↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非正規転生 ~転生したけど最弱スキルすらもらってない~  作者: KEI
第18話 神託が降りる場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
95/115

(八)向こうが見つけた

◆ (十七)信じることと理解すること


「やはり、あなたはそう言うのですね」

「神官長は知っていたんですか」

「いいえ」


エルネストは首を横に振る。


「私は、そう疑っていただけです」

「女神の姿を見たのに?」


リナが尋ねた。

エルネストは、ゆっくりうなずいた。


「姿を拝したことと、この場所の仕組みを理解することは別です」


理人はエルネストを見る。


信仰が揺らいでいるのではない。

見たから信じている。

聞いたから、神託を偽物だとは考えていない。


だが、女神が現れる方法と、神託が返される仕組みについては分からない。

信じることと、理解することを分けている。


「何をするための端末かは」


理人が尋ねる。


「分かりません」

「何につながっているかも」

「分かりません」

「それでも、祈祷をすると女神が現れる」

「必ずではありません」


エルネストは答えた。


「応じられないこともあります。姿を現さず、言葉だけを賜ることもあります」


理人はノートへ書いた。


祈祷に対する応答率、不明。

応答形式、複数。

姿。

声。

文字。

複合あり。


神殿は、長い間これを聖域として守ってきた。

使い方を完全に理解していなくても、儀礼を残した。

原文を記録した。

触れてよい者を制限した。

それによって、壊さずに残してきた。


理解していないから無価値なのではない。

理解していないまま維持したことにも価値がある。


理人はノートへ書いた。


中央神殿地下。

降託の間。

祭壇として運用。

祈祷入力。

古語応答。

女神像出現あり。

実態、入出力装置の可能性。

接続先、不明。

起動条件、不明。


神官長が、理人の手元を見る。


「祈りますか」


理人は首を横に振った。


「まだ、何を問うべきか分かりません」

「多くの者は、それでも祈ります」

「俺は、何も分からないまま問いを送るのが怖いです」

「問い」

「願いも、受け取る側から見れば問いか要求かもしれません」


エルネストは、その言葉を考えるように黙った。

理人は石の台から半歩下がろうとした。


◆ (十八)向こうが見つけた


その時だった。


台の縁にある細い線が、淡く光った。

リナが理人の袖をつかむ。

若い神官が息を呑む。

エルネストは動かなかった。


光は、台の端から中央へ走った。


一本。


次に、別の一本。

分かれていた線がつながっていく。

銀色の点が、一つずつ灯る。

床の線へ光が移る。

壁へ上がる。


どこか遠くで、古い水車が回り始めたような低い音が響いた。

理人は反射的にノートを開いた。


「何をしたのですか」


若い神官が震えた声で尋ねる。


「何も」


理人は答えた。


「まだ触っていません」

「祈祷も」

「していません」


エルネストが小さく呟く。


「向こうが、見つけたのです」


理人は台を見る。


何もしていない。

少なくとも、意識して問いを送ってはいない。

それでも、待機していたものが状態を変えた。


近づいたこと。

見たこと。

あるいは、外から来た自分がここにいること。

どれかを検出した。


台の中央に、細い光の線が浮かぶ。

文字のようにも見える。

神託原文に使われる古い文字と似ている。

だが、単語として並んでいるようには見えなかった。


文字の間に、細い線や小さな点が入っている。

エルネストも目を細めていた。


「読めますか」


理人が尋ねる。


「文字の一部は、古い言葉と同じです」

「意味は?」

「この並び方は見たことがありません」


神託の回答ではない。

少なくとも、これまで神官が受け取ってきた形とは違う。


意味が来る前に、理人には感覚だけがあった。


何かを告げているのではない。

答えを返しているのでもない。

こちらへ何かを求めている。

応答を待っている。


理人は新しいページを開いた。

見出しを書く。


降託の間、初期反応。

接触なし。

祈祷なし。

端末側から反応。

古語類似文字。

既存神託とは配列が異なる。

応答要求の可能性。


筆が止まる。


祈るべきか。

問うべきか。

人間の願いを送る場所なのか。

確認の言葉を送る場所なのか。


理人は台に浮かぶ光を見た。

神官たちは手を合わせていた。

リナは、理人の袖を握ったまま台を見ている。

理人だけが、ノートを開いていた。


◆ ログ


降託端末:接触圏内

外部個体照合:開始

監査層応答:微弱

注記:

祈祷入力を伴わない接近を検出。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/irregular-reincarnation-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。