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非正規転生 ~転生したけど最弱スキルすらもらってない~  作者: KEI
第17話 川沿いの村を数えよ

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(七)中央神殿同行依頼

◆ (十四)出頭要請


白倉村での記録をまとめ終えたのは、夜に近い時刻だった。

エルネストは、記録係の神官から三枚の紙を受け取った。

川沿い村落現地確認表。

白倉村の注意漏れ確定記録。

白倉村緊急対策記録。


すべてに山科理人の名がある。

作成。

現地照合。

対策案。


エルネストは新しい紙を一枚取り出した。

上部へ表題を書く。


中央神殿出頭要請。


筆が止まった。

その場にいた者の視線も止まった。


出頭。


分院長の表情が固くなる。

若い神官は背筋を伸ばした。

ギルド側の護衛が、エルネストと理人の間へ視線を走らせる。

セリアは何も言わなかった。


だが、理人の少し前へ立つ。

リナは、はっきり一歩前へ出た。


「理人を、連れていくの?」


小さな声だった。

だが、広場にいた者にはよく聞こえた。

エルネストはリナを見た。

それから、自分が書いた表題へ目を戻す。


「言葉が強すぎました」


エルネストは、出頭要請の上へ細い線を引いた。

その下に書き直す。

中央神殿同行依頼。

だが、一度見えた文字は消えない。

広場に落ちた緊張も、すぐには消えなかった。


「拘束ではありません」


エルネストは言った。

リナは理人の袖を握った。


「神託のことで怒ってるんじゃないの?」

「怒ってはいません」

「でも、中央神殿に連れていくんでしょ」


若い神官が何か言おうとする。

エルネストは手を上げて制した。

そして、理人へ向き直る。


「山科理人殿」

「はい」

「中央神殿へ、同行を願います」


理人はエルネストを見た。

丁寧な言葉だった。

紙にも、依頼と書かれている。

だが、この世界で中央神殿の神官長から名指しで同行を求められる。

ただの招待であるはずがない。


「理由を伺っても?」

「あなたには、神託が降りる場所を見てもらいたい」

「神託が降りる場所」

「中央神殿にあります」


エルネストは一度言葉を切った。


「正確には、中央神殿の地下に」


分院長が顔を上げた。

若い神官も驚きを隠せていない。

神殿の者でさえ、誰もが知る場所ではないらしい。

リナの手に力が入る。


理人はエルネストの目を見た。

この老人は答えを知っているのではない。

扉の場所を知っている。


「同行依頼、ですか」

「はい」

「拒否はできますか」


広場が、再び静かになった。

分院長は目を伏せた。

若い神官が緊張した顔をする。

エルネストは、すぐには答えなかった。

その沈黙が、依頼と命令の間にあるものを示していた。


「できます」


やがて、エルネストは答えた。


「ただし、私はあなたに来てほしい」

「なぜです」

「あなたが見つけたものは、白倉村だけではないからです」


理人は眉を寄せる。

エルネストは続けた。


「あなたは、神託を未来予言として扱わなかった。祈りの言葉として流しもしなかった。現地で確認できる条件へ変えた」


エルネストは川辺に吊るされた白布を見た。


「その読み方が、神託が降りる場所に必要かもしれません」


リナが尋ねる。


「危ない場所?」


エルネストは否定しなかった。


「安全とは言いません」


理人はリナを見る。


「リナは残ってもいい」

「行く」


返事は早かった。


「でも」

「行く」


リナは理人の袖を離さない。

エルネストがリナへ視線を向ける。


「あなたの同行も許可します」

「私も?」

「あなたは、山科殿が見落とすものを見ています」


リナは少し驚いた顔をした。

理人は小さく息を吐く。


「正式な役割になったな」

「一人より二人の方がいいよ」

「それはそうだ」


セリアが三枚の記録をまとめた。


「ギルドへは、私から報告します。中央神殿へ行く前に、白倉村の依頼が止まらないよう手配します」

「セリアさんも来ますか」


理人が尋ねると、セリアは首を横に振った。


「私はカランタに残ります。誰かが依頼と連絡を受けなければなりません」

「お願いします」


エルネストは、同行依頼の本文を書いた。

白倉村現地確認において、山科理人による神託文の条件分解が、未到達の現地危険の発見に寄与した。

当該手法は、神託を未来予言として待機するのではなく、警告条件として現地照合するものである。

中央神殿において、降託記録および古い神託設備との照合を行う必要がある。


山科理人に中央神殿への同行を求める。

リナの同行を許可する。

冒険者ギルドおよびカランタ分院へ、行程と帰還予定を通知する。

エルネストは最後に印を押した。

薄い紙だった。


だが、理人をカランタから動かすには十分な重さを持っていた。

招待に近い。


だが、ただの招待ではない。

最初に書かれた出頭という文字が、その境目を曖昧なまま残していた。



※第17話「川沿いの村を数えよ」は全八回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/irregular-reincarnation-top/

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