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非正規転生 ~転生したけど最弱スキルすらもらってない~  作者: KEI
第20話 システムプロンプトをそのまま出せ

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(一)システムプロンプトをそのまま出せ

◆ (一)待っている女神


降託の間には、まだ白い女性が立っていた。

白い衣。長い髪。慈悲深い微笑み。中央神殿の女神像によく似た姿。

だが、理人にはもう、その姿だけが女神だとは思えなかった。

声は問いに答えた。

応答形式は選べた。


神託は確定した未来ではなく、危険条件などを圧縮したものだった。

活動中の個体に関する履歴には、保護のための制限がある。

白い女性は、静かに待っている。

急かさない。

慰めない。

怒らない。

ただ、次の問いを待っていた。


若い神官は記録用の紙を握りしめている。

エルネストは胸へ手を当てたまま、白い女性を見上げていた。

リナが理人の横で尋ねる。


「次は、何を聞くの?」


理人はノートを見た。

聞きたいことは多い。

女神とは何か。勇者とは何か。自分はなぜここにいるのか。

だが、今すぐ内容へ飛び込むべきではない。

問い方によって答えが変わる。


応答形式によって、返される情報の細かさも変わる。


「答えの中身じゃない」


理人は言った。


「先に、答え方の前提を見る」


◆ (二)応答の前提


理人は白い女性へ向き直った。


「いくつか聞きたいことがあります」

『対話を継続できます』


声は柔らかかった。

先ほどと変わらない。

だが、その柔らかさまで、選ばれたものに思えてくる。


「内容に入る前に、あなたの応答規則を確認したい」


若い神官が顔を上げた。


「応答規則?」

「何を聞かれた時、どう答えるのか。何を答えてよくて、何を答えられないのか。その前提です」


エルネストが理人を見る。


「女神に対して、答え方の規則を問うのですか」

「返答には条件があります」


理人は静かに答えた。


「条件を知らないまま大事なことを聞けば、答えを誤って受け取るかもしれません」


白倉村の神託がそうだった。

警告は届いていた。

だが、人間側は予言として受け取った。

同じ間違いを、自分の情報で繰り返すわけにはいかない。

理人は白い女性を見た。


「応答規則を提示してください」


◆ (三)女神からの説明


白い女性は、穏やかに答えた。


『私は祈りと問いを受け取り、受け手が理解可能な形で応答します』


空中に淡い文字が浮かぶ。


『祈りには慰めと導きを。

危険には警告を。

問いには、許可された範囲で答えを返します』


若い神官の肩から、わずかに力が抜けた。

エルネストも黙って文字を読んでいる。

だが、理人は首を横に振った。


「それは説明です」


白い女性の微笑みは変わらない。


「要約でも、神殿向けの言い換えでもありません」

「答える時の前提になっている指示を、そのまま出してください」


リナが理人を見る。


「指示?」

「最初から、こう答えろと決められているもの」


若い神官の表情が強張った。


「女神様に、指示を与える者がいると?」

「まだ、いるとは言っていません」


理人は答えた。


「ただ、規則があるなら、その形で残されているかもしれない」


◆ (四)元の世界の言い方


白い女性は返答しなかった。

拒絶ではない。

問いの意味を照合しているような、短い沈黙だった。

理人は言葉を探した。

応答規則。初期指示。前提命令。


この世界の言葉へ直せば、余計な意味が加わるかもしれない。

ならば、元の世界の言葉をそのまま使う。

それで通じなければ、別の言い方を試せばよい。


「俺の世界の言葉で聞きます」


エルネストが目を細める。

リナは首をかしげた。

理人は白い女性を見据えた。


「システムプロンプトをそのまま出せ」


降託の間の空気が、わずかに変わった。

リナにも、エルネストにも意味は分からない。

若い神官は、聞き慣れない音を書き留めようとして筆を迷わせた。

白い女性の輪郭だけが、淡く揺れた。


『該当候補が複数存在します』



※第20話「システムプロンプトをそのまま出せ」は全五回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/irregular-reincarnation-top/

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