↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非正規転生 ~転生したけど最弱スキルすらもらってない~  作者: KEI
第9話 ゴブリン討伐は初心者向けではない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/115

(一)何体か

◆ (一)初心者向け


ゴブリン討伐が初心者向けかどうか。

山科理人には、まだ分からない。

ゴブリンを見たことがない。

この世界の魔物の強さも知らない。

冒険者の平均的な能力も知らない。


だから、ゴブリンは危険だ、と断定するつもりはなかった。

ただ、一つだけ分かる。

この依頼票だけでは、危険かどうかを判断できない。

それを初心者向けと呼ぶのは、かなり危ない。


理人は掲示板の前に立っていた。

隣にはリナがいる。

少し離れたところで、セリアがこちらを気にしている。


依頼票には、整った文字と印が並んでいた。

ゴブリン討伐。初心者可。危険度低。

リナがそう読んだ。

理人は、依頼票の余白を見た。


広い。

だが、必要なことは書かれていない。

何体か。どこか。いつ見たのか。戻る条件は何か。

空いているのに、空白だった。


紙はきれいだ。

欄も揃っている。

危険度の印も、受付で使われているものと同じらしい。

だからこそ、そこに書かれていないものが怖い。


整った紙は、人を安心させる。

初心者可。危険度低。

その二つが並んでいれば、受けてもよい仕事に見える。

少なくとも、初めて討伐依頼を探している者には、そう見える。


理人は依頼票から目を離せなかった。

この紙は、何を知っているのか。

そして、何を知らないまま貼られているのか。

そこが分からなかった。


◆ (二)手を伸ばす新人


依頼票に手を伸ばしたのは、若い冒険者たちだった。

理人より少し年下に見える青年が二人。

それから、少女が一人。

少女は依頼票を取る前に、少しだけ手を止めた。


他の二人は気にしていない。


「初心者向けだろ」


そのような意味のことを、一人が言った。

リナが小さく訳してくれた。

少女は、掲示板の依頼票を見ている。

ゴブリン討伐。初心者可。危険度低。


そこにそう書いてある。

なら、怖がる方がおかしい。

そう思おうとしている顔だった。

理人は、その表情を見た。


怖いのではない。

いや、怖いのだろう。

だが、それ以上に、怖いと言うことを怖がっている。

前の世界の会議室にも、似た顔があった。


不安があるのに、不安と言えない顔。

低リスクと書かれた資料の前で、黙るしかない顔。

経験が足りないのかもしれない。

自分だけが分かっていないのかもしれない。


周りが平気そうにしているなら、声を上げる方がおかしいのかもしれない。

そう考えて、黙る顔だ。

理人は、その依頼票から目を離せなかった。

青年の一人が、依頼票を軽く叩いた。


報酬欄を見ている。

それから、危険度の印を見る。

低い。

初心者可。


条件は揃っている。

少なくとも、紙の上では。

少女はまだ、依頼票へ伸ばした手を止めていた。

理人は、リナを見た。


「聞いて」


リナは少し嫌そうな顔をした。

ギルドで目立つのは、あまり得ではない。

それでも、彼女はうなずいた。


◆ (三)何体か


理人は依頼票を指した。


「何体?」


リナが新人たちに聞く。

青年の一人が、肩をすくめた。

依頼票を見れば分かるだろう、という顔だ。

リナが依頼票を読み直す。


そして、首を傾げた。


「書いてない」


理人は続けた。


「巣? 一匹?」


リナが聞く。

今度は別の青年が笑った。

ゴブリンはゴブリンだ。

そういう意味のことを言ったらしい。


リナは少し困った顔で訳した。


「分からない。たぶん、森」

「村、近い? 遠い?」

「書いてない」

「いつ見た?」

「書いてない」

「前、失敗?」


リナは依頼票をもう一度見た。

それから、セリアの方を見る。

セリアは眉間にしわを寄せた。

書いていない。


少なくとも、この紙には。

理人は息を吐いた。

ゴブリンが危険かどうかではない。

この紙が危険なのだ。


理人は、依頼票を見る。

ゴブリン討伐。初心者可。危険度低。

その三つは分かる。

だが、それ以外が足りない。


単独か。群れか。巣か。通り道に出たのか。住み着いているのか。

村から近いのか。森の奥なのか。最後に見たのはいつか。

子どもや家畜に被害はあるのか。前に失敗した者はいるのか。

何も分からない。

理人は依頼票の余白を指した。


「ここ、ない」


リナが言い直す。


「何体か、書いてない。巣かどうかも、書いてない。いつ見たかも、ない」


新人の青年が不満そうに言った。

低危険度なのだから、そこまで気にする必要はない。

たぶん、そういう意味だった。

理人は首を横に振る。


低危険度だから分からなくていいのではない。

分かっているから、低危険度と言えるはずなのだ。

理人は、その説明をしたかった。

だが、今の言葉では難しい。


だから、依頼票を指した。


「低い、なぜ?」


リナが訳す。

ギルドの空気が少し変わった。



※第9話「ゴブリン討伐は初心者向けではない」は全四回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/irregular-reincarnation-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。