25話 その後
そこは深い森だった
濃い緑の香りに包まれ、空気はひんやりとして居るが
その中にひだまりを集めるような空間があり、とても暖かい。
中心の結びトーラスの形をした双樹が立っている…
そこはサナが受肉した、トーラスの森だった
豊かな土の上の植物が柔らかなベッドのようにヴァリシアを包み込み
癒されるような感覚…
名残り惜しくもヴァリシアは徐々に覚醒していく
温かで、柔らかい日差し
澄んだ空気
枝葉のざわめき
鳥の声、
「グランドバースト!!」
――ドガガガァ
「え?」
ヴァリシアは飛び起きる。
少し向こうでサナとモンスターのアルラウネが魔法を行使していた。
「いやー、やっぱ土系と相性いいよねー」
――うんうん 頷くアルラウネ
「後これで水系も押さえれば、アルラウネとしては完璧だね―」
ヴァリシアは少し混乱していた。
ライカ聖教の霊廟はどうなったのだろう?
色々霊的?な追体験したようだが記憶がハッキリしない。
霊廟跡から救助された三人は、サナの意向もあり、結界の張られたトーラスの森へ運ばれていた。
「ほほっほ。お目覚めかね?」
ラケル爺さんが声をかける。
「あ、ら?」
よく見ると孤児院のシャルトリューズも来ていた。
「お加減、大丈夫ですか?毛布ぐらいかけさせてもらいましたわ、まだあまり動かないほうが良いわ」
眠っている間、面倒を見てくれた様だ。
よく見るとカームだけ寝て居てカルラが居ない。
「カルラさんは?」
シャルトリューズは毛布をたたみながら言う
「ロレインさんを教会に送ってもらっています。
一番の重症者でしたし状態が状態なだけにここでは無理みたいで」
シャルトリューズは騎士団長ロレインの状態を思い出したのか訝しそうな顔をする
「私も、治癒師の端くれですが、今まで見たことが無い状態で…私が施術失調に陥ってしまい……」
ロレインが治癒不応で無い事を祈るばかりだ。
そこに呑気な声が後ろから かかる
「ヴァリシアさんはセクシーじゃのう、昔のエルちゃんを思い出すのう…」
「え?エルちゃんですって?」
ヴァリシアは話を聞き出そうとラケル爺さんの方を向いた。
「ひぃやぁー」
ヴァリシアは悲鳴を上げる。ラケル爺さんは植物のツタでグルグル巻にされ逆さにつられ、ヴァリシアの後ろでミノムシの様にプラプラと揺れていた。
「ほほ、アルラウネちゃんに歓迎されてるの…わし。興奮するのう」
顔も、ちょっと腫れているので軽くシバかれている様だ。
シャルトリューズが爺さんをツタから下ろしながら言う
「もう、ちょっかい出さないでってアレほど言ったのに、ほらちゃんと結界維持してくださいね」
「すまんのう」
爺さんは降ろされながら念のため結界を貼り直していた
「ヴァリシア起きたんだ」
サナが走ってくる。横にちょこんと座り耳元で言う
「無事にセシアン界は封印出来たよ異界門と霊廟はいっしょに深淵に堕ちたみたい」
「あ、そうだった…深淵?」
「セシアン界かなぁ…。でも穴は残ってるんだ、まぁ結界が凝縮封印されているから大丈夫だよ」
そうか、と頷きながらヴァリシアはサナに向き直る
「色々見た気がする」
「うん。」
「思い出せないけど」
「うん。それで良いの。ちゃんと残ってるよ」
「後で色々聞いても?」
「うん。」
「ライカ様は今も?」
「うん。今も一緒かな」
「そんな事が有るのね…でもよかった」
ヴァリシアはサナの方を抱いて頭を撫でていた
―――
―――それから数日後。
セシアン・コーディックスに関して
事件後の調査で、セシアンが霊廟の内部だけでなく、
教会や騎士団の一部にまで入り込んでいたことが判明した。
彼らが何年をかけ、どこまで準備していたのかは、
まだ分かっていない。
本来なら争奪の対象となる“麗石導環”にも、彼らが執着した形跡はなかった
ただ一つ、確かなことがある。
彼らは霊廟に集まった魂を使い、この世界とセシアン界との境界を広げようとしていた。
教皇が計画の中心にいたのか、それとも既に何かに操られていたのか。
それすらも、今では判断できなかった。
霊廟跡は騎士団と教会によって封鎖され、生存者の救助と犠牲者の確認が続けられている。
だが、回収された記録の多くは失われ、セシアンの全貌にはまだ届いていなかった。
そんな報告会議を生き残りのソウルラウンダー・リンカーとしてライカ聖教と話してきた
その帰りの事だった
「ねぇヴァリシア」
「エルン祭の夜に、異世界の生命体がこの世界の肉体と霊体を支配して、魔物とか悪魔に成るって話したよね」
サナはもう周りから見るとヴァリシアの子どもの様に見える
「ええ、今話題の研究内容だわ」
サナは手を後ろに組みヴァリシアの前を左右に蛇行しながら歩く
「あの異世界の生命体、セシアン界の子たちだったかも」
「魔物の中には、セシアン界の生命体に支配されて、何代も世代を重ねるうちに、一つの種として定着したものが幾つかいるの」
「え?その研究届けてる?」
驚きでヴァリシアは少し立ち止まる
「まだだけど、もっと面白い事が解っちゃって」
「人間も居るようなの」
「え?まさか?」
「あ。いや、教皇は違うみたい、ほら、セシアン・マギステル――変な禁呪を使った人、あの人は肉塊になって教皇にへばりついてたし」
「 “ほら”って今の今まで知らなかったわ」
ヴァリシアは目眩がする
「まあ、人間の場合、途中で消える事も有るようだけど」
それをよそにサナは鼻歌を歌いながら
「お祓いとか、宗教行事で消えちゃうのかなー。解れば報告かな~」
受肉転生後もその性格は変わっていなかった。
―――
そして4人はギルド長室に集まっていた。
事件後のことを色々と議論したが、カルラがしびれを切らす
「まぁとにかくだ、カームはサナの保護者な」
カルラが椅子に深く腰をかけ決め打ちをする
「未だに信じられんが…」
カームはちょっと途方にくれる
ヴァリシアが優しくさとす。
「大丈夫ですわ、私とサナはMedium’s Ally 霊媒師の盟友ですもの。間違いは有りません」
「いや、サナを感じるのは確かだが…うーん。」
「えー何が不満よ、数年すれば、ヴァリシアの半分くらいには追いつくわよ」
「ん?何の半分だ」
カルラは呆れて笑い始める
「おい、これっていつものノリじゃねーか」
ヴァリシアはサナの頭をなでながら
「本当、そうですね…。あ、王都神授守聖護学園の管理相談役はどうしますの?」
サナはむくれて言う
「子どもは働きません。それに、子どもが相談役とか、大丈夫?行ける?まぁ、私はカームのお世話をして、空き時間にヴァリシアと遊ぶの」
最後の方は力強い口調だった
ヴァリシアは口に手を当てて嬉しそうにする。そしてヴァリシアはカルラに向いて
「ギルド長、決定ですね」
「ちょ?」
何か喋ろうとカームは立ち上がったが、その背中にサナが飛びかかる
「ひゃほー。決まりねー」
がっしり おんぶでしがみつく
――これは?
カームは、また既視感を感じていたこの行動は何時ものサナとおなじだった。
ため息を付いて覚悟を決める
「本当に、サナなんだな」
カームは男泣きをしていた
「おお、いいねぇ、そう言うカームはじめてみたよ」
カルラが嬉しそうに言う
「うんうん」
ヴァリシアはとっくに泣いていた。
「よし、カームの家でサナの復活のお祝いをしよう、ギルドから酒を出すぞ、」
カルラは嬉しそうだ
「カルラ、それセインに見つかったら怒られるやつだろ?」
カームとカルラはセインが居ないかキョロキョロする
サナはそれを制するようにおんぶのままカームの耳元で言う
「カーム、私が学園の管理相談役に決まった時のお祝い用の凍結魔法のかかった肉まだあるでしょ?みんなで食べようよ?」
「ああ、そうだな」
会話を交わすたびカームはサナを実感していく、沙庭職じゃなくても解るもんなんだな
そうカームはそう思いながらサナを受け入れていった
「じゃあ、飯食いながら、天然ダンジョンの相談がしたいんだ」
カルラは久しぶりに4人揃ったのが嬉しいのかギルド長の顔ではなかった。
「実は私も天然ダンジョンの構成に興味が有って、今回の穴も似てるのよね―」
カルラの相談は実はかなり実務に影響のある話だった様だ
「いや、研究っていうか、炭鉱の方で天然ダンジョンと同じモンスター出てんだよ」
サナは、どっちも一緒よーって感じで嬉しそうだ
「あ、そなの~、繋がってるのかな?まぁ研究は急務よね、」
何だかサナが色々やる気だ
「こうなるか…」
ため息交じりのカーム。
「ほら、やっぱりどう見ても何時ものサナさんよね」
ヴァリシアは楽しそう。
「ライカ様に感謝しないとな…」
カームは窓の向こう、白亜の大神殿へ目を向けた
――帰還と霊廟編・了――
ひとまず一区切りとなりますが、
物語は続きます。
本来は世界観を構築したくて書き始めたのですが、
思った以上に色んな出来事が起きてしまいました。
ここから先は日常寄りになる見込みですが、
あまり見かけない日常系を狙って進めてみようと思います。
まぁ……
フォーカス27で、開闢のための覚書かなー。




