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非正規転生 ~転生したけど最弱スキルすらもらってない~  作者: KEI
第21話 開示権限がありません

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(二)何も与えられていない

◆ (六)直接介入記録


理人は、しばらく間を置いてから尋ねた。


「俺の原世界での生命活動停止に、あなたは関与しましたか」


白い女性は穏やかに答えた。


『当該生命活動停止に対する直接介入記録はありません』


理人は書いた。

生命活動停止への直接介入記録なし。

少なくとも、残された記録上では、目の前の相手が理人を直接死なせたわけではない。


「俺がここへ流入したのは、生命活動が止まった後ですか」

『はい』

「誰が、俺をここへ流入させた」


白い女性の光が、わずかに硬くなる。


『開示権限がありません』


理人の筆が止まった。

初めてではない拒否だった。

だが、今度は自分がここにいる理由へ、直接突き当たった。


「流入させた理由は」

『開示権限がありません』


理人はノートへ書く。

流入主体。開示不可。流入理由。開示不可。


情報がないわけではない。

ある。

ただし、自分には開けられない。


◆ (七)今の分類


理人は問いを変えた。


「現地運用分類の根拠を、開示可能な範囲で」


白い女性が答える。


『倉庫記録改善』

『依頼票運用補助』

『魔法陣外形補正補助』

『神託文照会補助』

『未到達危険条件抽出』

『白倉村緊急対応補助』


理人は順に写した。

そこに並んでいるのは、自分が実際にしてきたことだった。

倉庫の木片を揃えた。依頼票の項目を見直した。魔物除け札の形を比べた。神託を現地確認へ変えた。白倉村で、見落とされた条件を拾った。


「今の俺の扱いとしては、間違っていない」


理人は言った。

エルネストが尋ねる。


「納得できませんか」

「きれいすぎるんです」

「きれいすぎる?」

「今までやったことを並べれば、この分類になります」


理人はノートへ書く。

現地運用分類。実績とは一致。流入理由とは別。


「今どう扱われているかと、なぜ来たかは同じとは限りません」


◆ (八)付与なし


理人は、勇者碑文の前で聞いた加護を思い出した。

危機に応じた力。聖剣を扱う力。瘴気を払う力。傷を癒やす力。


「俺に、加護や支援は付与されていますか」


白い女性が答える。


『当該個体への危機対応加護、付与記録なし』


理人は書いた。

危機対応加護。なし。


「言語理解支援は」

『付与記録なし』

「身体能力の補正は」

『付与記録なし』

「魔法を使うための補助は」

『魔力経路接続なし』

「記録や照会を行うための能力補助は」

『付与記録なし』


返答はすべて同じ方向を示していた。

言葉も。身体も。魔法も。記録も。


理人へ追加されたものはない。

リナが、ノートを見つめる。


「じゃあ、理人が今までやってきたことは?」


◆ (九)仕事の残り


理人は少しだけ笑った。


「俺の仕事の残りだな」

「仕事の残り?」

「前の世界で覚えたことの残り」


理人はノートへ表を作った。

加護・支援有無確認。言語理解支援。なし。身体能力補正。なし。魔力経路接続。なし。危機対応加護。なし。記録・照会能力補助。なし。

何もなかった。

本当に、何も与えられていなかった。

だから言葉を一つずつ覚えた。

数字を拾った。形を比べた。人に尋ねた。間違えた記録を直した。


「特別な力がないのに、ここまで来たんだね」


リナが言う。


「一人では来られなかった」


理人は答えた。

白倉村の人々。セリア。エルネスト。そして、リナ。


与えられた力はなかった。

だが、助けられなかったわけではない。

その二つも別だった。


◆ (十)勇者ではない


理人は白い女性へ向き直った。


「俺は、勇者呼出対象ですか」

『否』


短い返答だった。

理人は書く。

勇者呼出対象。否。


「勇者としての加護は」

『付与なし』

「勇者としての役割は」

『該当なし』


リナが理人を見る。


「理人、勇者じゃないんだね」

「最初から、そうだろうとは思ってた」


剣はない。魔法もない。言葉すら通じなかった。


「でも、ここまで来た」


リナが言う。


「勇者だからじゃない」


理人はノートを見る。

記録。照会。条件の比較。

持っていたのは、それだけだった。


「勇者じゃなかったから、見えたものもあるかもしれない」


エルネストが顔を上げた。

理人自身も、その意味をまだ説明できなかった。

それでも、ノートへ残した。



※第21話「開示権限がありません」は全四回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/irregular-reincarnation-top/

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