↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非正規転生 ~転生したけど最弱スキルすらもらってない~  作者: KEI
第14話 未来形ではなく、遠いということ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/115

(五)何をしろという文なのか

◆ (十二)過去なのに残る


理人は、神託の最後の一節へ目を戻した。

呼ばれし村、呼ばれぬまま残る。

そこだけ、別の引っかかり方をしている。

呼ばれし。

これは、過去側の言い方に見える。


昔、呼ばれた。

昔、名を持っていた。

昔、何かの対象として扱われた。

そう聞こえる。

だが、その後に続く言葉は違う。


残る。

残っている。

今もある。

消えた村の話ではない。

完全に過去の中へ置かれたものでもない。


理人は三つの部分へ線を引いた。

呼ばれし。

呼ばれぬまま。

残る。

過去と現在が、一つの短い文の中に並んでいる。


「ここは、未来ではありませんね」


理人が言うと、セリアがのぞき込んだ。


「古くからある村にも、祈りを忘れるなという意味では?」

「そう読めます」

「違うんですか」

「分かりません」


理人は首を横に振った。


「ただ、過去側の言い方なのに、今も残っていると言っているのが気になります」


リナが古い文を見た。


「昔のものなのに、今もあるってこと?」

「おそらく、そこが変なんだ」


呼ばれし村。

一度は呼ばれた村。

だが、呼ばれぬまま残る。

呼ばれていたのか。

呼ばれなくなったのか。


誰から呼ばれたのか。

何の対象として呼ばれたのか。

理人は、そこから先を考えるのを止めた。

今ある情報だけで意味を決めるには早すぎる。

理人は、その表現を対応表へはまだ入れなかった。


代わりに、木片の端へ小さく書く。

過去?

その下へ、もう一つ。

残存?

書いてから首を傾げた。


まだ、言葉が合っていない。

それでも、次に見るべき箇所ではある。

過去側の言い方。

今も残っているもの。

その不一致だけを残した。


◆ (十三)神託を書き換える


写しを届けに来ていた神殿の若い者が、理人の木片を見て顔をしかめた。


「神託を勝手に書き換えているのですか」


理人は首を横に振った。


「書き換えてはいません。言葉の意味を分けています」

「神託は、古くから未来の警告として読まれています」

「それを否定しているわけではありません」

「では、なぜ未来ではないなどと書くのです」


理人は木片を指した。


「未来だけではない可能性があるからです」


若い神殿の者の表情が硬くなる。


「神託には、正しい読み方があります」

「その読み方で備えることを否定していません」

「なら、余計な読み方を増やす必要はないでしょう」


理人は少し考えた。

相手の言い分にも理由がある。

一つの神託にいくつもの解釈を出せば、町の者は混乱する。

水祓いをしなくてよいと受け取る者が出るかもしれない。

都合のよい意味だけを選ぶ者も出る。


だから、神殿は読み方を固定しているのかもしれない。

それでも、理人は写しを指した。


「未来の予言として読めば、来るのを待ちます」


若い者は眉を寄せた。


「備えるのです」

「はい。備えて待ちます」


理人は、木片の遠いという文字を指した。


「遠い場所の異常なら、探しに行きます」


次に、未到達という文字を指す。


「まだ届いていない情報なら、確認します」

「それが神託の意味だという証拠はありません」

「ありません」


理人はうなずいた。


「だから、まだ町には言いません」


若い神殿の者は少しだけ言葉に詰まった。

理人は続ける。


「どれが正しいかは分かりません。でも、読み方によって行動が変わります」


神殿の若い者は、困ったように黙った。

その場で否定しきれるほど、理人の言葉は強くない。

だが、受け入れるには神託に近すぎる。


「分院へ余計な混乱を持ち込まないでください」


彼はそう言って、写しの控えをまとめた。

理人はうなずいた。


「まだ持ち込みません」


まだ。

今は、分からない箇所を分けるだけだ。


◆ (十四)何をしろという文なのか


神殿の若い者が去ったあと、セリアが小さく息を吐いた。


「危ないですよ。神託の解釈に口を出すのは」

「分かっています」


理人は答えた。


「神託が間違っていると言いたいわけではありません」

「では、何がしたいんですか」

「何をしろと言っている文なのか、分けたいんです」


理人は木片を指した。


「未来の災いなら、備える」


次に遠いという文字を指す。


「遠い場所の危険なら、探す」


未到達という文字。


「まだ確認されていない異常なら、確認する」


リナが言った。


「届いていないものを、取りに行くんだね」

「そうだ」


理人はうなずいた。


「神託を否定するんじゃない。神託を、行動につながる形で読む」


セリアは少し考えた。


「神殿からすれば、祈ることも行動です」

「はい。それも外しません」

「祈祷が無駄だと言うつもりはない?」

「ありません」


理人には、祈祷の効果は分からない。

だが、祈祷のために村を訪れるなら、それは状況確認にもなる。

水路を見る。

川の濁りを見る。

村人の話を聞く。


訪問記録が残る。

祈りと確認は、必ずしも反対ではない。

問題は、神託を未来の話だけにしてしまい、まだ見えていない現在を探さなくなることだった。

セリアは紙を見た。


「これを報告書にするなら、かなり言い方を選ばないと駄目ですね」

「まだ報告書にはしません」

「では?」

「まず、対応表を作ります」


セリアは苦笑した。


「あなた、本当に何でも表にしますね」

「表にすると、どこが分からないか分かります」


それは理人にとって、ほとんど祈りに近い言葉だった。



※第14話「未来形ではなく、遠いということ」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/irregular-reincarnation-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。