霊廟事件後#03:サナと愉快な仲間達の処遇
「何処まで行ってましたの?」
「まーねー、二人とも慌てちゃってね―」
「いや、治療するのにあんな事が起きるとか知らねーし」
「アレは驚きました。一言言ってくれたら良いのに」
「ライカに言っておくわー」
「おい、呼び捨て良いのか?」
「それよりどうします?サナの件、大騒ぎで意見が纏ってませんわ」
そんな話をしながら相談していると
後日に~と言っていた神官たちが入ってくる。
「え?」
「 霊廟事件の生還者が滞在している場所で、再びライカの神聖反応が発生しました。両事件に関連性がある可能性があるので、生還者全員を保護し、早急に所在と身元を確定します」
「あー。あれだよな?」
「やはり気づかれておられましたね。神に仕える者や、信仰心の強い者、鍛錬により能力の高い者たちだけが拝することが出来た奇跡」
神官はまだ興奮を抑えられないような仕草をしながら言う
「ヴァリシア様からもお墨付きを頂いて居ますので、前倒しで進めさせていただきます」
「え?」
ヴァリシアは“私なにかした?”と言う様な顔をしてカーム達を見る。
気にせず神官たちは話を進める。
「神が二度までも降臨なさったのです、この件は早急に話を進める必要があります。」
カームとカルラは、ヴァリシアの方を向いて“何言った?”と言う様な顔をする。
ヴァリシアはプルプルと震える。
「さて、えーと、先程書いて頂いた名簿ですが、貴方達の事は有名人ですので知っているのですが、その子の名は“サナ”というのですか?」
カームとカルラ
「あれ?」
「なんで?」
「サナ・ククルと書かれています。同姓同名なのは珍しい、しかしこの国に貢献して頂いている、かの有名なソウルラウンダーであるサナさんと同じとは、混乱してしまうのですが」
カームは何か思い出しカルラに問う
「書いた?」
カルラは何とも言えない顔で答える
「書いたな」
ヴァリシアは石化したように遠い目をしている。
神官は怪訝な顔をしていたが、少し冗談めいた口調で
「同一人物ですか?」
カルラは引きつった顔で、
「まぁ…そうなって…」
神官はカルラのセリフが終わる前に食い気味に
「なりません。サナさんは確かに子どもっぽい所は有りましたが、三十路手前でしょう?」
そのセリフを聞いてサナがつぶやく
「ちょっと?子供っぽい三十路って…」
神官は続ける
「カルラさんが書かれたのですよね、適当な事では困ります。」
「う…」
「正式な名前は?」
「あ…」
「年齢は?」
「……」
「出身地は?」
「……」
その時だった。
ヴァリシアが突然身構える。
サナもカルラも動きを止める
「ん?どうした?」
カームだけは解らなかったが、
そこに近づく人が居た。
「誰ですかね、ロレインを直したのは…」
神官たちに一瞬緊張が走る。
そこに来たのは王都神授守聖護学園の校長に就任し、
教皇の居ない今、次期教皇候補のクララ・インスティであった。
この、年老いた女は、背筋を崩すことなくしっかりと歩き動きは若々しい
小柄な身体には年齢相応の衰えが見えるが、その姿を弱いとは感じさせなかった。
何十年も人から敬意を向けられることに慣れてきた者特有の落ち着きがある。
ヴァリシアとサナは察した。
――これは、調査は終わってる
彼女はライカ聖教の上位の聖職者であり、
その能力はソウルラウンダーの域まで到達していると言われている。
「これ、ヤバくない?」
サナは半笑いで
「全部バレそう…」
ヴァリシアは上を見て天井の柄を見て意識をそらした。
神官たちは慌てて椅子を用意する。
「二人とも久しぶりだね」
ヴァリシアとサナを見て、そう言いながらクララは背筋を崩すことなくその椅子に静かに座り4人を見る。
サナは何故かちょっと楽しそうに言う
「ヴァリシア、“二人とも”って、言ったよ、バレてるよ、きっと、ねぇ、」
ヴァリシアは両手の指先を合わせて口元に持っていく
「ですよねー」
クララは静かに問う
「話を聞きましょうか?」
「ああ、えーと…」
カルラがモゴモゴとしていると、クララが年齢を感じさせない動きでカルラの近くまで寄り小声で言う
「いいかい、あんた、良い落とし所、持ってんだろ?さっさと言いなっ」
カルラは身体を震わせると同時に声を漏らす
「こわ…」
そう言うと、カルラは何か思いついたように語りだす。
「あ、いや、祖霊術の副作用でちょっと身体をやらかした…らしい」
何とも取って付けた言い訳だが、
神官一同
「……またか」
「ああ」
「サナさんなら」
「まあ……」
サナは“ガタッ”と立ち上がり
「ちょっと、そこ、納得しないぃ」
その瞬間、皆、サナが昔に会議で大声で怒った時の情景がフラッシュバックする。
皆、思い思いにサナの事を思い出し、クスクス笑う者も居た。
調書を取る神官は“仕事増やしやがって”という顔をしながら
「まぁ納得出来ませんが、特別な再登録の手続きが必要ですね」
クララが少し笑いながら
「そんな術が有るなら私も20年ほどお願いしたいねぇ」
その言葉に少しの時間一同和やかな雰囲気に成る。
やがてクララの笑顔がスッと消え4人に言い放つ
「それで許して上げましょう。でも今後、貴方達はこの町に住むように」
「え?」
「あ、」
「おお」
元々カルラは住んでいたので反応は無かったが、
ヴァリシアとサナはクララの思惑した。カームだけがちょっと喜んだらしい
どういった意図があったかは分からないが、事件後の調査を口実に、
クララがここまでの段取りを組んでいたようにも見えた。。
実際は、サナもヴァリシアもここに居ろと言っても、
ソウルラウンダー・リンカーは国や法で縛れる存在でない。
無理強いしても好きにするだろう……
それでもこの土地の気候とライカ聖教との関係性、学園の件も含めて、
この国の国民との関係性も考えると、この方法はお互いウィンウィンのはずである。
準備してましたって感じで神官が動く。
「それでは、護衛騎士とライカ聖教まで来て頂けますでしょうか?手続きの書類等、そちらの方で進めさせていただきます」
あまりの手際の良さに皆、文句も無かった。
出てゆく様子を見ながらクララがサナに声をかける
「あ、サナ、あんた、ちょっと……」
クララが言い終わる前にサナは答える
「いやよっ」
カームとヴァリシアの腕にしがみつきながら言うサナの姿は子どものようだ
「残りな…って言い終わる前に言うとか、いつも通りね」
沙庭職系の人間同士の場合、言葉で言う前に察してしまう事が多いようだ
クララはサナのその平常運転な様子に安心しながら
「個人的なお願いが有るわ」
「若返りはむり……さっきアイデンティティ演算子から個人の生成構造を
出力したし…」
「ん?」
一同はキョトンとするが、クララは深くため息をついた
「十字路に有る※君影草のパンケーキでどう?」
※君影草ただのカフェの名前です
サナはニコニコしながら言う
「カフェオレが無きゃヤダ。」
クララも笑いながら
「もちろん良いわよ、カフェオレ付きで」
「OKのった」
15歳程度の娘と60歳間近の女性との会話と思えないノリだった。
カームは地位の高いクララがそんな話し方をしているのを見て驚いていた。
どうやらサナとクララは仲良しのようである。
「サナ、先に行ってますね」
ヴァリシアはサナとクララとの仲良しっぷりにちょっと嫉妬しながらカームと部屋を出る。
「あそこのケーキ、ヴァリシアとカームとカルラにお土産でほしいな~」
「え?まだ言う??」
扉越しに呑気なサナの声が聞こえる。
カームは、サナと次期教皇候補である上位聖職者との会話を聞きながら
何か楽観的では有るが不安にも思っていた




