の先にあるのはグランが知る限り最も発展している町並みであり、中央(エクストーラ)よりも発展していると噂されているのも頷ける光景が広がっていた。


「――町は、変わらないんだな」


 その情景はグランが竜騎士となる前――彼が懇意にしていた商人の護衛として訪れた頃と変わりがないように見て取れ、ラフィーアが向かうと言っていた商業区画の方も賑わっているのだろうと彼は当たりを付ける。


「……言語系の造詣の深さといい、竜士様は博識ですね」


 そうやって現在の眩しさに目を背けて過去に目を向けていたグランであったが、目の前にある今が彼を放っておくれる筈もなく、ラフィーアの問い掛けは青年の視線を現在に向けさせる。


「――此方としては、竜の魔術陣を真似られる君の方がよっぽど凄いと思うが」

「…………えっと――そうですね……」


 そうして投げ掛けられていた賛辞に対し、余裕のないグランは何の考えもなく本心で応じたものの、賞賛を返されたラフィーアは何故か言葉を濁す。


 ラフィーアが迷いを見せたのには理由があり、グランがまだ認識していない事だがエクスリックスの識字率はそれほど高いものではない。


 それは読み書きが出来るという事だけでも安定した職を持てるという事実に外ならず、なんの前置きもなく報告書(おうよう)をする事が出来るグランは『かなりの秀才』として位置付けられるのだが――。


「…………ままにいかないものですね」


 人間の世界(エクスリックス)にある種の幻想を抱いていると思しきグランにその事実を突き付けていいものかとラフィーアが迷う中、穏やかな小道の空気にヒビが入る。


「――何だ?」


 それは大気に満ちる魔素の違和感であり、唐突に走った頭痛(それ)にグランは“目”を走らせるがその魔術が見せる世界に敵意や害意の“色”は映らなかった。


「……魔素と、魔力の乱れ……? ……っ、竜士様、耳を塞いで竜血石に――」


 しかし、それでも警戒を訴える“目”に従ったグランはラフィーアがなにかを言い終えるよりも早くに行動を起こし、自分の目的に必要な(ラフィーア)をひったくるように抱き寄せ、自らの腕の中に隠す。


「――っ」


 次の瞬間、榴弾が爆発したような衝撃と共に遠くの町並みから空に向かう光が撃ち上げられる。


「なんだ……? 攻撃?」

「…………いえ、場所からしてクラウサラン公爵の魔術学校のようですね。……炎息(ブレス)の模倣実験の失敗でしょう」


 グランの腕の中にいるラフィーアは遠くを見るように目を凝らし、その視線の先にある一際大きな建物に視点 を定めた彼女はそう断言する。


「……ありがとうございました。……今更ですが、竜士様もやっぱり騎士様なのですね」

「――? っ、済まない。非常時かと思い、とっさに――」


 衝撃の原因を突き止めたラフィーアの言葉により、自分の仕出かした事を認識したグランは大慌てで彼女を離し、身を正す。


「……いえ、弱き民を守るのは騎士の務めであり……私の事をそう認識してくださるのは、嬉しい事ですよ」

「――――そうか。なら……ああ、以後気を付ける」


 結果的に勘違いではあったものの、グゥエルナーの言った『相手が女性であっても必要な時ならば触っても良い』という手足や背中(ぶい)以外には触れておらず、当のラフィーアが帯びる“色”からも『問題とはならなかった』と判断したグランは安堵と共に自分を戒める。


「…………?」


 そんなグランを前にしたラフィーアはその対応の硬さに疑問を覚えたものの、『今の件』を『そう割り切った』グランは既に意識を改めており、“遠見”で光の出元を確認する。


「――随分と、人がいるんだな」


 強化されたグランの視線の先に居るのは照射元と思しき建物前の広場で慌てている人間達であり、その中心にある術具もまた大砲のように巨大で複雑な代物だった。


「あと、大仰な術具も使っているが――それにしては威力が弱い」


 そうして観察を続けていたグランは、最後に素直な感想を口にする。


 実際の威力の程は計りようがないものの使用された魔力の強弱を察する事は可能であり、あれだけの準備を持って発現された炎息にしてはラフィーアのソレと大差が無いようだとグランは感じた。


「……人の身で炎息を成そうとするのは、それだけの手間が必要なのですよ」

「――――」


 そんなグランの呟きに対して引っ掛かりを覚える補足で応えたラフィーアに、彼は思案を巡らせる。


 “遠見”で確認した魔術学校の光景は炎息を使用する為の準備がいかに煩雑で、多くの手順を必要とするのかを示しているように感じられた。


 ならば、それを魔石銃と布飾りという僅かな手段を用い、僅か1人で炎息を発現させられる協力者(ラフィーア)は何なのだろうと考え至った所で、グランの脳裏にいつぞやの光景が()ぎる。


『…………私が竜の炎息を真似た事は、疑問に思われないのですね』


 それはこの前の決闘(そうどう)の後にラフィーアが零した言葉であり、その時の彼女の不満げな“色”も加えれば、看過できない冷や汗がグランの背中に浮かび始める。


「――――まさか」


 あの時のグランが知る由もなかったとは言え、人間が成すには難しい偉業(まじゅつ)への感想をわずか一言で済ませてしまった事に気付いた彼は恐る恐るラフィーアの方へと視線を向ける。


「……竜士様が私を正しく評価してくれるようになったのは、幸いですね」


 その視線の先に居るラフィーアは、協力者(グラン)が自分を見る目が変わった事を察してかその小さくない胸を張り、したり顔の混じった微笑みを返していた。


「済まなかった。此方は君の研鑽を正しく評価していなかったようだ」


 そんな希代の魔術師(?)(ラフィーア)を前にしたグランは素直に頭を下げる。


 幸か不幸かグランが初めて会った魔術師は人間の中でも稀有な技量の持ち主であった。


 故に、ラフィーアを人間の魔術師の基準として定めてしまったグランはこの世界での判断基準に盛大な勘違いをはらむ事になった訳だが――その間違いに気が付いた彼は、その研鑽を蔑ろにした無礼を真摯に詫びていた。


「……私も、竜士様の真価を知らずに軽んじているかもしれません。……頭を上げてください」


 そんなグランに対するラフィーアの声は穏やかなものであり、許された彼は“目”を閉じながら自分の目で彼女を見る。


「人間が使う魔術の事を、教えてくれるか?」

「……はい、喜んで」


 間違いを起こし難くする為には正確な知識が必要であり、それを得る為に発せられたグランの乞いにラフィーアは穏やかな微笑みと共に了解を示す。


「――――人間の世界は、本当に不思議が多い」


 それはただの表情の変化。


 しかし、その所作1つに揺さぶられる自分の感情に疑問を覚えつつも、グランはそんな呟きを洩らしながら空を見上げた。



お読み頂き、ありがとうございます。

ブックマークや評価は執筆を加速させる燃料となりますので、よろしければお願い致します。


2020/07/05 Ver1.0:実装

2020/09/18 『幕間』実装に伴う配置変更を実施。

2021/03/25 Ver1.1:プロット確認・調整のついでに行った誤字脱字及び調整を反映

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