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非正規転生 ~転生したけど最弱スキルすらもらってない~  作者: KEI
第15話 過去は心からの距離で測る

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(二)あるのに薄い

◆ (四)白倉村


川沿いの村名を順番に並べていく。

東川村。

南瀬村。

水原小村。

白倉村。


理人の手が止まった。


「白倉村」


神殿の写しに名前がある。

ギルドの村一覧にもある。

荷運びの記録にも、少ないながら同じ名前が出てくる。

理人は三つの記録へ同じ印を置いた。


「消えていませんね」


セリアが答える。


「ええ。白倉村は今もあります」

「名前も変わっていない?」

「少なくとも、この写しとギルドの一覧では同じです」


リナも頷いた。


「聞いたことある。川沿いにある古い村。白い石の倉があるって」


白い石の倉。

理人は神託の最初の一節を思い出した。

遠き水、白き倉に触れ。

だが、すぐに結びつけることはしなかった。

白い倉という言葉が、その村を指しているとは限らない。


白い石で造られた倉は、他にもあるかもしれない。

神託の言葉が村名へ変わった可能性もあれば、村名の方が後から神託へ寄せられた可能性もある。

似ているというだけで、同じものにしてはいけない。

理人が気にしたのは、名前よりも記録の量だった。

白倉村は、ある。


人も住んでいる。

名前も変わっていない。

地図にも載っている。

だが、新しい記録が少ない。

理人は、白倉村の名の横へ書いた。


存在あり。

その下へ、もう一つ。

記録、薄い。


◆ (五)あるのに薄い


理人は村ごとに記録の数を並べた。

荷運び。

護衛依頼。

祭礼前後の往来。

水祓い巡回。


ギルドへの相談。

東川村は多い。

川沿いの道を通る荷車が多く、護衛依頼も定期的に出ている。

南瀬村も、それなりに記録がある。

水原小村は小さいが、神殿の巡回記録は新しい。


白倉村だけが、少し違った。

何もないわけではない。

むしろ、どの記録にも少しずつ名前が残っている。

荷運びの帳面。

神殿の巡回予定。


祭礼参加者の記録。

古い依頼票。

存在を示すものはある。

だが、新しい記録が薄い。

荷運びは年々減っている。


ギルド依頼もほとんどない。

祭礼へ来た者の記録も少ない。

神殿の水祓い対象には含まれているが、巡回予定では後ろへ回されることが多い。

予定どおり巡回できなかった年には、翌年へ持ち越された形跡もあった。

理人は表へ書いた。


存在あり。

接触少。

セリアが、その文字を見て眉を寄せた。


「台帳にはありますよ」

「はい」

「水祓いの対象にも入っています」

「入っています」

「では、漏れているとは言えないのでは?」


理人はすぐには答えなかった。

セリアの言うことは正しい。

記録上、白倉村は漏れていない。

名前がある。

対象にも入っている。


消されてもいない。

だが、現在の状態を誰が知っているのか。

最後に誰が行ったのか。

川の様子を誰が見たのか。

村からの報告が、いつ町へ届いたのか。


そこが分からない。

理人は白倉村の行を指で押さえた。

台帳にはある。

だが、注意は届いているのか。


◆ (六)後回し


「直近の巡回は、いつですか」


理人が尋ねると、セリアは水祓い巡回予定の写しをめくった。


「正式な実施記録ではありません。ギルドへ届いた予定だけですが……白倉村は、三年前の予定では最後から二番目です」

「二年前は?」

「最後です」

「去年は?」


セリアの指が止まった。


「予定にはあります。ただ、巡回完了の連絡がギルド側には来ていません」

「行ったかどうか分からない?」

「神殿では記録しているはずです」

「ギルドには届いていない」

「そうなります」


リナが荷運びの帳面を見ながら言った。


「白倉村へ行った荷車も減ってる。前は月に何回かあるけど、最近は季節ごとに一回くらい」

「別の道ができた?」


セリアが首を横に振る。


「大きな道はありません。村自体が小さくなっているのかもしれません」

「若い人が町へ出たとか?」

「あり得ます」


理人は木片へ候補を書いた。

人口減少。

荷の減少。

巡回後回し。

報告経路の縮小。


どれも、白倉村に異常があることを示す証拠ではない。

村が静かで、問題がないから依頼が出ない可能性もある。

荷運びが減ったのも、単に物を作らなくなったからかもしれない。

神殿が後回しにするのも、小さな村を限られた人員で回るための判断だろう。

理人は、そのことを否定しなかった。


「小さい村を後へ回す理由は分かります」


セリアがうなずく。


「神殿も、すべての村を同じ日に回れません」

「はい。優先順位は必要です」


理人は巡回予定を指した。


「ただ、後回しが毎年続くと、最近の状態が分からなくなります」


セリアの表情が少し変わった。


「異常があっても、こちらへ届くのが遅れる」


リナが言った。

理人はうなずく。


「その可能性がある」


後回し自体が悪いのではない。

後回しにしたものを、誰も見直さなくなることが問題だった。



※第15話「過去は心からの距離で測る」は全五回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/irregular-reincarnation-top/

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