4話 神権君主制国家
ここは、カエローリア王国。
千年の祈りが積み重なる神都である
神々への祈りと王の統治によって支えられる神権君主制国家である。
王都の空には朝夕を告げる鐘の音が響き、
白亜の大神殿では絶えることなく祈りが捧げられる。
大通りには、他国では手に入らない希少品を求める商人たちが行き交い
巡礼者は石畳を歩み聖地を目指す。
その先には王城と五つの霊塔が静かに街を見守っている。
多くの巡礼者や商人を迎え入れてきたこの都市は、近年では学術の発展によって新たな顔を見せ始めている。
神学、魔法学、霊術学、自然学。
各地から学徒や研究者が集まり、街には若者たちの議論が溢れ、
新たな可能性が生まれようとしていた。
しかし、平和な時代は永遠ではない。
魔物被害の増加。
周辺諸国との緊張。
そして、かつては語られることすら少なかった新たな脅威。
王と大神殿の神官たちは、その備えが必要であると判断した。
かくして両者は手を取り合い、未来の守護者を育成するための機関――
《王都神授守聖護学園》
を設立したのである。
――
「はぁ……」
カームは馬車に揺られながら、大きなため息をつく。
今回は、エルン祭(聖女の記念祭)と王都神授守聖護学園の設立案、さらにサナがソウルラウンダーとして重要な立場にある――。
王都神授守聖護学園の管理…相談役を打診されているサナ・ククルは「王国大宰府…魔術省」に呼び出され、王都へ向かったまま、予定を過ぎても帰ってこないのだ。
いつもなら、サナが心配する方だったが今はカームが心配する方になった。
王都ギルドに問い合わせると、ギルマスがこう言った。
「お前も王都の学園で剣技を教えてやってくれ。あの慈善団体の件で話が……まあ、とりあえず王都に来い」
それだけ一方的に言って、通信はぷつりと切れた。
どうやら※導声石が調子が悪いらしく、連絡がつかない。
※導声石:一つの特殊な鉱石を二つに割り、その片割れ同士を魔力で共鳴させて、離れた場所でも会話できる道具
「導声石、壊れたかな……?慈善団体?セシアン何とかっていうやつか?」
そんな状況でサナも心配だ。
乗り合い馬車で王都まで五〜六日も馬車に揺られのも疲れる
「あー……面倒この上ないな」
心の声が、そのまま漏れてしまう。
今日の夕方には王都に着く。しかし、さっきからため息ばかりだ。サナが心配なのだ。
外から護衛の声がかかる。カームの同僚で、同じ剣士だ。
「なぁ、カーム。シケた面しやがって。変わろうぜ、退屈だろ?」
言い方は悪いが、同僚もカームを気遣って声をかけている。
ニヤニヤとした同僚の顔を見て、カームは呆れながら、だるそうに答える。
「バカ言え、俺は今回、客だ。それによけい退屈だろ、」
このあたりには魔物や危険な動物は出ない。
まれに強いのが出るので、念のため村や王都の討伐経験者や冒険者が護衛につく。出たとしても一般人が魔道具を使えば追い払える程度、気の緩むエリアだ、
「どうせ、その隣の美人さんにちょっかい出そうとしてねぇか?」
商人や労働者に混じって、ひときわ美しい魔族の女性が乗っていた。
軽装なので魔法系の職かだろうか――。
場違いなほど整った容姿の魔族がひとりで乗っているため、カームは場を和ませようとしたが、男の発想なのであまり効果はない。
場の空気が微妙になった瞬間、年配の女性商人が笑いながらカームたちを牽制した。
「ちょっと、あなた達ダメよ。うちの愛娘に手を出しちゃあ」
「娘って……お母さん人族じゃねーか(笑)」
カームはノリよくツッコミを入れる。
「キレイな子は守ってやらないとね。この子を口説きたいなら、まず私を先に口説いてからだよ」
まさに“ビッグママ”という雰囲気だ。
「おいカーム、お前ならいけんじゃね?(笑)」
同僚も無責任に調子に乗る。
「まじかよ……(笑)」
そのやり取りに、馬車内は爆笑に包まれた。
魔族の女性は、手を口に添えて上品に笑っている。場が和んでよかった――
カームは心底ほっとした。
この世界では魔族もエルフ同様、同じ町に住んでいる。大昔はいろいろあったらしいが、今では魔族を嫌う者はいない。
男女ともにスタイルが良く、露出度の高い服を着がちなため、若者に人気がある。
更に面白いのは人工ダンジョンを運営管理しており王国の戦力上昇の一端を担う
―――王都に着く。
カエローリア王国は城壁に囲まれており、守りそのものは鉄壁だ。
国王の城が魔物の多い北エリアを塞ぐ形で立てられており、この国を境にして南の方角は魔物が少なくなる様な土地柄となる。
それ故、商人や旅人も多く、王国の南に増設された王都関門所は外縁宿、外縁施療所、には多くの人がいる。
他国より安全で、環境も良いため移住希望者も多い。
カームは馬車を降りた少し先でさっきの年配の女性商人を見つけた。
「母さん、さっきは ありがとう」
昔と比べてカームはサナと暮らし始めて“ありがとう”と言う言葉がスムーズに言えるように成った。
意外とこの言葉が言えると心地いいと最近は感じている。サナのおかげだ。
「あら?素敵、若いのに…。良いんだよ。おばさんを口説いても(笑)」
“ありがとう”と素直に言える若い男に好感を持ったのか、年配の女性商人はまんざらでも無さそうな雰囲気だ。
「ははっ、かなわねーなー(笑)」
カームが困っていると商人は話題を変える
「王都には買い物かい?」
商人は息子を心配するように尋ねた
「いや、ちょっと人探しで…」
何だか、カームは恥ずかしそうにしている
「あらそうかい、最近多いのよね、人探しは酒場のほうが良いかもって聞いたわよ。ギルドにも人探し専門の窓口が出来ているけど、ちょっと評判悪いわ」
商人は空を仰ぎながら心配そうな色を強めた
流石に経験豊富な商人さんだ、色々情報をもっているみたいだ。
「へー。ギルドに…」
ギルドってそんな気の利いた事するか?と思いながらも
そんな会話をしながら王都関門所で確認を受ける。
商人は手際よく検問を通り、
「がんばってね」
と、カームに母親の顔で手を振っていた。
王都関門所にはソウルラウンダーかリンカーが必ず一人駐在しているはずが見つけられない。
「おい、国の目である沙庭職が居ないじゃないか?」
「おお。カーム殿、」
守衛は※封印札をカームに手渡しながら言う
※封印札(街内での抜刀・魔法発動・防犯・を厳しく管理する術札。無断で使用した場合、騎士団に通達が飛ぶ札)
「何か、霊廟の方でトラブルが有って総動員しているらしいですね」
カームは武器に封印札を貼りながら
「そうなのか?」
と少し間の抜けた返答をする。
「良かったじゃないですか、普段なら必ずサナさんが、申し合わせたように来て、カームを厳しく検閲しますからねぇ」
守衛は苦笑いしていた。
「あー。祖霊を介しての浮気チェックか…ほとんど無実だって」
カームは笑いながら遠い目をする。
やはり真っ先にサナの職場に向かう事にする、怒られそうだから
中央教会がソウルラウンダーの支援室と祖霊の霊廟の間と言うのが有るはずだ。
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