(三)開示権限がありません
◆ (十一)開示権限がありません
理人は問いを続ける。
「なぜ、俺は勇者呼出対象ではないのか」
『開示権限がありません』
「なぜ、加護が付与されていないのか」
『開示権限がありません』
「なぜ、言語理解支援も付与されていないのか」
『開示権限がありません』
同じ答えが返る。
だが、理人は苛立たなかった。
無回答ではない。
理由がないのでもない。
理由は存在する。
ただ、現在の理人には開示できない。
ノートへ書く。
勇者呼出対象外の理由。制限対象。加護がない理由。制限対象。言語理解支援がない理由。制限対象。
「本人の情報でも開示されない?」
『当該項目は、個体履歴の本人開示範囲に含まれません』
個人情報の保護とは別の壁だった。
◆ (十二)変わる権限
「俺に開示権限がない、ということですか」
『現在の照会権限では開示できません』
理人は、現在という言葉へ線を引く。
「照会権限は変わる可能性がありますか」
短い沈黙。
『条件により変動します』
理人の筆が止まる。
固定ではない。
「変動条件は?」
『開示権限がありません』
エルネストが、苦笑に近い息を漏らした。
理人も少しだけ口元を歪める。
「そこも開かないか」
『はい』
自然な返事だった。
リナが首をかしげる。
「開ける方法があることは、分かったんだよね」
「そうだな」
条件はある。
権限も変わる。
だが、その条件を知る権限がない。
理人はノートへ書いた。
照会権限。条件により変動。変動条件。開示不可。
壁はある。
だが、動かない壁ではなかった。
◆ (十三)勇者呼出判定
理人は、別の方向から尋ねることにした。
「現在、勇者は呼び出されていますか」
『否』
エルネストが白い女性を見上げる。
「勇者を呼び出す判定は行われていますか」
理人が続けた。
『判定履歴があります』
「結果は」
『勇者呼出判定、不成立』
降託の間が静まり返った。
勇者が現れていないだけではない。
呼び出しの要否を判定し、その結果として成立していない。
エルネストが低く尋ねる。
「女神は、勇者を必要としていないのですか」
白い女性は答えなかった。
問いの範囲が広すぎる。
理人が聞き直す。
「勇者呼出判定が不成立となった理由を照会します」
『開示権限がありません』
やはり、そこにも壁があった。
◆ (十四)不成立
「判定に関係する領域を提示してください」
白い女性が答える。
『危機種別評価』
『介入判断規則』
『現地対応可能性評価』
理人は書き写した。
勇者呼出判定。不成立。判定理由。開示不可。関連領域。危機種別評価。介入判断規則。現地対応可能性評価。
危機種別。現地対応可能性。
二つの言葉へ線を引く。
勇者が不要だから、呼ばれないのか。
勇者では解決できないから、呼ばれないのか。
勇者を呼ぶことで、別の問題が起きるのか。
まだ分からない。
だが、不成立の理由は、魔王の有無だけでは決まっていない。
少なくとも、現地がどこまで対応できるかも判定に含まれている。
「次に見る場所は、ここだ」
理人は呟いた。
※第21話「開示権限がありません」は全四回です。
続きます。
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