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非正規転生 ~転生したけど最弱スキルすらもらってない~  作者: KEI
第20話 システムプロンプトをそのまま出せ

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(四)祈りを支える仕組み

◆ (十四)言葉の補助


理人は、もう一つ確認する。


「加護に、言葉を理解するための補助が含まれることはありますか」


リナが理人を見た。

エルネストも表情を変える。

勇者が言葉に苦しんだ記録は見つかっていない。

だが、理人はこの世界へ来た時、何も理解できなかった。

白い女性は答えた。


『一般回答。含まれる場合があります』


理人の筆が止まる。


「勇者に限るものですか」

『対象個体、介入目的、危機条件に依存します』

「過去の勇者に含まれていたかは?」

『個体履歴および介入記録に依存します』

『対象を指定しない一括回答はできません』


理人は書いた。

言語理解補助。加護に含まれる場合あり。勇者に限定されない。対象個体、目的、危機条件によって異なる。個別確認には履歴が必要。

リナが小さく言う。


「じゃあ、理人が言葉で苦労したのは……」

「まだ分からない」


理人は答えた。


◆ (十五)情報を守る規則


理人は話を戻した。


「個体履歴開示規則について、開示できる範囲を提示してください」


白い女性が答える。


『現地で活動中の個体に紐づく履歴情報は、個別情報保護対象です』

『開示には、対象個体照合および項目ごとの開示範囲判定が必要です』


これは、すでに確認した内容だった。

だが、今回は応答の前提として示されている。

理人は続ける。


「現地での活動が終了している個体は?」

『個別情報保護の対象外となる場合があります』

「必ず開示される?」

『いいえ』


白い女性の声は変わらない。


『介入判断、上位命令、第三者に関する活動中個体情報には、別の制限が適用されます』


理人はノートへ整理した。

活動中個体。本人照合が必要。活動終了個体。個別情報保護の対象外となる場合あり。ただし、別の制限は残る。


◆ (十六)層になっている


理人は新しいページに縦線を引いた。

表示層。応答層。神託変換層。用語対応層。個体履歴層。介入判断層。上位命令層。

横へ、開示の状態を書き込む。

開示可能。一部開示可能。照合が必要。制限対象。開示対象外。

リナが横からのぞき込む。


「階段みたい」

「そうだな」

「下に行くほど、見えない?」

「たぶん」


理人は白い女性を見る。


「今見えているのは、俺たちと話すための一番外側だ」

「その下に、まだあるの?」

「あるらしい」


エルネストが言う。


「神殿が長く見てきたものは、その外側だったのですね」

「外側が無意味とは限りません」


理人は答えた。


「でも、外側だけを見て、奥まで分かったつもりになるのは危ない」


エルネストは静かにうなずいた。


「耳が痛い言葉です」

「俺にもです」


◆ (十七)言葉の対応表


理人は、さらに別の表を作った。

人間側の言葉。白い女性の説明。理人の仮置き。

神託。危険条件などの圧縮出力。警告文。

加護。危機対応の支援や補助。役割に結びつく支援。

勇者。危機対応個体として伝承された者。個別履歴の確認が必要。

祈り。祈祷応答につながる入力。意味の範囲が広い入力。

問い。照会応答につながる入力。確認対象を絞った入力。

神殿で用いられる古い言葉。情報を象徴表現へ圧縮するための言葉。元の条件が落ちる可能性あり。

エルネストは、その表を長く見ていた。


「これは、神殿へそのまま出せば反発を受けるでしょう」

「そう思います」

「ですが、必要です」


エルネストは言った。


「信仰の言葉が、何を運び、何を落とすのかを知るために」


◆ (十八)仕組みに祈る


若い神官は、まだ白い女性を見上げていた。


「神官長」


その声は弱かった。


「私たちは、何に祈っていたのでしょうか」


エルネストは、すぐには答えなかった。

慈悲深い姿。初期値として選ばれた声。受け手へ合わせた表示。

それでも、人々は長い年月、この姿へ祈ってきた。


「私たちは、届くことを願って祈ってきました」


エルネストは言った。


「今日知ったのは、その祈りがどのように受け取られていたかです」

「仕組みだったとしても?」

「仕組みであることが、空虚であることを意味するとは限りません」


エルネストが理人を見る。

理人は少し考えた。


「仕組みは、人を救うことがあります」


エルネストの目が揺れる。


「ただ、仕組みは壊れても、自分から助けを求めません」


理人は続けた。


「だから、確認が必要です」


エルネストは静かに笑った。


「女神を確認することが、祈りになる」



※第20話「システムプロンプトをそのまま出せ」は全五回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/irregular-reincarnation-top/

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