(六)紙、前のまま
◆ (十四)また初回面談
この日、倉庫の問題がすべて解決したわけではなかった。
飼料袋の差分は、まだ残っている。
薬草包みの不足も、原因までは分からない。
倉庫番は、理人を快く思っていない。
誰かが何かを持ち出していたのかどうかも、分からない。
それでも、状況は良くなった。
北棚の古い袋は分けられた。
湿った袋は、荷役獣に直接出されなくなった。
薬草包みは、種類ごとに置かれた。
夕方の積み替え後には、リナだけでなく荷運びの男も数を見ることになった。
変な差分は、一気に減った。
犯人を見つけたからではない。
誰かを罰したからでもない。
見えるようになったからだ。
見えるようになると、人は少しだけ気をつける。
その少しで、現場は変わることがある。
理人は、倉庫の隅に置かれた木片を見る。
耳の印。眼鏡の印。袋。薬草。朝。夕。不明。後で確認。
それはまだ帳簿ではない。
制度でもない。
ただ、差分を一人に押しつけないための小さな仕組みだった。
そして、その小さな仕組みは、少なくとも一つの倉庫を少しだけましにした。
理人は、荷運びの男が置いていった依頼票を見る。
読めない文字。
整っているようで、状況変化が入っていない欄。
前回は正しかったかもしれない危険度。
だが、今の道に合っているかは分からない。
倉庫で得た信用は、倉庫の中でしか通じない。
ギルドへ行けば、また最初からだ。
信用は持ち運べない。
少なくとも、簡単には。
理人はため息をついた。
「また初回面談か」
リナが首を傾げる。
理人は依頼票を指した。
「これ、ネア」
違う。
壊れている。
リナは少しだけ笑った。
そして、理人の言葉を直すように、現地語で言い直した。
「壊れてる、かもしれない」
たぶん。不明。後で確認。
理人は、その言葉に小さくうなずいた。
倉庫の次は、ギルドだった。
◆ (十五)ログ
ログ
差分候補:収束
帰属先:未確定
局所反応:変化
注記:
単一点への帰属要求は継続。
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※ネタバレ範囲にご注意ください。
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