↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/44

霊廟事件後#04 クララとサナの答え合わせ

クララは神官達も退室するように言う


「少し 2人にしてもらおうか」


神官達は一礼して出ていく


「サナ、体調はどうだい?」


「見ての通り すこぶる元気だよ」


「その体のことも 気になるが先に確認しておきたいことがある」


クララはそう言って足を組みながらも姿勢を起こす


「先日も聞いたね……」


クララは最初に簡易的に聞いたあの報告を思い出しているのであろうか?

口に手を当てて色々考えているようだった、霊視をしているのであろう。

目を閉じて言う。


「やっぱり、見えないねぇ……。私の霊力でも霊廟周りに何の痕跡も残っちゃいない 何もないってことは、安全なんだろうけど、あれはどういうことだい?これじゃ弔いもできやしない」


サナは少し面倒くさそうに言う


「そだね、その辺の公園より安全だよ、霊廟の結界部分以外はね」


クララはサナの目を見据えて問う


「あれは、一体何が有ったんだい?」


セシアン側が十人以上 ソウルラウンダー側も同じく、サナを含め十人以上、

聖教側も教皇含め十人以上、少なくとも計30人は居たはずだ、もっと居たかも知れない


それが報告ではロレイン騎士団長以外全て死んだということである。


普通ならば、そこに何らかの残滓の様な物が残るはずなのだ。


しかし、何もない。魂の残滓も、空中の水の記憶も魔素も、自然霊であるエレメントさえ存在しないのだ、


そんな場所は国中探しても稀だ


サナは軽い感じで喋り始める


「ライカ様がやっちゃったのよー」


クララは少し身を乗り出す


「な?何を?」


サナは腕を組んで遠い目で言う


「いや、ブチギレでしたわー」


――ゴキッ


クララは反射的にサナの頭に拳骨を落としていた


「痛い、痛い、何すんのよ」


「ライカ様に対して不敬でしょ」


「嘘は言ってないよ〜」


クララは殴った場所を撫でながら言う


「前回、ライカ聖教に来た時、大体の顛末は聞いたわ、ヴァリシアは上手く濁していたし、

あなたの目線で起きた事が……私たちの疑問と推測を、ちゃんと答え合わせしたいのよ」


どうやら前回、報告にした時の内容から、

各国間の交渉を公平かつ安全に支援する中立組織で、異種族間の交渉を支援すると言いながら、侵略行為をして霊廟事件に至ったという事は、現実的に確認が取れて解っているが、


ヴァリシアが上手く濁した真実の事象や目的がクララとして引っかかっているようだった


「細かく教えてくれるかしら?」


そう言いながら撫でる手はサナの頭を鷲掴みの状態に成る


「あたた、痛い、痛い、私もあまり覚えてないのよね、おそらくセシアンの禁呪の話よね」


「その術の恐ろしさを皆で予見していた私たちソウルラウンダーは、確か、止めに入った様な気がするの、」


クララはやっと真面目に喋り始めたかと安堵する


「殆どの人間がセシアンの禁呪で肉塊に成った様だとヴァリシアは言っていたわね、肉塊の件はロレインから報告に上がっているわ」


「それを空間の裂け目から来た化け物に食わせて……」


「セシアン界の養分と成っていたわ」


サナの説明は直ぐに省略され説明が尻すぼみになっていく

クララは理解に苦しむ様な顔をするが、それでも真っ直ぐにサナを見て問う


「セシアン・コーディックス……、奴らがよく解らないし、本当の目的は国の転覆じゃないんだろ?」


サナは観念したように少し大人びた顔をした


「解ったわ、ここからの話は、セシアンと言う団体が何をしていて、何者なのかって事と、

魂の在り方、クララの疑問、全ての人の答えに成るかも知れないけど聞く?」


クララは即答する


「話して」


サナは少し考えた後、ゆっくりと喋り始める



「ライカ聖教が教える人は死してどうなるかと言う話だけれど、

色々違っていて、まず、死は魂の完全な拡大であり根源への帰還なのよ」


サナは喋りながら何気ない仕草をするが、

子どものような動きは一切消えて、優雅な動きに成る


「その帰還の途中にライカ様は居るの……人は死んだらライカ様の所に行けると思っているけど、実は行けない魂もあるのよ」


クララは少し驚く


「え?それは?」


優雅な動きをしていたサナはちょっと子どもの雰囲気に戻り鼻息を可愛く鳴らし続ける


「大きく分けて三つのパターンが有るわ」


「一つは、先祖や指導霊に迎えられライカ様の場所まで来られる者」


「一つは、漂い…迷い、神の様な者に生命が生み出す特殊なエネルギーを搾取され輪廻する者、」


「一つは根源に憎悪し、俗世の執着によって自分しか見れなく成った魂……これが、セシアン達の歩む道……そういった魂はライカ様の場所までたどり着くことはできない」


サナは肩を少し落とす


クララは少し眉をひそめる


「生命が生み出す特殊なエネルギーを搾取される話は禁書によく有るね、※“魂華霊滓(こんかれいさい)”のことだろう?」


※魂華霊滓 (こんかれいさい)

生命が生み出す特殊な霊的エネルギー。感情や生の営みの中で生じ、ある種の存在にとっては重要な糧になると言われている。


生命が生み出す霊的エネルギーを糧とするのは麗石導環の仕組みを把握するものから言えば当然、信じられる話である


「たどり着けなかったらどうなるんだい?」


サナは目を閉じて何かを見ているような仕草をする


「執着で織り込まれた恐怖と根源への強い憎悪を持つものは“根源からの眼差し”から背を向けてしまう、そうなってしまえばその魂は自分の世界を開闢する……」


サナは長い髪を手で払い後ろに流す


「その世界から出られなく成って、俗に言う地獄とか、そんな物に近い世界……その世界を融合、統率し魂華霊滓を強くしている。それがセシアン界であり、そこで多くの魂華霊滓(こんかれいさい)を食らっているのがあの魔物たち……、その魔物はその世界の消化器官よ、女神たちは“負の永久消耗炉”って呼んでいるわ」


クララは何かに気がついた顔をし、問う

「糧とし、搾取する神のような者はセシアン界と関わりが有るのかい?」


サナは悩ましい顔をする。


「近いものかも、しれない。その辺は解らないわ」


サナとしてはおおよそのことは解っているが、今は言えなかった。


「セシアン達、凄い個人主義だったよね、自分自身を神みたいに扱うような……、

しかも執着が抑圧からの解放だ、なんて言っていたけど、

そうなれば根源への帰還は難しくなるのよ、

しかも中には人とは違う異型の魂の形を持ったものも居たわ……」


クララは何かに気づいたように聞く


「ちょっと待ってその根源とは何?」


サナは気まずそうに言う


「ライカ様より上位の神になるわ、私たちはその上位の神の子(写し身)なのよ……だから魂の状態に合う世界を作る事があるのね」


クララは吐き捨てるように言う


「ライカ聖教には言えない話だね……」


サナは頷きながら


「今回は私たちの世界にセシアン達を使ってちょっかい出してきたのよね」


そう言いながら手をひらひらさせて面倒くさそうなゼスチャーをする


「セシアン界の生命体?いや、この世界で言うゴーストの類が長い年月をかけて人を支配して……憑依して魂を変質させ続け…普通の人を巻き込んでいく……多分、あの異型の魂は……」


クララは心当たりが有るのか、腑に落ち、表情が変わる、その顔をサナは確認して続ける


「恐ろしいのは、セシアン・マギステルの使った禁呪……」


サナは眉をしかめて言う


「あの禁呪は人間を生きたまま、捲れ返った肉塊にし、絶望と苦痛を与え、そのうえ精神魔法で人の心を闇に落とす、そうする事でライカ様にたどり着けない魂となる」


「その状態で霊廟に現れたセシアン界の化物に食わせ、

その肉塊も魂の地獄も セシアン界が吸収していく、だから弔う事はできないわ」


細かな部分をいくつも省略していることにクララは気づいていたが、今は黙って話を聞いていた。


「一番大きい目的はセシアン界をこの世界と同じステージにする事だったみたいね、

ライカ様はセシアンが足がかりにしていた霊廟を神の御業でセシアン界まで落とし封印したみたい。」


「その時、全てのエネルギーを使ったらしいの、だから霊廟周りには何もないのよ」


クララは色々な事に腑に落ちた様子だった


「なるほど、そういうことだね、解ったよ、何か、

話をしっかり纏めたようだけど、大事なところをすっ飛ばしているねぇ……」


サナは、「あ、やっぱり?」みたいな顔をして目をそらす


クララは椅子に座り直し、正面を向く


「サナ、ちょっと、じっとしてな。あんたを媒体に霊視するよ」


サナはそう言われてため息を吐く。


「うはぁ」


クララは椅子を変え、更にリラックスした状態になる。

サナは面と向かったクララの霊視を邪魔するように話しかける。


「えー。なにを霊視すんのよー?」


クララは何とも言えない顔をし


「サナ、ちょっと黙りな、忘れている事も読み取ってあげるよ」


クララは半眼の状態でうわ言の様に呟く


「うん……」


「あ、……」


「そう……で?……」


「ほう……」


「ああ……」



少しの沈黙のあと、


「なんだい、あんた……、あの後突撃したのかい?」


サナは額に手を当て“あちゃ~”って感じでばつが悪そうにしている


「ほう……、気持ち悪い祭壇だね?……こんなんでどうにかなるのかね?」


「あ、もう止めたほうが良いよ~」


サナはソワソワする


「そうかい……。こいつがセシアン・マギステル」


クララは額に汗が浮いてくるのを感じる。

サナの魂の追体験で生身では耐えられない波が身体を襲う


「……あんた、皆と、共に…光身昇華(こうしんしょうか)――成就(じょうじゅ)…願いのために、虹身へ至った……この術は何——」


——ガタンッ


クララは椅子に座ったまま痙攣をする。


霊視を強制的に断絶される。

それは、中断や妨害ではない、魂を突き飛ばされたような感じであった


「あ、もう本当に止めた方が……」


サナが止めようと立ち上がった瞬間

更にクララが一瞬、身体が跳ね上がらんばかりにビクッとする


目を見開き、開ききった目からは涙がこぼれる


「なんだい、赤い髪の…あの子は?」


クララは肩で息をする。


「ひぇえぇぇ。クララ、怖いよー」


サナはうろたえ立ったり座ったりしていた。

クララは苦しそうにしながらも執拗に聞いてくる


「サナ、この後どうなったんだい?」


サナは何か恥ずかしそうである


「えへへー。みんなと一緒に死んだかな—」


呆れながらもクララは続ける


「知ってるよ、その後だ、」


「興味が湧いた的なことだったと思う、」


「そりゃ、禁呪の方かい?サナの方にかい?」


「たぶん……、私たちの存在だよ、見えざるものも見るし、ある程度感情も察するでしょ?」


もし沙庭職の様な者が多数派になれば、世界の在り方そのものが変わる。

感情が裸に成る世界では、言葉を交わす前から感情の波を読み取ることができ、

現実の解像度そのものが変わっていく。 


「その領域に踏み込んでいる私たちは、根源からより強い眼差しを受けているのかも知れないね」


クララの息が整って来て冷静さを取り戻す


「あんた、やっぱり本当にライカ様の気配があるようね?」

サナは安心して座り、ちょとほっぺたを膨らませてクララに言う


「変な探り入れるから、さっきみたいな事に成るのよ……器(受信機)として壊れちゃうよ?まぁ私も同じ事するけどね」


サナは頬杖をついて子どもとは思えない眼差しでクララを見る。


「で、クララ、赤い髪の女の子というのは?どんな風に見えた?」


「私には3歳ぐらいの幼女にみえたねぇ」


「そうなんだ、私には違う姿で見えたけどなー。

彼女が言っていた※“アブソルート”って言葉クララ知ってる?」


「なんだい、知らないね“アブソルート”?その子がいっていたのかい?」


※アブソルート「絶対的な」「完全な」「全くの」を意味する

このストーリーではアカシックレコードのようなもの


サナは“あ、しまった”と言うような顔をして


「いや、まぁそんな言葉が浮かんだだけ……」


その子がライカに干渉する禁呪のヒントを“アブソルート”経由で教えてくれた事は、

サナは明かさなかった。



——ここは、あまり、クララに探られ無いようにしないと駄目ね


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。