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霊廟事件後#06王への謁見・クララの報告

クララは“君影草カフェ”でサナに散々たかられた。


「クララおばぁちゃん、これも食べたーい。」


サナはまるで本当の子どものように振る舞い始める


「なんだい、クララさんこんな可愛い子居たらもっと早く連れてきなよ」


君影草カフェの馴染みの亭主も驚く


「あ、いや、この子は……」


クララは思わずサナの頭を殴りそうに成るが、ギャラリーが多すぎた


「クララ枢機卿猊下、可愛いお孫さんですね」


非番の神官達もクララが孫を連れてきているように見えるのだろう


「おばあちゃん優しいのー」


サナは此処ぞ、とばかり調子に乗っている


「はぁぁ」


深くため息をつくクララだった


―――


散々サナのペースに乗せられ、ひどい目に遭わされたが今思いだすと笑みがこぼれるクララ……。

今は国王に重要な報告をするために王城の回廊を歩いていた。


——さて、エルン以来の現人神を私たちは何処まで繋ぎ止められるか


クララは歩きながら考えにふける。


廊下に自分の足音が響くたび……


——何を帯び、何を持って正しきとするか


と問いかけて来るように聞こえる。


しかし、同時に窓から差し込む夕日を横切る度に

思考が暗転し無駄な執着が削ぎ落とされるようだった。

クララは小さな声で呟く


「ライカ様は正義より正しきを選ぶ……」


もう謁見区画の扉だった。


「クララ・インスティ殿」


衛兵が姿勢を正した。


「陛下がお待ちです」


扉が開く。


前室では老侍従が一人待っていた。


「クララ枢機卿猊下、帰還のご報告ですね」


「ええ」


侍従は一礼して直ぐに奥に下がろうとする。


本来はここで待たされることも多いがクララは地位の高い枢機卿だ、直ぐに通されることが多い、しかもこの侍従は※ロイヤル・ソウル・リテーナーである。いつも謁見の時は、その内容に合わせて人払いをしてくれたりする気の利いた紳士だ


※Royal(ロイヤル) Soul(ソウル) Retaine(リテーナー)

国王の御前に常侍する沙庭職。ソウルラウンダーとソウルリンカー双方の資質を有するが、二系統を併せ持つため、それぞれの能力は専門職に比べて限定的で、霊視・魂感知・憑依能力そのものも低い。主に霊視や魂感知によって謁見者の虚偽や敵意、異常な霊的干渉を察知し、非常時には技魂インヴォーグによって歴代の武人や国に仕えた騎士の技を身に降ろし、国王を護衛する。


「ねぇ、貴方、サナと同じ沙庭職よね?」


クララは侍従を止めた。侍従は緩やかに振り向き微かに微笑む


「はい。」


クララは何か足がかりを探すように問う


「霊廟事件や貴方の知っている同職のサナのこと、王家の祖霊はどう思っているのかしら……。」


本来は王族に仕えるロイヤル・ソウル・リテーナーにこの様な質問は禁止されている。

クララも聞いた後で我ながら失言だったと後悔するが


「あ、ごめんなさい、何でも無いわ、忘れて」


しかし、侍従は優しい笑みを浮かべ、ゆっくりと喋る


「あなたは歓迎されています、“ひだまりの子と進みなさい”と……」


侍従は一礼して奥の扉へ消え、クララは一人になる


クララは侍従の言葉を聞き少し気が楽になる。


「ふぅ……。」


小さく息を吐いた。


結局、考えはまとまっていないが、何だか落ち着きを取り戻す


「まぁ、なんとかなりますか……」


そう呟くと、やがて扉が開いた。


「クララ殿。陛下がお会いになります」


その先には、さらに大きな両開きの扉があった。

本来なら近衛兵が左右に居るはずなのだが、誰もいなかった

クララは赤い絨毯の上を歩いていく。

その先、数段高くなった場所に王が座っていた。


「おお、クララどうであったか?」


まだ近くに行ってないのに国王はクララを見るなり大声で喋る

この国王は地声が大きい


「王よ、人払いして頂いているのに声が大きすぎます、しかも大広間で?」


普段は執務室で話すことが多いのだが今日は大広間だった、

王は横に侍従と書記役を一人つけて玉座に座っている。


「いや、すまん。執務室の方はセシアン掃討の件で忙しくてな、息抜きだ」


「ちゃんと御前に行くまで、威厳を保ちなさいと、

王妃様からも怒られていたでしょうに……それに護衛も少ないようですが?」


「ああ、リテーナーが居れば、問題なかろう?」


横に居たのは先程の侍従、ロイヤル・ソウル・リテーナーだ、侍従は軽くお辞儀をする。


クララは王の前まで来ると、本来なら片膝を付いて敬意を見せるのだが、

王との約束で、立ったままだった。


「まったく、奔放な王です事」


「良いのだ、我が世代は変革の世代と思っている。」


クララは軽くため息を付き、報告を始めようとした時、

先に王が口を開いた


「で、カーム達はこの町にいつきそうか?」


クララその王の言葉を聞いて呆れる。


「王よ、先に“ライカ様”の件でしょう?」


呆れついでに片膝を付きいつもの姿勢をする


王はちょっと、ばつが悪そうに、クララから目をそらす


「おお、そうか?まぁそれも大事だな。」


侍従はクララに目配せをする。話の主導権はクララ殿でと言っているようだ


「では、ライカ様に関してお話します。」


「ライカ聖教側から言わせていただきますと今回の件は降臨や介入ではないと思われます。

霊廟事件や、騎士団長の回復…これらの干渉はサナが関わっていますが、力をお借りする等の事は出来ず、禁呪による現象だと思われます」


「歴史にある聖女エルンのような事では無いのだな?」


「はい。しかし、ライカ聖教も、保護と監視対象と言う位置づけです。

元々沙庭職の才能は随一ですし、女神ライカ様の眼差しを受けているのは確かで、彼女を自由にとは行きません。」


「ふぅ……なるほどな」


「しかし、その事がサナ本人に知られると、確実に逃げられます。彼女が本気を出せば、私たちでは追えません」


サナは過去に修行と称して姿をくらました事が有る。

その時は誰一人、おなじ職業の沙庭職の人間でさえ見つける事が出来なかった。


「おお、確かに……野良猫の様なやつで有ったな……」


クララは王の表現に少し笑い頷く


「ですので、先日相談させて頂いた、学園の講師の依頼と住む家の支援が意外にも効き入れて頂きまして、サナとカームはこの町に移住することを納得しています」


「あの程度の事で良いのか?」


「はい」


王族に渡す情報はその辺までが妥当と考えているクララである。

実際はサナの受肉転生やライカ様との繋がりの可能性は秘匿することで納得してもらっている。


しかし、ライカ様と魂が融合しているのはクララも知らない。

知っているのはヴァリシア、カルラ、カームだけである


「一応、平民ですから……。元々、この国に住むことは検討していたようですし、学園で研究出来ることが大きいと思われます。」


「よし、国外へ流出させたくない人材だ、助かったよクララ」


「あと、カルラは問題ないでしょうこの国の元騎士団総長、今はギルドマスターですし、ヴァリシアに関しても訓練用の人工ダンジョンを国と共に運営しているので問題ないかと」


王は納得して ひと仕事終えた様な雰囲気で背もたれに身体をゆだねる

侍従がその姿を見て直ぐに口を開いた


「クララ枢機卿猊下、霊廟の件に関してはどの様にお考えですか?」


「それに関しては報告書どおり、通常の調査班では何も解りませんでした。ただ、ライカ様の波動と解る結界です。現場の確認は私の方で続けますが、表向きはこのまま秘匿しておくのが好都合でしょう」


侍従が書記係へ視線を向ける。クララはひと息つき、続けた。


「空に魔法陣が展開されたのも一般人は幻日環の自然現象としてしか認識していないですし、霊廟事件は結界の中で起きたことで有るため、実際に見知っているものはごく僅かです。」


王は厄介事が少なくなる期待に満ちた顔をする


「そんな、ものなのか?」


「ええ、セシアン禁呪をソウルラウンダー達が禁呪結界で覆ったので、ほぼ外部には漏れていません」


王とクララは簡単に片付きそうに思った反面、何十人もの命が秘密裏に消えてしまった事に、事の異常さを噛み締めていた


沈黙が少し続くが、侍従が確認するように問う


「なるほど、事件による行方不明者も前日に打ち合わせした“セシアン事変”の件で説明する方向で問題ないようですね」


この際、表向きはセシアンが起こした騒ぎとして纏めるほうが無難だった、実際には間違いないのだが、末端で騙されて活動した人達の処遇が問題だった。


「ええ、更に好都合なのは、事件の詳細まで把握した上で、不自然な干渉をしてくる国があれば、その国がセシアンと繋がりがある可能性があり、敵が明確に成るメリットもあります。」


「うむ、そう言えば……それなー」


クララはあんた本当に王か?と言う顔をしながら


「あと、ライカ聖教では霊廟跡の結界部分を幻日環の自然現象にてライカ様の聖遺物が発見されたとし、巡礼地の一つとして置くことが検討されています。これをもって禁呪など行われなかったという事に……」


王は目を少し細める


「確かに、あの結界の光は美しい」


侍従が少し心配そうに問う


「本当に問題は無いのでしょうか?」


確かにそこには、穴の口を塞ぐように結界が張られている。サナの使う“刻界結晶ドミニオン”にも似ているが――誰も知らない結界魔法だった。


「貴方もおわかりに成ると思いますが、霊廟跡の周りには本当に何(霊的思念や魔素)も無いのです。向こう側を霊的にも認識できないほど、分厚く強固な結界です。しかもライカ様の波動を発している。もっと別の領域なのでしょう、監視を続ける意味でも、巡礼地として残す方が都合がいいですしね」


侍従がクララを見据える


「サナさんは、お怪我などされていませんか?外交にはサナさんに手伝ってもらう事も多く、お変わりなければ良いのですが……」


この侍従はロイヤル・ソウル・リテーナーだ、やんわりとサナの異変に気がついているのだろうか、遠回しに聞いてくる


「ええ、問題有りません、しかし、禁呪の副作用で見た目も若く成っており、お会いに成ると驚かれると思います」


侍従は少し驚き、王は興味をそそられたように身を乗り出す。


「ほう……面白いな」


クララの周りの空気が揺らいだような気がした


「それが、あの子、私をおばあちゃん扱いして……お土産まで……」


王は背を背もたれに戻して言う


「あ。こわー」


侍従は尊敬の念を表しながら


「素晴らしい、剣士並みの闘気です…文武両道ですな、」


書記役


「剣士並みの闘気、文武両道と…」


クララ

「何を書き留めているの、やめなさい!!」



一方、サナ達はクララ紹介の物件仲介業者と家を探していた


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