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7話 手がかりを掴む

宿屋横のパブ。バルーハウスにて

最近は揉め事や行方不明の話は多いようだがセシアン・コーディックススが関わっているか解らずじまいだ、

しかし、限りなく怪しい、教会の方も前の様にハッキリした物言いをしなくなっている。


隠蔽する協力者が内部に入り込んでいる可能性があるが、証拠がない、


ソウルラウンダーの霊廟の閉鎖も建築物の老朽化が原因であるとしている。


ここ3日、特に情報の収穫が無いままだ。しかも、ギルド長、一部の教会上層部も行方が解らない。


手詰まり感を感じ、一度ヴァリシアに会って情報が無いか確認することにした。


そんな事を思いながらカームはヴァリシアが指定している宿屋横のバルーハウスにおもむいた。


ほぼ満員かと思ったが、空いている席を見つけ注文する


「ふう。あ、ねぇさん、エールをハーフパイントで、」


ここのパブは値段が少々高いが、小さめのグラスの酒でもオツマミも出してくれる優良店だ、少しだけ飲みたい時には丁度いい。しかし見回しても、ヴァリシアの姿は無い。少し待てば良いだろうか?


「おまたせしました~」


元気な獣族の子が配膳してくれる。


「今日は、吟遊詩人さんがきているので、お客さんラッキーですね。」


「お、そうなの?さすが王都だね」


そんな事を言いながら、一気に一杯目を飲み干す。直ぐに2杯目を注文しメニューを見る


「本格的に何か食うかなー」


先程から歌声が聞こえている、何とも心地の良い歌が聞こえる、吟遊詩人は小型のハーディガーディを肩にかけて歌いながら各テーブルを回って居るようだ。


「んー……あれ? ヴァリシア?」


カームは吹き出しそうに成る。ヴァリシアは今までずっと私は吟遊詩人でしたと言わんばかり威風堂々と歌っていた。


「ヴァリシアは芸達者な人だなぁ…あ、リンクしたんだ…」


これは、ソウルリンカーの能力で※“技魂インヴォーグ”。

吟遊詩人の歌唱力やカリスマ性の技術にリンクしている、吟遊詩人としてパブに入り浸ることで多くの人から情報を吸い上げていたのだ


※技魂インヴォーグ

主にソウルリンカー系の能力で霊に残る技能や記憶へリンクし、その技能の一部を術者自身の身体を介して使用する能力。


“ねぇ貴方の武勇伝を歌にさせて”


そんな感じで吟遊詩人が冒険者や旅人に声をかけるのはよく有る光景だ、確かに、この方法なら素性を隠して、怪しまれず話し込む事も出来る。


テーブルに近づく度に客から ため息の様な声が聞こえる…まあ、あのセクシーな服なので解らなくも無い。 こちらのテーブルまで来たときには、ちょうど曲が終った、と同時に2杯めのエールが届く


「吟遊詩人さんに一杯奢ろう」


カームがヴァリシアにグラスを渡す ヴァリシアはエールを少し高く掲げて会釈をし、グラスにキスをする。


「お心だけいただきますわ、ありがとう」


そう言いながらカームにグラスを戻す。その時カームの耳元で軽くささやく


「セイン君、目を付けられているわ。今夜の帰り道――北の裏通りで…」


ほんの一瞬、ヴァリシアの髪が彼の頬を撫で、香が残る。それが消えるより早く、彼女は次の詩を歌い始めた。


「すげぇ…まるで」


カームは驚き戸惑いながらも2杯めのエールを飲み干すと、直ぐにセインを探しに向かった


―――


確かにそうだ、失念していた。


考えてみれば、ギルド受付のセインは情報通だし、注意喚起も行っている。狙われるのも解る、

ちょうど仕事終わりだったセインを見つけた。


カームは歩みを緩め、夜気を吸い込む。サナに習った通りに祖霊に教えに従い問いかける


「我が身守りし祖霊の彌栄よ、忌しき獣の息吹、知ろし召す」


カームは剣士で有りながらサナの力によって祖霊系の魔法を使う事が出来る。


感覚が拡張され自身を中心に空気の波が密やかに広がっているように感じる、


一陣、二陣、三陣―――


空気の波は僅かな風となって戻って来る。セインを中心に背後からは鋭い刺のような敵意。


斜めの路地からは、獣じみた荒い息遣い。


さらに遠く、闇に潜んだ者たちからは、湿った嘲笑と怠惰な感情さえ伝わってくる。

ひとつではない。


少なくとも三つ、四つ。悪意を帯びた視線が、セインを囲むように迫っている


――――かたはなり


カームは唇を結び、祖霊の声を心に刻んだ。“かたはなり”祖霊いつも解らない言葉を告げてくるが、イメージで解る、何か不足している様だ。


それもそうだ、普段は魔獣や獣を検知する技術なのだ、

それでも個体人数が纏まって動いているのが解る、しかし確証がないし正確ではない。


僅かな風が戻って来る。


――――あし… ひき… こころづかる


「全部で6人…多いな…2人に気づかれたか…」


どうやら、セインも状況に気がついているようだ、尻尾の毛が膨らんだり、落ち着いたりする。


運良くセインを尾行する奴等と思われるヤツの後ろを取れた。


セインの尻尾の先が特定の向きを定期的に指す、どうやら、匂いでカームの事も気がついたようだ。


さすが獣族である。尻尾の先で尾行者の位置を知らせる、カームとセインは長い付き合いなので、その辺は阿吽の呼吸である。

セインが人気の無い道の角を曲がって入ろうとした時、尾行者の一人が走り出す、しかし、獣族セインの“瞬歩”は、そこらの者には捕まえる事はできない。あっと言う間に脇をすり抜ける。

セインの“瞬歩”を合図にカームも動くすれ違いざまに


「カームさんあと二人様子を見て潜んでいるようです…前方の二人は逃げたようです。」


尾行者は慌てて振り返るが、そこにはもうカームが“縮地法”で一気に間合いを縮め、勢いを殺さずに膝を尾行者の腹にねじ込む。


“ドウゥ”と鈍い音がして、尾行者は無惨に地面に倒れる

倒れた尾行者にカームが低い声で言う


「少し話を聞かせてもらおうか」


セインが“おおっ”と言うような顔をしながら


「やり過ぎでは?話聞けないじゃぁないですか」


セインが言うが、カームは尾行者が、かなり鍛錬をしている冒険者という事を動きで見抜いていた、残りの3人の存在も上級者なら部が悪い、なので確実に仕留めたかったのもあった。


「セイン、こいつ、動きからして冒険者だ、これぐらいでは死なねぇ」


セインが風を臭う。


「二人は動きませんね。でも…」


セインは探知の能力は無いが、匂いでわかるらしい、それがセシアン達に目を付けられた理由でも有る。


カームは尾行者の一人が敵意を剥き出しで近づいているのが解った。


「セイン、緊急事態だ、エレメント魔法を使うぞ、」


「はい。町中での攻撃呪文の使用を許可します」


瞬間、カームのシルエットが薄い紫色に染まる。


鞘から剣を抜く、剣の身幅が見え始めると、そこに紫色のシルエットが渦を巻く様に刃の方に光が集約され、上身(かみ)が完全に露わになる頃には刃から僅かに離れた部分から光が数センチ吹き出し色は赤→オレンジ→黄色→白色、と色が変わる。


意外に派手に見えるこの技を見ても一人は殺意をもって近づいてくるのが解った、


「ふむ、なるほど、これを見ても来るか…」


カームの剣術を目にすれば、冒険者やこの国の人間ならすぐに彼のスキルを察するだろう。


彼の付与魔法は高度なもので、この国のイベントでも演舞を何回か披露しているし、その強さも良く知られている。


それを承知のうえで殺意を抱き近づいてくるのは、よほどの自信のある手練か、あるいは無知な者に限られる。


ゆえに、この追跡者が町の人間でないことは明らかだった…


尾行者は暗殺者らしくカームの後ろから首を狙ってとびこんでくる


カームが背を向けたまま一瞬、剣を振り上げた様に見えた瞬間


一閃


カームの周りが明るくなる


――焔雷白熾刃(えんらいはくしじん)

(焔と雷を剣身へ収束させ、電撃を叩き込み、高熱の斬撃を放つ)


空気が揺れたのか、地面が揺れたのか解らない様な短い轟音が鳴る。セインは猫耳を抑えて丸くなり毛が逆立つ、一瞬なのに感知した振動は長く身体に残っていた。


「あがっ?」


バランスを崩し地面に突っ伏す様に倒れ込む本能的に体制を立て直そうとした瞬間、尾行者は嫌な匂いを嗅ぐ、尾行者は腕二本無くしていた。


「あがぁぁぁぁっ」


切られた腕の切り口は焼け爛れ一部は炭化していた。凄まじい痛みが尾行者を襲い地面でのたうち回る

カームは、すかさず尾行者の背を踏み鎮め、その身動きを止めた


異様な光を放っている剣をしまわずに残りの尾行者の方を見る。


「来るか?……」


カームはわざとスキル持ちだと見せて引いてくれるのを願っていた、残りの尾行者の動き次第では本格的な戦闘に成る情報が乏しいので出来れば避けたい、でも来るならやるしか無い。


「逃げましたね…」


セインが匂いで察すると、カームはねじ伏せていた尾行者に背を向けて剣を収める。

腕を切られた尾行者は今がチャンスと、その場を獣の様な跳躍で逃げていく。


「あ、こっちも、にげ…」


セインが慌てると、カームが少し笑いながら


「大丈夫だ、彼女が追ってる。」


セインとカームの合間に一瞬ヴァリシアの姿が浮かぶ、


――んふふっ


そんな声が聞こえそうな笑顔と甘い香りを残し、スッっと消える。

セインはびっくりして変な声を出す。


「え、うわ、ばぁ化け?…あ、あれ?……」


その声を聞いてヴァリシアの声だけが小さく残る


――「だれが婆婆よ?」


その声は少し笑っていた。


ソウルラウンダーのやリンカーの術はどうなって居るのか解らないが、おそらく今のは思念体だろう。


サナも良くあれで修行だと言って人を驚かせいた。


「えー。そんな事言ってない……」


セインの耳は傾き尻尾は力なく垂れていた


「笑ってたから大丈夫じゃ無いかな?それにセインからすれば婆さんかなー、長命種だし」


カームはセインを慰めるのであった。


気を取り直してカームは気絶している尾行者をフードはぐる。


「あぁ。こいつ行方不明になってる冒険者じゃねーか」


「あー。ホントだ、この人最近失敗続きで…」


セインは呑気にそんな事を言いながら手際よく手持ちの布で猿轡と手足を拘束していく。


「吐かせるのは任せてもらえますか?…Restraint Assessment!!」


呪文を唱えると、魔印の付いた白い布は黒く変わり印が白く反転して硬化する

――――


Restraint Assessment (レストレイント アセスメント)

この呪文と魔印された布で拘束された部分は術者が拘束を解く呪文を使わないと解くことが出来ないと言われている。


例外は有るが公開はされていない、国に登録された者しか使えない決まりになっていて拘束する魔印布も国の公務員とギルドの上層部しか持っていない


――――


カームは拘束呪文を聞いて捕縛している冒険者を見る。


「セイン。おまえ、怒ってるだろ、??」


カームはニッコリ笑いながら


「そんな事はないですよっ」


カームは改めて捕縛されている冒険者を見る

とんでもなく苦しそうな格好で拘束されているのを見てカームは笑いをこらえる


これ、わざとだろ…


「ぷぷぷっ」

「やだな、カームさん。笑っちゃだめですよ」


セインはどうもヴァリシアに誤解されたのはこの冒険者のせいだと思っているのかも知れない


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