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サナの居場所02 水の記憶


色々と見て回ったが、

結局、住む家は決まらなかった帰り道、夕方になっていた


「ねぇ、もっと色々要望を言っても良いんだよ~」


一番サナが色々言って、

ヨハンを困らせて居た事を思い出してカームは少し笑いながら


「サナが気に入れば良いんだよ」


そう言いながらカームはサナが霊視をしたのを思い出していた。


「なぁ、あんなに解るものなのか?」


「んーなにが?」


「馬車がぶつかったとか、冬場は水回りが凍結して火魔法必須とどうやって解るんだ?」


「あーそれ、なんか解っちゃうのよ」


「霊、なのか?」


「霊視って言う人もいるけど、私は“水の記憶”みたいなものだと思ってる。まあ、それだけじゃないんだけどね」


サナは背伸びをしながらため息をつくような口調で言う


「私たちは確かに霊と話しや意思疎通が出来るけど、実質の“会話”はしてないのよ、特に今日はおじいちゃん居たけど、それ以外は水の記憶、いうなれば“空間水分子情報”だよ」


手で空中の何かを掴むような仕草をする


「水分の相関というか、相関偏倚というか、まぁ読み取れるのよ、まぁ、受け取った記憶の理解度は熟練度次第で変わるかなー」


「なるほど、全く解らんな」


カームは解らない割に楽しそうだ


「うん、まぁ間違いもあるけど見えちゃうって事で良いのかなー表現が難しい」


そんな話をしながら日は沈んでゆく

深く切りっ立った崖に沿うように長く続く道は柔らかな青灰色の霧や影に包まれていき

見上げると、高くに見える雪山の峰々だけが、夕日を浴びて金色や琥珀色に輝き、

その明暗のコントラストが幻想的で息をのむほど美しかった


「あ……」


サナは何かに気がつく。


木立を抜けたところで、サナは足を止めた。

そこには、古びた二階建ての石造建築があった。

おそらく修道院跡だろう

横に長い灰色の壁。その半分ほどを蔦が覆い、

一階には半円のアーチが幾つも並んでいる。


昔は修道女たちが行き交った回廊だったのだろう。

今ではその奥に人影はなく、ただ薄暗い空間だけが残っていた。


庭は広かった。

玄関まで続く石畳はところどころ苔むし、その左右では低木と古木が、

長い年月を好き勝手に育っている。庭の片隅には古い石造りの井戸まで残されていた。

綺麗とは言い難い。新しくもない。便利そうにも見えない。

それでもサナは、しばらく建物を見上げていた。


「……ここがいい」


帳はおりかけていた。


「サナ、明日もう一度見て、ヨハンさんにも見てもらおう、」


カームは優しくサナの頭を撫でる。

サナの表情は何か遠くを見て愛おしく綻んで居た

こういう時のサナの直感を信じているカームだった、


「サナが言うなら俺もここが良い」


帳が降りる。

幻谷底のエリアはすっぽりと巨大な影に覆われ

静寂とひんやりとした清涼感に包まれる夜が来る。


すると家々から明かりが灯され居心地の良さを象徴する美しい情景となる。

その光を守るように麗石導環の尖塔にあたたかみのあるオレンジ色の明かりが灯り

まるでその光景は女神ライカの守りを拝しているようだった


――翌日


「はい、ここでございましたら……」


そう言いながらヨハンはクララに目配せをし書類を用意する

クララは家が決まったと聞いてサナ達と一緒に来ていた。


「私にも報告義務があるからねぇ……しかし、これは……」


そう言いながら慣れた手つきで扉を開ける


「少々手直しが必要ですが、設備も十分使えそうですね」


カームはヨハンから細かい契約事項を聞いていた、サナはクララが余り喋らないことに気がついて声をかける。


「新築要求すると思ってた?」


「いや、もっと立地の良い所選ぶと思ってたからねぇ……しかも、ここは、私が小さい頃、過ごした場所じゃないか」


サナは少し驚き


「そうなの?あ、そか、クララ、ここに居たんだ」


クララは小さい頃の事を思い出していた。

色々なことがあった、はじめは聖職者に成るなんて

考えもしなかったクララがその辺を走り回っている……

そんな自分の小さい頃を思い感慨に浸る


「あ、クララ、あちゃー」


サナがなにか喋りだす、それを見てクララはサナに釘をさす


「変な事見るんじゃないよ」


サナはこんな時に無駄に能力全開だ。

空間に漂う微細な水のような……残る曖昧な何かへ、意識を寄せた

サナはニコニコしながら言う


「クララ、おねしょ中々治らなかったんだー」


クララは一瞬うろたえる


「なっ……見るんじゃ無いって言っただろ」


しかし、すぐ居直りサナに問う


「ソウルラウンダーはそんな昔の事まで見えるのかい?」


「祖霊と水と精霊と……協力してくれたらね……空間水分子情報論はちょっと修正が必要だねー」


「あ、前に読ませてもらったね、水が有している記憶……」


「うん。おねしょ だけに水と相性が……」


――スパァン

サナはクララに頭を叩かれ良い音が鳴る


「ったく、おねしょ と水記憶の相性を論文に書こうと考えただろ?」


サナは良いツッコミだと言わんばかりの顔をしている


「あ、解る?」


クララとサナのいつものやり取りだった


「まったく……」


サナは何か周りの何かを集める様な仕草をしてクララに穏やかな笑顔で言う


「ねぇ、クララ、あの時の子達は今も貴方を見守っているわ」


昔は生活も厳しく子どもは途中で亡くなる事も多かった同じ年頃だった子たち……


クララは、サナの周りにその子達がいる気がした


サナに背をむけ少しだけ上を向く


「そうかい。そりゃ、嬉しいね……」


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