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サナの居場所01 ヨハンの苦悩

鈴が鳴る……


さやさやと……


サナは鈴のついた鉾を巧みに舞い、精神を集中させていた。

その姿は転生受肉する前の姿だった……


新しい祖霊魔法を会得した時は必ず舞っている、

しかし今回は必要以上に舞っていた


さやさやと言う鈴の音に問い正すかのように……


今回はやけに念入りだ、しかし、

何かに止められたかのように、ピタリと動きを止める。


――シャンッ


「え?……。」


鉾の先についた鈴の一つが床に落ちる。


落ちた鈴は床で跳ねることもせず不自然に……


「あ、これは?ざわついている?」


「私が今日、会得した術への抗議ではないようね?……」


「来、想、願、恩、報、命」らいほうがんおんほうめい


強制的に実行される術、サナに伝わってる不安、

止めるべき事象、エレメント、祖霊、

八百万の神や日不見の神までも騒ぎ立てる


――暗転


教皇は苛立たしく言う


「約束が違うではないか」


お付きの神官が言う


「何かの行き違いようで…」


教皇は神官に怒りをぶつけることはなかった。


聖職者だからと言う訳でも無いが、いつも

セシアン・コーディックスは強引なことが多い事は周知の事実だった。


それでも確かめるように問う


「困るな、約束は明日だろう? 礼拝の準備出来て居ないぞ」


神官は仕方無さそうな顔をする


「止めたのですが、そもそも連絡事項を止めている者がいまして」


教皇は顔を歪める。

過去にもあったのだ、連絡やアポイントなど、

ミスリードや伝達ミスをさせ、こちらの責任に仕立て、

それを理由に禁域まで平気で入ってくる。


こちらが悪いのだと言わんばかりに


怒り心頭で教皇は力強くも素早く霊廟に向っていた。


教皇がたどり着いた時には何人もの聖職者と

セシアンコーディックが霊廟の間に入り騒ぎを起こしていた。


その中でも仲介に苦労している人が一人


「落ち着いてください。ああ、そっちは駄目だ、携行箱など持ち込み禁止です。」


また視界が暗転する。



――――うううっ


サナは天井に手を伸ばし、うなっていた。

じっとりと汗をかき、呼吸が荒い。


「キモい箱……無いわー」


そんな事を呟きながら起き上がる。

せっかく、リゾート地で滞在させてもらっているのに悪夢の様な物を見る


「むー。やな夢見ちゃったな」


そんな、騒ぎをよそにカームは横でスヤスヤ寝ていた、

サナは汗だくで目覚めが悪い。

ちょっと悔しくなって、悪戯をする。

自分の髪の毛を筆の様に束ねカームにまたがり頬や鼻先を撫でる。


「ううーん」


カームはパタパタと手を振るが起きない


さらに首筋や顎を撫でる


「うー」


サナは鎖骨の辺りを髪でサワサワする


「んっ、ううーん」


大きくカームは反応する。


「ほう、えへへ、ここがいいのか、ここがぁ」


サナは調子に乗り始める

カームの服をたくし上げて脇の下や大胸筋を経由してくすぐる


「んー、サナ、やめろよ」


名前を呼ばれて起きたのかと思ったがカームはまだ夢の中だ。


「ほっほっ、じゃあ、ここはどうかなー、ええかーええのんかー、最高なのかなー」


腹直筋から前鋸筋へ大胸筋を経由して乳首に

移行しようとした時、変な方向から声が聞こえてきた


「あっ」


ふと見ると、入口の縦枠を抱きしめるようにしてヴァリシアが覗いていた

サナは固まる


「あ……。えへへ……ヴァリシア、おはよう。」


ちょっと間が悪い、サナとカームの絵面はサナがカームを襲っている様に見える


ヴァリシアは縦枠を更に“キュッ”と抱きしめ


「続けて……」


少し興奮して居るようだ、もはやヴァリシアの“続けて”の方がセクシーに聞こえる


「いや、続けるって?」


サナはただの悪戯のつもりだったので戸惑う

そんな時カームが起きる。


「あ、おはよう、ん?どうしたんだ?」


カームの上でサナが髪の毛を筆のように束ねて持って

馬乗りになっているのでカームは不思議そうだ。


「魔族の私を凌駕するプレイ……」


「違うし」


カームは“ヒョイ”とサナを持ち上げる。

まるで子ども扱いだ、


「そう言えば、物件見に行くんだろう?」


サナは色々と思い出す


「あ、クララが言ってたね」


「ヴァリシアすまん二人で寝過ごして……。あれ?ヴァリシア調子悪いのか?顔が赤いぞ?」


「いいえ、絶好調よ、ごちそうさま」


「?」


「あはは。……とりあえずカーム下ろして」


カームはサナを持ち上げたままだった


――


カームはカエローリアの比較的便の良い地域に来ていた。


「天気が良くて助かりました」


仲介屋のヨハンはそう言いながら、

紹介予定の物件資料を見ていた、

身なりは小綺麗に整っている50歳前後、

そう思わせる容姿とは裏腹に声のトーンは高い、

喋るテンポも良く、心配りも行き届いている


「そうだな、晴れてよかったよ」


カームは、ダラダラしているサナを置いて、

先に待ち合わせの時刻に間に合せで来ていた。


「お連れさまは?」


「ああ、すまない、ちょっと遅れるそうだ」


「左様でございますか。いやはや、ご婦人の身支度というものは、待つ側の時間だけ少々早く進むようでございますね」


そう言いながらヨハンはメガネを拭く。


「せっかく物件の前でお待ち合わせですし、先に中をご覧になりますか?」


「そうだな、」


カームも暇なので先に見る事に同意をする


ヨハンは鍵を出す。

しかし、その辺の仲介者ではない

普通は鍵をチャラチャラ鳴らしたりするものだが、

この男は王都で代々、神殿所有の家屋や商家の貸地管理をしてきた家系の人間だ、

複数持つ鍵も美しくなめされた獣の革で一つずつ区分けされており

只者でない空気を醸し出している

流石にクララの息がかかっている仲介屋である


「最初はこちらです。クララ様からは『学園の近くがよいのでは』と伺っております。ただ、職場に近すぎる住まいというのも、私はあまりお勧めしておりませんで」


そう言いながら向かう家は結構な大きな家だった、カームからすると“屋敷”に見える。


「え?ここだったの?」


「お二人でしたら、このくらいの広さがよろしいかと」


大きい家だった、カームは“買えないな”というような顔でヨハンを見る。

入る前から、戸惑っていた。


「まってくれ、この物件は……いくらで?」


「はい。」


そう言うと薄い木に挟まれた台帳を開いて金額の欄を手のひらを上に向け指で示す


「ん?なんか、安くない?」


「はい、破格になっております。……ああ、いや、何か問題のある物件というわけではございませんよ。サナ様とカーム殿には、食客としての扱いをと、かの方より申しつかっておりますので」


「しょっかく、かぁ……そう言えばサナが言っていたなぁ」


カームはその待遇にちょっと引いてしまう


「おまたせ、カーム。」


サナは元気よく走ってくる


「ちょうど今、少し中を見て頂こうと鍵を用意しておりました」


ヨハンは“あっ”と成っって、カームに言う


「これは失礼。こんなに大きなお嬢様がおられたとは。なるほど、学園へ通われるのでしたら、確かに近い方がよろしいでしょうな」


「あーと、違うんだ、これ、サナなんだ」


「ほほっ、御冗談を、」


遅れてヴァリシアも現れる


「その子が“サナ”ですわ」


ヨハンはヴァリシアにも言われて目を丸くする。

学園の講師を引き受ける以上変な嘘は後々面倒なので正直に話していく方向で打ち合わせしていた


「これは、一体??」


ヨハンは訝しげな顔をしてサナを見る


「ああ、本当なんだ、祖霊魔術の失敗と言うか、副作用みたいなものらしい」


カームは内心、心配したが言っている事は嘘ではない、多分


「いやはや、なるほどなるほど。噂どおりですな。相当な“魔法ジャンキー”とは伺っておりましたが、まさか姿まで変わるとは」


ヨハンは何か楽しそうである。その様子にサナはちょっと不満である


「祖霊魔術失敗の副作用で、なんで皆、納得するかなー、それに魔法ジャンキーって何?」




因みに内見は困難を極めた。


ヨハンは説明に入る


「市場にも学園にも近く、大変便利な場所です」


しかし、サナの返答が噛み合わない


「あーそうなんだ、巡礼者が間違って入ってきちゃうんだ」


ヨハンは“え?”成りながら答える


「ええ、それは聖教側に案内が出ておりまして、今季から無いと思います」


サナはなぜか北側の壁を眺めたまま、背後にある南側の部屋について話し始めた。


「あ、でも南側の部屋は新しいんだね」


北側の部屋を見ながら言うサナに、ヨハンは“???”と、成りながら対応する


「あ、お分かりに成りますか?前の家主が改装を……」


「ああ、馬車が突っ込んだんだぁ」


ヨハン、慌てて説明に入る


「はい、商人の馬車が過積載で…」


「二回目は酔っ払いが暴走したんだ、あ。うん。そうなの?飲み屋街が近いんだ」


ヨハンは軽く天井を見上げて諦めた様にため息を付いた


「便利な分交流が多いかと……もっと閑静な場所がよろしいでしょうか?」


もう、ここは駄目だと少しさびしそうな目をするヨハン。

サナはヨハンの斜め後ろ上を見ながら言う


「あ、いい家なんだけど、おじいちゃん残ってるよ?私が送るよ~」


サナが何やら呪文を唱える姿を見ながら、ヨハンはぼやく


「……こちらの知らぬことまで見えておられるようで」


カームがヨハンを慰める


「なんか、すまん……」


ヨハンは冷や汗を拭きながらボヤく


「ええ、沙庭職の方を舐めておりました。こちらが説明する前にそこまで拾われては、形無しですな」


サナは呪文を終えて軽い感じで話しかける


「あ、ごめーん。で、この家すごく良いんだけど周りがちょっと騒がしいかなぁ?」


「左様でございますな、先に欠点からお話するようにしましょう。あとなにか居ましたら教えて頂けると幸いです」


「大丈夫、私、ソウルラウンダーだから」


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