霊廟事件後#01:日常と相談
女神ライカの配慮なのかサナの配慮なのか解らなかったが
気づけば転移していたトーラスの森は、魂にも身体にも良い回復を促す磁場がある。
サナ達は本来ここでゆっくりするつもりだったが、
復活した導声石から孤児院に連絡が有った。
どうも先に王都に行っていたカルラからだった
◇◇◇◇
あー、済まない。
ライカ聖教と国の命令で、私含む4人は事件の聞き取りがあるらしい
霊廟事件、生還者の経過確認・事情聴取などの要請だ、
本来ならライカ聖教の施設って話だったけど、
国王にカームがまだ、あそこを利用したことが無いって言ったら
爆笑しながら滞在場所変えてくれたわ、
ライカ聖教の使者が迎えに行くってよ
◇◇◇◇
そんな内容だった。
ラカルじいさんいわく
「この森は見られない方がよいじゃろう」
と打診があったのだ。
ボケてる割に、しっかりしている。
ねじりトーラスの双樹周りの特殊磁場そのものがライカ聖教の能力の高い神官に見つかると面倒事になるのと、アルラウネが人に懐いていること、
希少品のアルラウネの花粉と蜜を分けてもらえる事を考えると
今は秘匿したほうが無難と考えた。
先立ってサナたちはカエローリアへ移動する事になった。
王国が用意した王都の宿泊施設は山腹よりちょっと高い場所に有り、
カエローリアの谷底や段丘等を一望できる場所にある最近新しいリゾート宿泊施設だった。
「あーここ、カームズ・レスト?もう開業してましたの?」
不思議なことにここはカームの名前が付いている。
実際の事情はこうだ。
切り立った谷に不自然に段丘が出来ているこの地は、
一昔前にサナとカルラが飛竜の倒し方を巡って大喧嘩し、
暴れて崩れてしまった場所で、カームが仲裁に入ったが、
カームまで巻き沿いをくらいボロボロに成りながらも
命を賭して仲裁に成功した、そんな出来事があった土地だ、
今はそこを整地してカエローラ王国のリゾート施設に成っている。
土地の正式地名はCalm's Woes
王がその顛末を聞いて笑いながらそう呼んだのが始まりで、
観光地にするにあたっては“Woes”と付けるのはよろしく無いとのことで今度は王妃が
通称カームズ・ピース(Kalm's Peace / Calm's Peace)
名付けたのがこの土地の成り立ちである。
因みにリゾート宿泊施設のカームズ・レストは国民投票だった
それだけカーム達は色々とこの国に貢献していて有名人であった。
いろんな功績を残している割に不思議なくらいカームがイジられているが、
これは国王のお茶目な人格が関与している
「あ、ここの段丘ってカルラが暴れてたところだよね?こんな施設が立ってたんだ」
サナは子どもの様にはしゃぐ
「はぁ?ここの谷を削って平たくしたのはテメーじゃねぇか?」
王都で合流したカルラがそう言いながら荷を下ろす。
「飛竜、生き埋めは、すごかったらしいですね、私も見たかったです」
ヴァリシアは別行動で見れなかったサナの術に興味津々だった
「あー、アレねー、崩落しちゃったね、いや、すごかった」
サナは照れ隠しをするようにニコニコする
「サナは、また、他人事みたいに……」
“また、この子達は…”そんな感じでカームは呆れる
「でも、最後の一押しはカームだよね?」
「え?俺?」
「ああ、そうだったな…」
カルラは遠い目で頷き、サナは“強いよね” ってゼスチャーでカームに合図する
「うーん……」
そんな縁もゆかりもある土地と施設だった。
この国の王はフレンドリーであり、寛大だ、
施設にこの国のシンボルであるライカ聖教像に王の言葉がこう刻まれている
◇ ◇ ◇ ◇
成長ではなく関係を
所有ではなく 循環を
発展では無く調和を
カエローリア王国が望む世界
◇ ◇ ◇ ◇
カームはコレを見てサナと行く行くはこの国で暮らそうと思っていた。
それに仕事も危険な仕事だけでなく、安全な仕事も多くあり、
水も豊富、いろんな食べ物が育ち、病めばライカ聖教で診てもらえ、
子供を学ばせられる。そのうえ窓を開ければ山と滝の絶景が見える。
そう思っていた。
「…………」
カームはサナとの新生活を思いそう考えていたが、今は親子の様にも見える
「複雑だ……」
宿泊施設のカームズ・レストでゆっくりしているカームのはずだが苦労の絶えないカームなのであった。
4人揃って、久しぶりの食事を取っていた。
ヴァリシア、カーム、カルラはサナに色々聞きたくて質問を始める。
「サナ、色々と聞きたいのですが……」
「良いよー。何でも聴いて」
「その、あれは……ライカ様なのよね」
「うん」
「後から来られたのは……」
「エルンスト様だね」
「な?」
「やはりな……」
カームは殆ど理解しておらず、カルラは見えなかったが察していたようだ。
「三者三様なのね……」
どうやら 3人は別々のものを見ていたようだ
肉体を必要としない空間の認識は、個人の能力によって変わる。
おそらく 霊体で見ていた時は同じものを見ていても体にも戻ってきた時には、
肉体の(脳の既存情報)修練度によって、今現在の解釈が変わる
カルラは ぼんやりと、カームは光として認識していたかもしれない。
今の反応を見るに、サナと ライカ女神が精神 もしくは 魂レベルで融合していると気がついているのは ヴァリシアだけのようであった
「しかし、本当に転生受肉なのか?」
カルラは元々祖霊魔術でタヌキの様に化けて姿を変えて居ると思っていたらしく、
死んだとか受肉したなどと微塵も思っていなかった
「そうね、死んでから100年以上かかった様な気がするんだけど……あそこは時間の観念は無いのか?って……どうなんだろね?」
ヴァリシアは考えがあるようでみんなに相談をする
「まず、私たちでも記憶の違いがあるのです。ライカ聖教に、どこまで伝えていいか、 そもそもサナの証明自体もこの姿では難しい。今は行方不明にという事に成っているのでしょう?」
「そうだな、先程まで、騎士団に行って聞いてきたが、捜索中とのことだったな」
カームは理解が追いつかず思考放棄し言う
「そんな事はもういい。サナがここに居るなら」
しかし、言うことは優しい。
そんな中カルラがいつもと違う口調で話し始めた。
「すまないが…サナ。ライカ様の力でロレインの欠損を直したり出来るのか?」
サナは首をかしげながら問う
「彼もここに来てるの?」
「ああ、治療中では有るが、私たちと同じ様に聞き取りに参加している」
「やつは……。もうすぐ子どもが生まれるんだ、何とか出来るものなら……」
今回の件は極端である。
多くの命が消え、国中が認識したのにもかかわらず、その事象は曖昧な霊廟事件。
中で起きたことを知る人間は、四人。
そして禁呪の瞬間に居合わせた者が、一人。
国家としてもライカ聖教としても、彼らは極めて重要な生存者だった。
元騎士団総長のカルラの立場からも
騎士団長ロレインの治療が最優先だった。
「出来なくも無いよー」
「出来るのか?」
「少し時空に関与するけど手足ぐらいならって……」
「おいおい、息をするように降霊と言うか神託をねだってるだろ」
「うん。エルンに会えて嬉しかったらしい、吐普加身依身多女だね」
ヴァリシア以外はサナの呟いた言葉の意味は理解でき無かった。
「あ、確かに、あの時、女神2柱と後私たちの知らない神が8柱はいましたね……」
「え? そんなに?」
カームとカルラは顔を見合わせるが疑問があるようにカルラが呟く
「女神は三人来ていなかったのか?」。
「ええ、多分。私も正確に覚えている訳では無いので……」
それより今はサナの振る舞いに関して考えないといけないことがある
「今の ライカ聖教には直せないのでしょう? それを直すと成ると……」
サナは肩を縮めながら悪戯っぽく言う
「あー。だねぇ…… こっそりヤッちゃう?」
サナの頭を軽くポンポンしながらカームが制す
「バレるだろ?」
サナは手で印を組みながら
「じゃぁ、隠蔽魔法で… 忍び込んで…」
ヴァリシアは悩む
「何か悪いことするみたいね」
いつもカームが一番真面目である
「駄目だろ、施設 内で隠蔽魔法とか、お前の作った※警報魔法陣に引っかかるぞ」
※警報魔法陣
公共の施設等は魔法が禁じられている。隠蔽魔法等に反応し警告を鳴らす安全装置がこの国の公共機関では基本設置されており国民の安全を守っている
因みにサナ発案で良い商いに成っている
「解った、警報魔法陣は止めとくわ」
ヴァリシアは角をコリコリ掻きながら言う
「えー。本格的に捕まります、それ、違法です」
「じゃあ、ロレインも、警報魔法陣も、こっそり直しとくよ〜」
「いや、そう言うことじゃ無くて……」




