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非正規転生 ~転生したけど最弱スキルすらもらってない~  作者: KEI
第9話 ゴブリン討伐は初心者向けではない

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(四)撤退条件

◆ (九)確認印


理人は、依頼票の危険度を指した。

上げる。

そう言いたいわけではない。

まだ分からない。


情報が足りない。

理人は、依頼票の端に指で小さな線を引く仕草をした。


「後で確認」


リナが訳す。

次に、ミナを指さないように注意して、依頼票の余白を指した。


「足跡、たくさん。たぶん」


カイルを見る。


「森、見る人」


リナが訳す。

カイルは眉を上げた。


「俺に行けってか」


理人は首を横に振った。

行けと命じる権限はない。

ただ、初心者だけでは危ない。

それを言いたい。


セリアが依頼票を持ち直した。

彼女はしばらく迷った後、依頼票の端に小さな印をつけた。

危険度そのものは変えない。

だが、初心者だけでの受注は保留。


確認が必要。

おそらく、そんな扱いになった。

青年の一人が不満を言った。

報酬が必要なのだろう。


依頼を取り上げられたように感じたのかもしれない。

理人はその不満も分かった。

仕事が必要な人間から仕事を奪えば、それはそれで問題になる。

だから、これは解決ではない。


ただ、見ないまま送り出すよりはましだった。

ミナは少しだけ息を吐いた。

安心したのか、申し訳ないと思ったのかは分からない。

セリアは、理人を見る。


まだ信用していない目だった。

だが、完全に無視する目でもなかった。

それで十分だった。

今は、紙の端に印が一つ増えた。


それだけでいい。


◆ (十)面倒でも


「臆病者のために、依頼を止めるのか」


青年の一人が、そんな意味のことを言った。

リナが訳す前に、何となく意味は分かった。

声の調子で分かる。

ミナが肩を縮める。


カイルは何も言わない。

セリアも、すぐには口を挟まなかった。

ギルドでは、慎重であることはあまり褒められないらしい。

理人は、青年を見た。


若い。

怖くないのではない。

怖くないふりをしているのかもしれない。

それはそれで、危ない。


理人は依頼票を指した。


「止める、違う」


リナが訳す。

理人は言葉を探した。

仕事を奪いたいわけではない。

冒険者を馬鹿にしたいわけでもない。


ゴブリンが怖いと言いたいわけでもない。

ただ、分からないまま行くな。

そう言いたい。

理人は、依頼票を指した。


「分からない。だから、見る」


次に、森を指す。


「見たら、決める」


カイルが低く笑った。


「それを面倒と言うんだ」


リナが訳す。

理人はうなずいた。


「面倒。でも、死ぬより安い」


リナが訳すと、場が少し静かになった。

青年は言い返しかけた。

だが、カイルがその青年を見た。

それだけで、青年は口を閉じた。


カイルは壁にもたれたまま、低く言う。


「森は、面倒を嫌う奴から持っていく」


リナが訳す。

理人は、その言い方を完全には理解できなかった。

だが、意味は分かった。

面倒を避けた結果、人が消える。


それを、この男は見たことがあるのだろう。


◆ (十一)撤退条件


セリアは依頼票に印をつけた。

完全な変更ではない。

危険度も、まだ低いまま。

だが、確認が必要な依頼として、いったん脇に置かれた。


ミナは少しだけ息を吐いた。

青年たちは不満そうだった。

カイルは壁にもたれたまま、理人を見ていた。


「紙だけで森は歩けないぞ」


リナが訳す。

理人はうなずいた。

その通りだ。

紙だけでは歩けない。


だが、紙がなければ、何を見落としたかも分からない。

理人は、依頼票の端を指した。


「行くなら」


リナが訳す。

理人は次に、森を指した。

それから、町へ戻るしぐさをした。


「戻る、条件」


リナは少し考えた。

そして、現地語で言い直した。


「どこまで行ったら戻るか。何を見たら戻るか。先に決める」


カイルが、今度ははっきり笑った。

馬鹿にした笑いではない。

少し苦い笑いだった。


「撤退条件か」


リナが訳す。

理人はその言葉を繰り返した。


「撤退条件」


青年の一人が鼻で笑った。

逃げる条件を先に決めるのか。

そう言ったらしい。

理人は、笑わなかった。


セリアも笑わなかった。

ミナも笑わなかった。

カイルだけが、壁にもたれたまま、低く言った。


「笑う奴から死ぬぞ」


リナが、その言葉を訳す前に、理人は意味を理解した気がした。

ギルドの掲示板には、まだ多くの依頼票が並んでいる。

その一枚一枚が、誰かを外へ連れていく。

紙は必要だ。


だが、紙だけでは足りない。

敵の名前だけでは足りない。

危険度の印だけでも足りない。

行くなら、どこで戻るのか。


何を見たら引き返すのか。

それを決めなければ、低危険度という言葉は、ただの願望になる。

理人は、脇に置かれたゴブリン討伐の依頼票を見た。

初心者可。危険度低。


その横に、小さな確認印が増えている。

まだ弱い。

だが、空白よりはましだった。


◆ (十二)ログ


ログ

分類:維持

条件分岐:未反映

不確定要素:増加

再照合:未完了


注記:

低位分類への集約を確認。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/irregular-reincarnation-top/

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