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非正規転生 ~転生したけど最弱スキルすらもらってない~  作者: KEI
第17話 川沿いの村を数えよ

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82/115

(三)白倉村と白い石倉

◆ (五)今もある村


白倉村は、そこにあった。

隠されてはいない。

廃村でもない。

畑がある。


家々の煙突から煙が上がっている。

子どもたちが道の端で遊んでいる。

家の前では、年配の女性が野菜を干していた。


村の入口には、古びた木札が立っている。

白倉村。

名前も変わっていない。


理人は現地確認表へ書いた。

白倉村は現地に存在し、村名も変わっていない。廃村ではなく、住民も生活している。

リナが村を見回した。


「思ってたより、普通だね」

「普通だから、見落とされる」


理人は答えた。


「消えていたら、誰かが気づく。名前が変わっていたら、照合で止まる。でも、昔の記録どおりに残っていたら、そのまま通る」


村の年長者が、神官たちの姿を見つけて走ってきた。

エルネストの外套を見て、慌てて頭を下げる。


「中央の神官様が、なぜこのような小さな村へ」


セリアが、その言葉に目を向けた。

小さな村。

村人自身が、自分たちをそう扱っている。

エルネストは年長者の前に立った。


「小さいから、見なくてよいということはありません」


声は穏やかだった。

だが、分院の若い神官は目を伏せた。

年長者は困ったように笑う。


「見ていただくようなものは、何もありません」


理人は、その言葉を聞いた。

何もない。

本当に何もないのか。

それとも、何かがあっても、報告するほどではないと考えているのか。


「最後に分院の神官が来たのは、いつですか」


理人が尋ねると、年長者は首を傾げた。


「いつでしたか。二年……いや、三年ほど前かもしれません」


分院長が巡回記録の写しを見る。

予定には毎年入っている。

だが、実施したかどうかを示す記録は揃っていない。


「町へ知らせを持っていく人は?」

「前は荷車に頼んでおりました。最近は、こちらへ来る荷車も減りまして」

「急ぎの時は?」

「歩ける者が行きます」


理人は表へ書いた。

連絡手段は定期化されておらず、町への連絡は荷運びの往来に依存していた。急ぎの場合は、村人が徒歩でカランタへ向かうしかない。

白倉村は今もある。


だが、現在の話の中には入りにくくなっていた。

呼ばれし村。

呼ばれぬまま残る。

過去の村ではない。

今も存在する村だった。


◆ (六)白い石倉


白倉村の川沿いには、古い石倉があった。

白い石を積み上げて造られている。

雨風を受けて一部は黒ずんでいたが、遠目には確かに白く見える。

村の年長者が倉を見上げた。


「昔は、ここが荷の中継場所でした。麦や薬草を入れて、川沿いの荷車へ積んでいたのです」

「今も使っていますか」

「量は減りましたが」


理人は倉と川の距離を見た。

近い。

荷を積み下ろすには便利だったのだろう。


だが、水が増えた時には近すぎる。

倉の床も、それほど高くない。

壁の下部には、色の違う帯が残っていた。

理人はしゃがんだ。


「これは水の跡ですか」


年長者は少し困った顔をした。


「大水ではありません。雨の後に、少し水が入ったことはあります」

「いつですか」

「去年だったか、その前だったか」

「何回くらい」

「そこまでは数えておりません」


理人は確認表へ書いた。

白い石倉を現地で確認。

倉は川に近く、床も低い。壁の下部には過去の水跡が残っていたが、水が入った時期と回数は記録されていなかった。

倉の中へ入る。


麦袋。

薬草の包み。

乾燥させた木の皮。

水に弱いものが、床へ直接置かれている。

リナが奥を指した。


「薬草、低いところにある」


セリアが包みを確認する。


「濡れたら使えなくなります」


年長者が慌てて言う。


「今までは、ひどい水は来ておりません」

「今まで大丈夫だった可能性はあります」


理人は答えた。


「でも、水が来た回数も高さも記録していないなら、どの程度まで大丈夫だったのかは分かりません」

「今年だけ、急に危ないと?」

「まだ分かりません」


理人は川を見た。


「だから、周りも見ます」


エルネストは、倉の白い壁へ目を向けた。

神託文の写しを開くことはしなかった。

まだ、その時ではないと考えているようだった。



※第17話「川沿いの村を数えよ」は全八回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/irregular-reincarnation-top/

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